内向化が止まらないアメリカ、南シナ海などで膨張し続ける中国、イギリスのEU離脱、IS(イスラム国)による相次ぐテロ……この動揺する世界を、日本はいかに乗り切るべきか? 
人気ジャーナリスト・櫻井よしこ氏の最新刊『凛たる国家へ 日本よ、決意せよ』の中から紹介していこう。

● 「南シナ海は古代から我々のもの」 という中国の主張に「違反」判定が下った

 いま、私たちの眼前で起きているのは、国際社会の法を守る陣営と守らない陣営の対立である。

 2016年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、中国が南シナ海に独自に設定した境界線「九段線」には法的根拠がないとする裁定を下した。これは中国の主張や行動は国連海洋法条約に違反するとして、3年前にフィリピン政府が訴えた仲裁手続きに関する判断である。

 裁定は確定的であり、上訴は許されない。すなわち、最終決定である。

 「南シナ海は2000年も前の古代から中国の海」だとしてきた主張は退けられたのであり、中国の完敗である。

 なぜ中国はここまで大胆に行動を起こし得たのか。原因は、オバマ大統領にある。2013(平成25)年1月から始まった第2期オバマ政権は、対外政策に関する限り、後退に次ぐ後退を重ねた。オバマ政権2期目こそ、後世に、アメリカの後退の始まりとして記憶されるであろう。それはパックス・アメリカーナ(アメリカによる平和維持)の時代の終焉につながる危機でもある。

 アメリカの後退を象徴する驚きの言葉が世界を駆け巡ったのは、2013年9月10日のことだった。オバマ大統領が、アメリカは中東のシリアに軍事介入しない、その理由はアメリカが「世界の警察」ではないからだと語ったのだ。

 ひたすら軍事力の行使を忌避するオバマ大統領の不決断が国際政治の力学に空白を生み、中国とロシアの膨張を可能にした。イスラム国(IS)をはじめとするテロリスト勢力の膨張も同様である。

 アメリカは、いま、大統領選挙の真っ只中にあり、共和党のドナルド・トランプ氏の主張する「アメリカ第一」主義が広がっている。移民・難民の排斥、同盟諸国による防衛予算の負担増を1つの特徴とする氏の主張は乱暴に聞こえるが、実はオバマ大統領の主張と重なるのである。