韓国大統領が法的措置を多用する傾向は強まっている(Getty Images)

 ソウル中央地裁は17日、朴槿恵大統領の名誉を毀損したとして起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長に無罪判決を下した。「言論の自由」を認めた当然の判決だが、そもそも起訴自体に大きな問題があった。しかも、韓国外務省が法廷に善処を要請したことには、三権分立の観点から疑問があると指摘せざるをえない。無罪ではあっても、すっきり「良かった」とは言いづらいのである。

 繰り返しになるが、そもそも加藤氏が書いたコラムの内容いかんを問わず、権力者について書いた記事を理由に刑事訴追を行うことは民主主義国家ではあってはならないことだ。特に外国メディアの記者を標的にしたことは国際社会の関心を呼ぶことになり、韓国のイメージに悪影響を与えた。

 名誉毀損訴訟に詳しい韓国の弁護士によると、青瓦台(大統領府)がメディアに対する法的措置を乱発するようになったのは盧武鉉政権(2003~08年)からだ。保守的な大手メディアを敵視した盧大統領が弁護士出身だったことや、腹芸の苦手な盧大統領の性格が影響したのかもしれない。

 法的措置を多用する傾向は、李明博政権(2008~13年)で強まり、朴槿恵政権(2013年~)でさらに拍車がかかった感がある。「産経だけではない」のである。

 実際には不起訴処分となったり、起訴されても無罪になったり、民事の損害賠償請求訴訟でも賠償を認められなかったり、ということが少なくない。この点は、韓国司法が一定の歯止めになっていると評価できるだろう。ただ、そもそも権力者が法的措置を乱用すること自体が大きな問題なのだ。