中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市の鉄道駅で3人が死亡、79人が負傷した爆発事件は、共産党指導部に大きな衝撃を与えた。「新疆社会の安定は、中華民族の偉大な復興に関わる」(習近平国家主席)。中国指導部が好んで用いる「中華民族」という概念にはウイグルやチベットなど国内のすべての少数民族が含まれ、民族政策の基盤となっている。このロジックはどのように生まれたのか。

 中国は人口の9割以上を占める漢民族と、その他の「少数民族」の計56民族から構成される多民族国家である-。これが中国の公式見解だが、さらに56民族の上位概念として「中華民族」という民族実体が存在する、という公式見解も存在する。

 これを理論付けたのが、1988年に社会学者の費孝通が発表した「中華民族多元一体構造」論だ。端的に言えば、中華民族とは「数千年の歴史を経て形成された民族実態」であり、中国国内に住む諸民族は多元ではあるが「中華民族」という一体を形成していると主張する。

 費氏によれば、農業主体の漢族が住む黄河流域に、北方民族が侵入を繰り返すことで、雪の玉が転がって次第に大きくなるように融合し、漢族を中心に凝集されていった民族実体が中華民族だという。

 しかしながら、そこではウイグルやチベットと漢族との融合過程は説明されていない。