襲撃のあったレストランの前を歩く警察官=バングラデシュの首都ダッカで2016年7月3日、AP
【ダッカ金子淳】バングラデシュの首都ダッカで発生した日本人7人を含む人質20人が殺害されたテロ事件では、武装集団が事前に現場を下見し、外国人を狙う大胆な計画を練ったとみられている。
パンパンパン--。湖畔の静かな高級住宅街に乾いた音が響いたのは1日午後9時ごろだった。事件現場のレストラン「ホーリー・アルチザン・ベーカリー」の隣に住む韓国系米国人の夫(61)と妻(58)が3日、毎日新聞の電子メールによる取材に応じた。
夫は「庭で若い男たちが『アラー・アクバル(神は偉大なり)』と叫んでいた。Tシャツとジーパン姿で銃と刀を持っていた。日本人が英語で『日本人だ。撃たないで』と言った」と証言。妻は「テロリストは屋外席の客たちを連れてレストラン内に入り、30分後に電灯が消えた」と説明した。
夫は屋外のピザ窯施設に「撃たないで」と言った日本人が隠れているのを見たという。
取材に応じた地元警察幹部によると、武装集団はメインゲートからレストランの敷地内に侵入。火炎瓶を投げてから屋外席に向けて発砲し、店内に入った。当時、レストランには従業員や外国人客ら少なくとも47人がいた。周辺の大使館などを警備する警察官が銃声を聞き店に向かったところ、レストランの屋根から銃撃された。この時、屋根から飛び降りて逃げ出したスタッフもいた。
屋根から飛び降りた同店のイタリア人料理人、ジャコポ・ビオニさん(34)の証言がイタリア紙レプブリカに掲載された。ビオニさんは当時、なじみのイタリア人客にあいさつし、調理場に戻って約5分後、「アラー・アクバル」の叫び声と銃声を聞いた。銃を持った男がイタリア人客の方向に突進しているのが見えた。アルゼンチン人の料理人と調理場から階段を上ってレストランの屋上に出て飛び降り、近所の家に助けを求めた。
同僚から「客は二つのグループに分けられ、携帯電話を取り上げられた。コーラン(イスラム教の聖典)を唱えるよう命じられ、できなかった人は鋭いナイフで殺された」と聞いた。