地震犠牲者のひつぎのそばで死を悼む家族=イタリアのアスコリ・ピチェーノ県で2016年8月27日、AP
【ローマ福島良典】イタリア中部で24日未明に起きたマグニチュード(M)6.2の地震で、倒壊・崩落した建物が手抜き工事で建築されていた疑いが浮上し、検察当局が捜査に乗り出した。伊メディアが27日伝えた。建設業者がマフィアとつながりがあったとの報道もある。地震による死者は294人となった。
大きな被害が出た中部アマトリーチェで崩落した小学校の校舎は補助金を得て、2012年に耐震基準に沿って改築されたばかりだった。地震後、住民からも「なぜ崩れたのか」との声が上がっていた。
検察当局は地震後、過失致死の疑いなどで捜査を開始。27日付イタリア紙レプブリカによると、小学校を含め倒壊・損壊した建物115棟について、01年に定められた耐震基準を満たしていたかどうかを調べているという。
捜査を指揮する中部リエーティ地検のジュゼッペ・サイエバ検事はレプブリカ紙に「現場を見たが、節約するために、セメントよりも砂を多用したとみられる建物が倒壊していた。もし日本でのような(耐震)手法で建てられていれば崩落しなかっただろう」と指摘した。
27日付イタリア紙イル・ファット・コティディアーノは崩落した小学校に関して「工事を担当した業者を巡っては(シチリア・マフィアの)コーザ・ノストラとつながりがある疑いが濃厚だ」と報じた。業者の弁護士はレプブリカ紙に「工事は適切だったと確信している」と述べたという。
カントーネ全国汚職対策局長はレプブリカ紙のインタビューで「マフィアが復興事業にもぐり込み、利益を上げる危険がある」と警鐘を鳴らした。09年4月に中部ラクイラで309人の死者を出した地震では震災後、マフィアの復興事業への参入が明るみに出た。