海上保安庁のヘリコプターが近づくと、採取した赤サンゴを海に捨てて全速力で逃走を図る密漁船-。小笠原諸島(東京都)周辺でサンゴを密漁していたとして、外国人漁業規制法違反の罪に問われ、16日に横浜地裁で開かれた中国人船長、許益忠被告(39)の初公判。検察側が明らかにした冒頭陳述や供述調書などからは、密漁の生々しい様子が明らかになり、“カネ目当て”で海域を荒らす実態が浮かび上がった。

 検察側の冒頭陳述などによると、許被告は1975年に中国・福建省で出生。少年時代から父親の漁船に乗り込み、34歳まで漁師として働いていた。漁師を辞めた後しばらくは出稼ぎ生活をしていたが、昨年9月ごろに「リンと名乗る社長」に誘われて漁船の船長になる。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺でサンゴを採ったこともあったという。

 今年9月20日ごろ、リン社長に「給料を2倍にするから、父島(小笠原村)でサンゴ漁をしないか」と誘われ、報酬欲しさに引き受けた。自ら10人の船員を集めて21日ごろには出港、10月1日ごろに父島の周辺海域に到着した。

 サンゴの漁具は、長さ約2メートルの網5枚に重さ約20キロの石をおもりとして取り付けたものだ。長さ200~300メートルのロープにつなげて海底に沈めると、漁船の航行に合わせておもりが転がり、サンゴが網に絡まった。漁船は左舷側から最大で同時に11本のロープを下ろすことができ、許被告は操舵(そうだ)室から10人の船員に指示して、何度も繰り返し網を海中に投下した。

 同月4~5日には、海保の巡視船から北京語で退去指導を受けても、監視活動が手薄になるたびに領海内へ侵入。摘発されたのは5日午後だった。採った赤サンゴは箱に入れて保管していたが、海保のヘリが接近してきたため、11本のロープを切断するとともにサンゴを海に捨て、全速力で逃走を図った。その後、海上保安官が漁船に乗り込んだ際は既にサンゴはなく、甲板にはサンゴの破片らしきものと漁具が散乱していただけだった。