政府が公表した尖閣諸島周辺海域で確認された中国公船の概要(出所:外務省ホームページ「尖閣諸島周辺海域における中国公船及び中国漁船の活動状況について」2016年8月18日)

 8月に入って中国の尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する攻勢が一段とエスカレートしている。

 中国はなぜこの時期に、中国海警や民兵組織を大動員して日本の領海や接続水域への侵入を繰り返すのか。目的は何なのか。前回(「尖閣に迫る中国、日本はどう対応すべきか」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47631)に続き、米国海軍大学 中国海洋研究所のピーター・ダットン所長の見解を紹介しよう。

 ダットン氏は中国の海洋戦略研究では全米でも有数の専門家である。元々は米海軍パイロットだったが、その後、法律や安全保障を学び法学博士号を取得した。中国海洋研究所の研究員となってからは、東アジアの安全保障、特に中国人民解放軍の海洋戦略を中心に研究を重ねてきた。南シナ海や東シナ海での中国の動向に関する論文の発表も多く、連邦議会の公聴会や民間シンポジウムで証言することも頻繁にある。

 ダットン氏との一問一答の内容は次の通りである。

 ――8月に入ってから中国海警や「漁船」と称する小舟艇が尖閣諸島周辺に頻繁に接近、侵入してくるようになりました。ここにきて中国がそうした動きに出る目的をどうみていますか。

 ピーター・ダットン所長(以下、敬称略) 第1には、中国指導部が最近の国内経済の停滞や、その他の政策の行き詰まりの悪影響を懸念していることが考えられます。つまり、海洋での拡張能力の強化を誇示することで、国家意思の前向きさと強さを国民に示そうとしているのです。

 第2には、南シナ海での中国の領有権の主張を不当だとした国際仲裁裁判所の裁定に反発している可能性があります。裁定に怒りをぶつけるような形で尖閣諸島に攻勢を仕掛け、国際社会全体との対決も辞さないという姿勢を見せているのです。

 しかし、この動きが怒りから生じた衝動的な反応なのか、あるいは実はもっと計算された行動で、今後も続けられるのか、まだ判断は下せません。

 ――中国は日本に何を求めているのでしょうか。

 ダットン 8月に入ってからの中国の動きは、日本を威圧する作戦が明らかに新たな段階に入ったことを示しています。南シナ海でフィリピンなどに対してとった、いざとなれば軍事行動をも辞さないという強硬な出方です。

 中国がそのように日本を威嚇する狙いは、尖閣諸島の領有権をめぐる二国間の協議に日本を引きずり出すためでしょう。中国公船や“漁船”のエスカレートする行動をやめてほしければ、中国との二国間の協議に応じろ、ということです。