女川駅に到着する列車の乗客に手を振る町民ら=3月29日、宮城県女川町(安藤歩美撮影)(写真:産経新聞)

 白い車体に緑色のラインが引かれたどこか愛嬌(あいきょう)のある列車が、町を走る。JR石巻線浦宿駅を出ると、住宅地の中を行き、山のトンネルをくぐり抜けて、海が望める終点の女川駅に着く。東日本大震災後、ごく当たり前の風景が失われていた宮城県女川町では、そんな光景自体が町民に新鮮な感動を与えている。

 津波で失われた女川駅の新駅舎が完成した8日後の3月29日。雲一つない青空が広がる暖かな朝、駅近くの沿線に約250人の町民らが集まっていた。「トンネルを抜けると桜のまち」を合言葉に、列車がトンネルを抜けて駅に着くまでの約500メートルの線路沿いを、桜の並木道に変えるためだった。

 町民らは家族や友達らのグループごとにスコップで穴を掘り、沿線に一本ずつ桜の木を植えていく。植えた後は木の周りを石で囲み、水をやる。参加者は植樹後、満足そうに笑顔を浮かべ、植えた木の前で語り合ったり、記念撮影をしたりしていた。

 震災前、桜は「町の花」に指定されていたほど、町に多く植えられていた。春を迎えると、町役場や神社、公園や商店街、線路の沿線にも、満開の桜が咲き誇った。しかし、町民の自慢だった桜の木々はあの日、町を襲った20メートル近くの津波で流された。