高台に避難し、海岸の様子を見つめる住民。周辺は東日本大震災の津波で大きな被害を受けた=福島県いわき市平豊間で2016年11月22日午前8時51分、乾達撮影

 「5年前の恐怖がよみがえった」--。22日早朝、東日本大震災の被災地を再び襲った福島沖地震による津波。避難所や高台に逃れた人々は一様に安堵(あんど)感を漂わせた。その一方で、大震災と同様に避難をしなかった人も多く、大震災の風化を心配する声も。一部地域では避難の自動車で渋滞が起きるなど混乱も再現された。

 「東日本大震災の状況を思い出しながら、素早く判断し、行動できた」。福島県いわき市のグループホーム「しおさい風の詩」の職員、塚本博恵さんが振り返る。22日早朝の地震発生当時、施設にいた職員は2人。津波警報発令から10分もたたないうちに、近所に住む職員ら7人がホームに駆け付けた。大震災で多くの住民が死亡した久之浜地区。当時は近くの川に津波が押し寄せ、氾濫寸前だった恐怖が、職員らの素早い行動につながった。

 職員らは、車いす利用者を含む入所者8人を車に分乗させ、約900メートル先の中学校へ。避難する車で渋滞していたが、地域に詳しい職員が裏道を選び、津波到達前の午前6時20分ごろには到着した。

 一方で避難しない判断をした施設も多い。いわき市四倉町のグループホーム「大地の家」は海岸線から約500メートルで、市が津波避難場所に指定する神社へは5分で避難できた。しかし、担当者は「入所者8人が寒空で体調を崩す危険のほうが重大。施設に待機したほうが良いと思った」。

 地震の約2時間後に津波注意報から警報になった宮城県石巻市の特別養護老人ホーム「アゼイリア」は入所者が約130人と多く、「避難は逆に危険」と考えた。仙台市若林区の地域密着型特別養護老人ホーム「チアフル古城」も入所者38人に職員3人で、小野澤広子施設長は津波の状況を見ながら避難しない決断をしたという。