南シナ海をめぐるASEAN内の立場の違い(写真:産経新聞)

 【北京=西見由章】ASEAN外相会議がまとめた共同声明に南シナ海問題をめぐる仲裁裁判所の裁定が盛り込まれなかったことを踏まえ、中国の王毅外相は25日、「(ASEAN外相らとの会談で)中国の提案が支持と賛同を得た」と強調した。裁定についても「問題解決への処方箋を間違えた」と非難し、中国の立場を改めて正当化。カンボジアなど中国に傾斜する加盟国への猛烈な働きかけが功を奏した形だ。

 「中国外交の大失態」(外交筋)ともいわれるハーグの仲裁裁定を受けて、中国側は15~16日に開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議など国際会議の場を利用し、必死の巻き返しを図ってきた。

 中国外務省によると、王毅外相は24日、カンボジアのプラク・ソコン外相と会談した際、カンボジアなどが南シナ海問題で「道理と正義を守っている」と高く称賛し、結束を確認。王氏はラオスやシンガポールやタイ、ブルネイの各外相らとも相次いで会談し、当事国同士の話し合いによる解決などを訴えた。

 王氏はASEAN外相らとの会談後の記者会見で、「数カ国が南シナ海問題について言及したが、議論した時間は全体の2割にすぎなかった。裁定について触れたのはわずか1カ国だけだった」と述べ、共同宣言に裁定を盛り込むよう主張したフィリピンの孤立を強調してみせた。

 中国は南シナ海問題の当事国で構成するASEANの切り崩しに成功し、結束して対抗される事態を回避した。「あらゆる外交的な手段を使って批判を阻止しようとした中国の勝利」(AP通信)といえる。

 中国の習近平国家主席は25日、訪中したライス米大統領補佐官との会談で「互いに核心的利益を尊重しなければならない」と述べ、南シナ海問題で譲歩しない立場を改めて表明。一方で「中国は国際秩序と規則に挑戦する意図はなく覇権は求めない」と強調した。