小本川沿いで行方不明者の捜索をする地元の消防団員と岩手県内各地から集まった消防隊員ら=岩手県岩泉町で2016年9月5日午前9時28分、宮間俊樹撮影

 岩手県岩泉町で唯一、太平洋に面する小本(おもと)地区住民が、台風10号による河川氾濫で大きな被害を受けた同町山間部への支援に動いている。2011年3月の東日本大震災で死者を出した漁師まち。「5年半前に受けた町民からの支援に恩返しを」が合言葉だ。【国本愛】

 「おにぎり届いたよー」。小本地区にある津波防災センターにボランティアのにぎやかな声が響く。センターは昨年12月完成の鉄筋3階建てで役場支所や津波の資料室がある。指定避難所でもあり、台風被害で孤立した集落の住民数十人が身を寄せる。避難所運営を担当するのは沿岸部の住民たち。支援物資を他の地区にも配布するため車を出発させた。

 岩泉町は面積約993平方キロ。本州にある町としては最も面積が広いが、大半が山林で、海岸線は約12キロ。東日本大震災の津波に襲われ、小本地区で3人が死亡。沿岸部の住宅の約9割が損壊したという。

 津波で家を失った住民は町内のホテルや公民館で長期の避難生活を送った。「あの時はさむぐでたまんなくってな。町民がたくさん毛布を分けてくれたんだよ」。地区自治会長の長崎基一さん(68)は振り返る。避難先には地元の人から大根や白菜、キャベツも届けられた。「ずっと心に残っていて、恩返ししたいと思ってたんだべ」

 今回の台風10号では小本地区でも一部に浸水被害があったが、震災時とは逆に、小本川の上流にいくほど被害が大きい。高齢者らは「山津波だ」と口をそろえる。小本の住民はそれぞれ、自分でできる支援を始めた。