松浦晃一郎・前ユネスコ事務局長(日仏会館理事長)インタビュー (野村成次撮影)(写真:産経新聞)

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の事務局長を務めた松浦晃一郎元駐仏大使は16日、産経新聞の取材に対し、中国が申請し、記憶遺産に登録された「南京大虐殺文書」について「日本は早急に反論すべきだ」と述べた。登録の可否を事実上決定する国際諮問委員会(IAC)に、資料の一部を登録から取り消す権限があることも明らかにした。

 また、登録は日本外交にとって“敗北”との認識を示し「中国の中長期の作戦に気づかず、対抗手段を取ってこなかった」と批判。記憶遺産事業の制度改革のために「日本と同じ考えを持つ国と手を結ぶべきだ」と指摘した。

 松浦氏は、登録全体の取り消しはできないとした上で、資料の一部に登録の基準となる「世界的意義(普遍的価値)」と「真正性」で問題点があれば、IACがその部分に限って登録を取り消すことは可能だと説明。ただ手続きは「容易でない」とも述べた。

 登録までの過程の不透明さなどが指摘される制度の改革に対しては、毎年2回開催される執行委員会(58カ国の政府代表で構成)の3分の2以上の賛成が必要なため、賛同国を募る取り組みに早急に着手すべきだと強調。「ボコバ事務局長も透明性を持たせるシステムを作らないといけないとの問題意識を持っている」と指摘した。

 一方で、ユネスコ予算の分担金を停止することについては「日本の意思表明として言うのは悪くないが、“脅かし外交”は今の国際社会では反発を招く」と述べ、否定的な見解を示した。