航空評論家・前根明さん(三尾郁恵撮影)(写真:産経新聞)
御巣鷹の日航ジャンボ機墜落事故から4年後の1989年7月19日。米アイオワ州スーシティーでユナイテッド航空の旅客機が事故を起こした。
機種はマクダネル・ダグラスのDC10でした。3つあるエンジンのうち垂直尾翼の下にあるエンジンが故障して爆発した。飛び散った破片でハイドロ(主翼の補助翼などを動かす油圧駆動システム)がすべて機能しなくなり、操縦桿(かん)が利かなくなる。エンジンは1基少ないものの、御巣鷹の事故と同じです。
この事故機にシミュレーター(模擬飛行装置)の教官がたまたま乗っていた。彼はシミュレーターを使って御巣鷹のような事故がDC10で起きたらどう対応すべきかを研究していた。そこでコックピットに入って機長や副操縦士、航空機関士と協力して主翼の2基のエンジンのパワーをうまくコントロールしながらみごとスーシティーの空港に不時着した。
乗員乗客合わせて296人が乗っていたのですが、そのうち6割以上の185人が助かっている。すごいと思いませんか。御巣鷹の教訓がこの事故で生きたのです。
このスーシティーの事故を知っているからこそ、御巣鷹の事故の乗員が、1965年にニューヨークで起きた空中衝突事故からの生還、つまり尾翼の壊れたロッキードのコンステレーションがエンジンパワーを使って操縦できたことを知っていてくれれば…と思うのです。