今年後半になってドイツ、中国、そして米国で慰安婦像の設置を模索する動きが相次いだ。実際に実現にいたったのは中国・上海だけだったが、独米でも危うく設置されるところだった。昨年末の慰安婦問題に関する日韓合意後、慰安婦像設置の動きは海外では勢いを失ったかのように見えるが、実際は計画が事前に日本側に知られないように水面下で進む形で“ステルス化”しているだけで、像設置の動きはまったく止まっていない。日本側には官民挙げての情報収集と連携が一層求められている。

 米国のワシントン中心部にそびえ立つワシントンモニュメントのすぐそばで12月10日、慰安婦像が除幕された。ソウルの日本大使館前に設置された像と同じ仕様だ。式典には像設置を手がけた、米バージニア州を拠点に活動する慰安婦問題支援団体「ナビ」の関係者らと韓国メディアなど約50人が姿をみせたという。

 除幕式の話は12月に入って韓国メディアが報じ始めたことで表面化した。突然出てきたかのようにみえる話だが、計画自体は今年8月、ナビが国連の世界人権宣言の記念日に当たる12月10日の「国際人権デー」にあわせて慰安婦像を首都に設置すると発表していた。ただ、8月以降、計画に関する報道や情報の発信は途絶え、動きが表だって見えなかったことから、計画が霧消したのかとさえ思わせた。

 しかし、実際はナビ側が情報管理を徹底しただけだとみられる。情報がいったん拡散すれば、日本政府や日本の保守系団体からワシントン側に除幕式中止への働きかけがあると容易に想定されるからだ。

 ワシントンとソウル市は姉妹都市だ。姉妹都市の枠組みの関係を利用して韓国側から相手の自治体に慰安婦像設置を持ちかけるのは常套手段である。今回、ワシントン側も慰安婦像の除幕式に協力したとみられる。ただ、ワシントンも含めた周辺地域で慰安婦像の設置を受け入れた自治体はまだないことから、像は倉庫で保管されるという。

 慰安婦像がこのまま倉庫に眠ったままでいるはずはない。像設置を推進する勢力は、何とかして公用地に設置することを実現しようとするだろう。

 日本政府は海外の在外公館に対し慰安婦像の設置を含む「歴史戦」の動きへの警戒を指示しており、ワシントンで除幕された像の行方にも注意を払い続けるとみられる。しかし、今回のように事前の動きが“ステルス化”すると実態を把握することは極めて難しく、像設置を阻止することもできなくなる。いったん設置された像を撤去するのが極めて難しいことは、米カリフォルニア州グレンデール市に建てられた慰安婦像の例をみても明白である。