2月6日午前3時57分、台湾の南部を襲った大地震は、巨大な集合住宅のビルが倒壊した惨状のイメージがあまりにも強過ぎるせいで、広範な破壊をもたらした東日本大震災を日本人はイメージしてしまうが、実際のところ、被害現場は台南市のビル1カ所にほぼ集中しており、地震そのものによる被害というよりも、巨大な構造を持つビルがなぜ倒れたのかという点が悲劇の本質である。その意味では、東日本大震災における福島原発の事故とよく似た、地震によって連鎖的に起きる二次災害がむしろ甚大になってしまうケースだ。
倒壊したビルの現場の状況から疑われているのは、構造部分で手抜き工事が行われていた可能性だ。柱の中に、油を入れる一斗缶や発泡スチロールが大量に見つかっており、鋼線の本数も足りないように見えるなど、不自然なところが多い。ただ、一斗缶や発砲スチロールをコンクリートのなかに埋め込むことはコンクリートの重みを軽減するために使われる場合もあり、手抜き工事であるかどうかはすぐには断定すべきではないという専門家の意見も出ている。
問題は、このビルを開発した業者がかなり評判の怪しい人物であることから、手抜き工事説が一層、説得力を持って語られるという事情がある。
倒壊した集合住宅が建設されたのは90年代半ばで、建設した会社はすでに倒産しているが、この会社の経営者は、その後、別の会社でマンション開発を続けている。メディアがこの経営者に連絡を取ろうと試みているが、公表されている電話番号はつながらず、経営者の行方は分かっていない。