産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長(右)。朴大統領記事に無罪判決(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

韓国の朴(パク・クネ)槿恵大統領の名誉をコラムで傷つけたとして情報通信網法違反(名誉毀損)に問われた産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(49)に無罪判決(求刑・懲役1年6月)が言い渡された。

「司法の独立」と「表現の自由」が勝利したと言いたいところだが、判決前に韓国外務省は検察を通じて裁判所に「日本側から『日韓関係を考慮し善処してほしい』と求められている」と要請しており、日韓関係の改善を優先させた外交決着だったことをうかがわせる。

判決を傍聴した筆者主宰のつぶやいたろうラボ(旧つぶやいたろうジャーナリズム塾)4期生の笹山大志くんによると、主文は後回しになり、判決理由の朗読が行ったり来たり延々3時間も続いたという。

これだけ自明のことを説明するのに3時間もかかるだろうか。コラムが産経新聞の電子版に掲載されたのは昨年8月。検察が市民団体の告発を受け、10月に在宅起訴し、11月から裁判が始まった。加藤前支局長の出国禁止措置は約8カ月間に及んだ。不毛の裁判は終わった。加藤前支局長も家族の皆様もホッとされたに違いない。

国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」(本部・パリ)はこれまで「ジャーナリスト的観点から見て、記者の推測や記事で主張されている噂の内容は論議するに値するものだ」と指摘。「推測や噂はすでに韓国の『朝鮮日報』など様々なウェブメディア上で報道されていたが、韓国メディアの記者に対しては何の訴状も提出されていない」と批判した上で、前支局長の携帯は盗聴され、メールはハッキングされている可能性が報告されていると指摘していた。

旧日本軍の慰安婦についての著書「帝国の慰安婦」(韓国版)を出版した朴裕河・世宗大教授も韓国の検察によって名誉毀損の罪で在宅起訴されている。政権にとって望ましくない報道や主張を押さえ込むために公訴権が利用されるのは韓国では何も加藤前支局長に限った話ではない。