全袋検査で安全が確認されたコシヒカリを軽トラックに積む新妻さん(中央)と妻の雅枝さん(左)ら=福島県広野町のJAふたば広野支所で2012年10月9日午前11時26分、中尾卓英撮影  東京電力福島第1原発事故の影響で、作付け自粛が続く福島県広野町で9日、コメの出荷が再開された。避難区域に指定された自治体では初の出荷。自粛要請に応じなかった農家2軒が生産したコシヒカリ80袋(1袋30キロ)を検査し、全袋で放射性セシウムは国の基準(1キロ当たり100ベクレル)を下回った。首都圏の顧客を対象に販売する。  同町折木で代々続く専業農家の新妻良平さん(53)、雅枝さん(54)夫妻は「地震の日より緊張したが一安心した」と語った。  東電に頼らない生き方を志し、5年前に耕作放棄地が広がる同町で無農薬有機栽培を始めた。販売先は首都圏中心に全国約100軒に広がり、長男秀平さん(24)も一昨年、後を継ぐため帰町した。「原発事故は長年かけて築いた信頼関係を一瞬にしてパーにした」と憤りは収まらない。  緊急時避難準備区域に指定され、立ち入りが制限されていた時、消費者を一軒一軒訪ね歩いた。「頑張ってね」「うちに避難してきなよ」という声に励まされ農業継続を決意。昨夏、表土をはいで田植えを試みた。今春はセシウムを吸着させないため、化学肥料のカリウムやゼオライトを散布。1.5ヘクタールにコシヒカリを植えた。