住民の避難方法を示した新型のハザードマップ(写真:産経新聞)

 32万人の犠牲者が想定される「南海トラフ巨大地震」に関しては、昨年7月に公表された中間報告などで、「人命確保」を第一に、迅速な住民避難を促すことがうたわれている。しかし、避難促進を目的に、国が自治体に、住民への周知を求めるハザードマップ(浸水域想定図)について、専門家から「逆に避難を妨げる」として、厳しい見方が出ている。(記事・北村理、デザイン・佐倉潔)

 ハザードマップについて、片田教授は「マップは特定の被災モデル下で、浸水域とそうでない地域が明確に表現される。居住地が浸水域でない住民は『安全だ』と思い込む傾向が非常に強い」と指摘する。

 実際、片田教授が、東日本大震災で約1000人の死者・行方不明者を出した釜石市で、犠牲者868人について、居住地を調べたところ、「居住地が浸水想定域の外にあった住民の死者数は、浸水域内にあった住民のほぼ2倍となっている。明らかに、浸水域外の住民は逃げていない」。

 この傾向は、片田教授が釜石市の生存者を対象に行った調査でも明らかになった。「浸水域外の住民」のうち、東日本大震災の際「逃げる必要をとても感じた」と回答したのは36・8%で「浸水域内の住民」の53・4%を下回った。