ソウルの日本大使館前に設置されている慰安婦を象徴する少女像=2012年9月、大澤文護撮影

 日韓両政府は12日、元慰安婦を支援するために韓国政府が先月設立した「和解・癒やし財団」の事業内容について大筋で合意し、昨年末の日韓合意に基づく支援事業は本格的に始動する。慰安婦を象徴する少女像の移転問題を「最大の懸案」と位置付ける日本側としては、10億円の早期拠出表明で韓国側の移転に向けた努力を促した形だ。

 元慰安婦への賠償について、日本側は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」としており、「賠償」の色合いが強まる現金の一律支給には難色を示してきた。10億円の使途について岸田文雄外相が「医療や介護関係を想定している」と強調したのはこのためだ。

 歴史認識の議論が活発化する15日の終戦記念日を前に日本側が大筋合意を急いだとの見方もあるが、岸田氏は「日韓合意後に両国政府が努力した結果」と記者団に述べた。日本政府関係者は「財団が設立されたのに長い間、金が出ないとボールを持っているのはどっちなのか、となる。テンポよくやっていくということだ」と解説した。

 少女像の移転については岸田氏が電話協議で韓国側の努力を改めて求めたのに対し、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相は「合意を誠実に実施していく」と述べるにとどめた。

 移転のめどが立たない中での「見切り発車」とも言える早期拠出表明に踏み切った背景には、北朝鮮の核・ミサイル開発で東アジア情勢が厳しさを増す中、日韓の連携強化は不可欠との日本政府内の認識がある。外務省幹部は日米韓3カ国の協力を挙げ、「韓国が日本サイドに付いているのは決定的に重要だ」と話す。

 一方、韓国政府は日本による10億円の早期拠出で日韓合意に対する韓国内の反発が和らぎ、財団の事業が進めやすくなることを期待している。合意に反対する韓国世論の中には、日本政府が求める少女像の撤去が10億円拠出の前提になることへの反発が強かった。