国道455号が崩落した岩泉町内の現場。小本川の急流が脇に見える(撮影・柴田寛人)

 台風10号の豪雨で河川が氾濫し、高齢者グループホームで9人が死亡した岩手県岩泉町で、ホームの犠牲者以外に男女17人の町民と連絡が取れていないことが1日、分かった。周辺道路の通行止めが続いている同町に、文化社会部の柴田寛人記者が入り、濁流が襲った町を歩いた。岩手県によると、8市町村で依然約1100人が孤立している。東日本大震災から間もなく5年半。今度は沿岸部に近い岩手の山村を未曽有の水害が襲った。

 岩泉町乙茂上(おともかみ)から東側に約1キロのところで、車を降りた。国道455号が崩落し、通れないため、旧道の山道を歩いた。眼下に急流の小本(おもと)川が迫る。30日夜の豪雨で氾濫し、町を襲った水の怖さを感じた。

 崩落現場を抜け、国道を歩く。重なった樹木、ひっくり返った車、なぎ倒された道路標識…。5年前に東日本大震災で見た光景が、再び広がった。2011年3月の震災では、沿岸から約10キロ離れており、津波被害はなかったが、今回は川の氾濫が未曽有の水害をもたらした。

 入居者9人が亡くなったグループホームの前。建物には水位の跡が残り、1階部分をのみ込んだことが分かる。視察した政府関係者に同行して報道陣が敷地内に入ると、テレビ局の記者がひざまで泥に漬かり、足が抜けなくなった。粘着質の重い泥が入居者を襲ったことがうかがえる。

 少し歩くと、70代女性が建材のブロックの上に座っていた。「あの平屋がここにあった。自宅が流されちゃった」。約30メートル先を指さした。1人暮らしだったが、浸水当時は近所の家の2階で難を逃れた。「ここにはもう住めないかも。また水が来るかもしれない」。近くに落ちていたトロフィーを握っていた。娘が小学生の時に珠算競技会でもらったものだという。