【北京=矢板明夫】中国とベトナムが領有権を主張する南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島付近で対立を深めてから1カ月が過ぎた。双方の船同士による衝突は現在も頻繁に起きている。また、中国外務省は最近、ベトナム批判のトーンを強め、官製メディアでは「ベトナムに武力行使すべきだ」といった過激な意見も目立ち始めた。

 今回の対立は中国の国有企業が5月初め、パラセル付近で石油掘削作業を始めたのがきっかけ。中国の実効支配が進むのを懸念したベトナムは猛反発したが、中国は軍艦を含む140隻以上の船で施設の周囲を固め、ベトナム船を体当たりで追い払うなどしている。

 対立の原因は中国側がつくったにもかかわらず、中国外務省は「ベトナム側が中国領海に侵入した」などと、被害者であることを主張し続けた。5月中旬以降、外務省定例会見ではベトナムに対する報道官の言葉遣いが激しくなり、「挑発行為を繰り返した」「国際社会で中国を中傷するデマを飛ばしている」などとベトナム政府を名指しで批判する場面が増えている。

 北京では、中国の企業がベトナムから撤退し始めているとの情報も飛び交っている。香港の人権団体によれば、ベトナムとの国境を警備する広西チワン族自治区と雲南省の一部の中国軍部隊が5月15日から「3級戦闘準備態勢」に入った。

 また、10日付の中国共産党機関紙、人民日報傘下の環球時報は「海上の主権を守るため、1割の武力と9割の話し合いを使うべきだ」と題する国内の国際政治学者の寄稿を掲載した。