「ママは悪くないんだよ、僕が悪いんだよ」  小学1年の男児は母親にたたかれても、尻をけられても、母親をかばった。東日本大震災で被災した宮城県沿岸部で自宅を流され、仮設住宅で暮らす一家。母親が長男を虐待し始めたきっかけは、父親が仕事をしないことだった。  祖父母と両親、5歳の弟との6人家族。父親は仕事を失い、祖父母の年金で暮らしていた。祖母は嫁である母親につらく当たり、孫の男児が食卓の料理をこぼしたり、狭い仮設を走り回ったりすると、「うるさい」と言ってしかった。  追い込まれた母親は「あんたが騒ぐからいけないんでしょ」と男児をたたき、突き飛ばした。大きな声を上げ、えり首をつかんで引っ張ることもあった。  男児は「おばあちゃんが怒るからママが怒るんだ。僕が悪いんだ」と自分を責めた。一方の母親は、子供に手を上げた夜、自責の念からふとんの中で泣いた。  一家を支援する塩釜市の支援団体代表、阿部泰幸さん(51)は「みんな仮設の中で息を詰めながら生活している。こうした家庭内の人間関係の問題が今、非常に多い」と話す。