桜林美佐氏(写真:夕刊フジ)

 中国軍機6機が10日、沖縄本島と宮古島の間を通過した際、航空自衛隊のF-15戦闘機がスクランブル(緊急発進)した。当然の防衛行動だが、中国国防省は「空自機が『妨害弾』を発射して安全を脅かした」と発表し、日本政府は「事実と異なる」と反論・抗議した。日本に迫る危機について、ジャーナリストの桜林美佐氏が迫った。

 「クリーピング・エクスパンション」とは、ほふく前進でいつの間にか敵の陣地を奪うことをいう。中国がまた歩を進めてきた。

 沖縄での件について、中国が主張する「妨害弾」が、何を指すかは不明だ。仮にミサイルを欺瞞(ぎまん)するフレアが発射されたとしても、それは危険回避のための措置であり「防御弾」と言った方がいいだろう。

 防衛省はフレア使用を明白にしていない。ハッキリしているのは、現場空域で、中国機がかなり危険なことを仕掛けてきていることと、あらぬ言い掛かりをつけてきていることだ。

 気になるのは「戦闘機にはパイロットが乗っている」という当たり前のことを、国民が忘れているのではないかということだ。危険にさらされているのは鉄の塊ではなく、生身の人間なのだ。

 連日のように、中国軍などによる恫喝(どうかつ)を受けて、命のやり取りをしているのだとしたら、どのような精神状態だろうか。案じる理由は、日本独特のいびつな状況にある。

 元戦闘機パイロットで、航空自衛隊南西航空混成団司令を務めた佐藤守・元空将は「万が一、沖縄県・尖閣諸島上空で、『領空侵犯事態』が起きた場合、どうすべきかが問題です」という。

 今回のスクランブルを「領空侵犯機」への対応と捉えるような記事の見出しが散見されるが、正確ではない。自衛隊はあくまでも「領空侵犯を阻むための措置」をしているのである。

 しかし、一線を越えられてしまっても、法的には撃墜はできないことになっている。安全保障法制論議でも忌避された法的不備を、政治はどうするつもりなのか。

 佐藤氏は「毅然として、列国空軍と同様の対応を取ることが必要です。中国の戦闘機が反抗してきたなら撃墜することです。必ず撃墜しなければ相手がつけ上がるばかりです」という。

 そのための法的根拠がなければ、国の意志が示されないことは言うまでもない。責任まで現場に丸投げは許されない。

 さらに、ひどいのは一部マスコミだ。

 まさに一触即発の防空がなされている最中、空自基地で情報管理のために通話記録を任意で集めたとして、批判的記事が出ていたのには驚いた。

 沖縄でのオスプレイ事故も、米軍パイロットは乗員の命を守り、沖縄県民も被害に遭わせない、ギリギリの操縦をした。熊本地震の救援にも駆け付けた人物という。報道は批判一色で、同盟国の軍人に対する、お見舞いの言葉も見られない。中国には数日後にやっと抗議したのに、米軍にはすぐに苦言を呈した。

 一体、日本の置かれた状況を分かっているのだろうか?