産経新聞の加藤達也前ソウル支局長=21日午後、首相官邸(斎藤良雄撮影)(写真:産経新聞)

 【ソウル=藤本欣也】韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領への名誉毀損(きそん)で起訴された加藤達也前ソウル支局長の無罪判決が確定した。昨年11月に公判が始まってから1年余り。内外の注目を集めた加藤裁判とは何だったのか。

 「公職者への批判は保障されるべきであり、公職者の権限が大きければ大きいほど保障の範囲は広くなる」。17日の判決公判が開かれたソウル中央地裁の傍聴席で、李東根(イ・ドングン)裁判長のこの言葉を耳にしたとき、無罪を確信した。

 李裁判長は今回の判決で、「大統領への批判」と「言論の自由」の関係性について規定した。「重大事件の判決だけに影響力はある。政権側もメディアへの訴訟に慎重にならざるを得ない」(司法関係者)。

 弁護側も公判で、名誉毀損をめぐり懲役などの刑事責任を追及しようとする韓国当局について問題提起してきた。言論の自由を保障する観点からも、損害賠償など民事訴訟で解決するのが国際司法の流れである。

 韓国の言論界は朴正煕(チョンヒ)、全斗煥(チョン・ドファン)両政権の軍政時代、検閲を通じて厳しい規制を受けてきた。1987年の民主化以降、言論の自由が保障されると、一転してメディアによる政権批判が活発化。金大中(キム・デジュン)政権は大規模な税務調査などを断行しメディアを牽制(けんせい)した。弁護士出身の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領時代にメディアへの法的措置が増えていったとされる。

 そして朴槿恵政権下、特に政府批判が相次いだセウォル号沈没事故以降、メディアへの法的措置が急増した。加藤前支局長への在宅起訴はその中の1つだ。