南シナ海と中国が定めている「九段線」

 【ワシントン会川晴之】仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)が南シナ海のほぼ全域に主権や権益が及ぶとした中国の主張を全面的に退ける判決を下した12日、米国のアーネスト大統領報道官は、「最終的で拘束力を持つもの」と中国に判決の受け入れを改めて求めた。一方で米国はフィリピン新政権との関係強化を急いでおり、新たな事態に備えて軍事面での協力を深めるため、ロレンザナ新国防相に早期訪米を求めた。

 カーター米国防長官は判決前日の11日、ロレンザナ氏と電話協議し、今後も両国が密接な連携を保つことを確認した。仲裁を申し立てた当時のフィリピンのアキノ政権は、南シナ海での緊張の高まりを受け2014年に米国と新たな軍事協定を結ぶなど両国関係は親密化。だが、6月末に就任したドゥテルテ新大統領は、中国との関係改善に意欲的で、対米依存の姿勢に変化も想定されるためだ。

 米国は1991年にフィリピンの要請に伴い在留米軍の撤退を決めた苦い経験がある。ただ14年に新たな軍事協定を結んで以降は、フィリピンへの駐留を再開し、南沙(英語名スプラトリー)諸島まで約160キロにあるパラワン島に米海兵隊を駐留させた。同島は南シナ海の哨戒飛行の前進基地として重要な役割を果たしており、フィリピンとの関係強化は安全保障上、極めて重要だ。

 また、米国自身が上院の反対もあり、国連海洋法条約を批准していない弱みもある。ニカラグア政府が1984年、反政府ゲリラを米国が支援していることは国際法違反だとして国際司法裁判所(ICJ)に訴えた裁判では、今回の中国と同様、米国は審理を拒否。86年に出た米国にとって不利な判決を無視している。こうした点を中国に突かれた場合、苦しい説明を迫られることも予想される。