関東大震災を生き残った「震災イチョウ」=27日午前、東京都千代田区(松本健吾撮影)(写真:産経新聞)

 《一面焼け野原となった都心にあって奇跡的に生き残り、当時の人々に復興への希望を与えました》

 東京都千代田区大手町1丁目、皇居を対面に望む街の一角に青々と枝を広げるイチョウの大木がある。すぐ近くを「皇居ランナー」が走り抜けていくが、大正12年に首都を襲った関東大震災の猛火を生き延びたことを伝える表示板に目を止めるランナーは少ない。

 幹には炎に焼かれて黒く変色した傷跡が痛々しく残り、震災の惨禍を静かに物語る。千代田区教育委員会によると、樹齢は約150年。震災前は千代田区一ツ橋1丁目の旧文部省敷地にあったが、復興の区画整理で現在の場所に移された。

 東日本大震災で大津波を耐えた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」のように、当時は帝都復興のシンボルとして注目を集めた。

 「まったく気付かなかった。都内を走っていても、関東大震災を思わせる物はないので…」

 週1回、皇居周辺を走るという川崎市の会社員、菊地香織(38)は、こう言って“震災イチョウ”を見上げた。90年前の記憶は、多くの人にとって遠いものになっている。