国際司法が赤い大国に「ノー」を突き付けた。南シナ海のほぼ全域で中国が主張する主権や権益についてオランダ・ハーグの仲裁裁判所が「法的根拠はない」と判断したのだ。この「全面敗訴」を受けて習近平政権は猛反発、今後、同海域はおろか、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海での軍事的圧力を強めていくとみられる。日米は対中包囲網を一段と強化し、国際ルールを無視する隣国に鉄槌を下す。

 「中国が歴史上、排他的に支配してきた証拠はない」

 仲裁裁判所が12日に下した裁定は、中国が主張する南シナ海での領土主権を完全否定。覇権拡大の根拠としている南シナ海の大部分を囲む「九段線」についても「国際法上の根拠はない」と断じた。

 強引な海洋進出に対して下された初の国際的な司法判断。習政権にとっては想定外の完敗と言え、習主席は「裁定に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と反発し、王毅外相も「手続きは終始、法律の衣をかぶった政治的な茶番だった」と強弁した。

 さらに崔天凱駐米大使は仲裁裁判所の判断について「緊張を高め、衝突すら招きかねない」「紙くずに外交努力が邪魔されるべきではない」と批判。怒りの矛先は日本にも向けられ、国営中央テレビは同日夜、「仲裁裁判所は日本の右翼が独断で組織し、公平性に大きな欠陥がある」と繰り返した。

 だが、どれだけ反論、批判を続けても、自国の長年の主張が国際社会に否定された結果は覆せるはずもなく、習政権は今後、共産党内で責任を追及される可能性がある。ダメージを最小限に抑えるために南シナ海問題での強気な姿勢を一段と示していくとみられる。

 具体的にはどんな一手を打ってくるのか。

 中国事情に精通する評論家の宮崎正弘氏は「南シナ海での権益がぶつかり合うASEAN(東南アジア諸国連合)の分断工作を活発化させるだろう。中国寄りの立場を取るラオスやカンボジアばかりか、触手を伸ばしているタイやブルネイも札束攻勢で一気に取り込むはずだ」とみる。