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2016年9月15日 (木)

どこまで図に乗る中共支那、南シナ海にミサイル・戦闘機を配備・29

南シナ海の他国領海で横暴な侵略行為を強行している中共支那が、スプラトリー諸島のファイアリークロス礁を勝手に埋め立てて造成した飛行場へ強引な侵略飛行を行なったのに続き、今度はベトナムから強奪したパラセル諸島のウッディー島に地対空ミサイル8基を配備し、さらに対空機関砲の設置に加えて戦闘機まで進出させた。
一方でベトナムと領有権めぐって係争中のスプラトリー諸島にあるクアテロン礁などには、高周波レーダー施設を設置したことも明らかになった。

同諸島はかねてよりベトナムと中共がその領有権めぐって係争中であり、こうした地域を一方的に自国領と断言し軍事施設を建設して、支配権の既成事実化を試みる中共支那の好戦的・冒険的な侵略行為は、ベトナム・フィリピンなど近隣諸国や関係国および公海上の海上交通路(シーレーン)の安全を脅かし、いたずらに紛争の危険性を高める、国際法上認めることの出来ない危険な挑発行為である。

この中共の重大かつ危険な挑発行為に対して、アメリカなどがこうした危険な行為を停止するよう要求しているにもかかわらず、これに対して中共は「最も重要なことは(自国の設置した)レーダーなどではなく、(米軍の)戦略爆撃機や駆逐艦を含む最新兵器が日々、南シナ海に出現していることだ」として居直り、こうした一連の行為が「(自国の)主権の範囲内」と強弁している。

こうした中共の態度は、世界の秩序を完全に愚弄する思い上がり図に乗ったものであり、中共がこうした態度を改めない限り、この地域での紛争・戦争の危険は日に日に増大するものと見なければならず、その結果中共軍は敗走して共産党の威信は失墜し、国内の暴動によって中共は崩壊するだろう。

このような凶暴かつ愚劣な行為を改めなければ、招来する重大な結果について、中共支那はその一切の責任を負わなければならない。

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リンク:「中国人民元経済圏へいずれ日本を引き込む」 中国、「金融工作会議」前倒し開催か 改革への外圧利用に権力闘争の影 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:南シナ海 台湾、太平島に中国軍監視レーダー? 現地紙報道、「米国製」で早期警戒 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中国の南シナ海進出に対抗 米国、新型爆撃機開発や最新鋭ステルス機取得へ アジアで軍備強化 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中国依存から抜けられなくなる豪州 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:米との軍事演習、比「次回が最後」 大統領「中国が嫌がっている」 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:南シナ海、平和的解決を確認=共同歩調を演出―比越首脳 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:フィリピン、17年も米と軍事演習へ 18年以降は再検討=外相 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中国に接近する「ドゥテルテ比大統領」外交感覚の背景 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:パールハーバー並みに大きかった中国の人工島基地 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:暴言頻発の比・ドゥテルテ大統領は、なぜ中国に尻尾を振るのか? - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:国際法による説明なしに法の秩序に挑戦する中国に、厳しい南シナ海判決 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中露合同演習はなぜ南シナ海で行われたのか - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:南シナ海問題でロシアを利用する中国 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:南シナ海情勢、記載せず ベネズエラでの非同盟諸国会議 ASEANが抗議 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:比元大統領、訪中中止 ドゥテルテ氏訪問、影響恐れ - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中国の理解不能な“膨張主義”がまかり通る3つの理由 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:個別交渉でASEANの切り崩しを狙う中国 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:フィリピン大統領、ロシア・中国との連携模索へ 年内訪問で - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:「殺してやる」「米国は黙れ」 フィリピンの暴言大統領はなぜ支持されるのか - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:フィリピン大統領、日本と中国を来月訪問 南シナ海問題協議へ - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:台湾、南沙諸島の島の画像にモザイク処理要求 グーグルに - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:尖閣の次は沖ノ鳥島、止まらぬ南シナ海問題の余波 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:「日本は孤立化招いた」、中国が南シナ海問題でけん制 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:最強の米軍は不変 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:フィリピン米国離れ中国接近の真相 ドゥテルテ大統領のしたたかさ その2 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:フィリピン米国離れ中国接近の真相 ドゥテルテ大統領のしたたかさ その1 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:フィリピンの暴言王ドゥテルテ大統領 中国包囲網に暗雲 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:対中強硬派のベトナムがASEAN諸国を結束させられない理由 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:あらゆる正面で閉塞状態の中国 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:日米訓練など通じ南シナ海への関与強めていく=稲田防衛相 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:天皇処刑と日本の共産革命に動き始めた中国 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:注目浴びるドゥテルテ比大統領。「対米反逆者」の運命は? --- 井本 省吾 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:東アジアにおける戦略関係の転換期 - 細谷雄一 国際政治の読み解き方 - 速報:Yahoo!ニュース.

以下、参考のために同記事を引用

「中国人民元経済圏へいずれ日本を引き込む」 中国、「金融工作会議」前倒し開催か 改革への外圧利用に権力闘争の影
産経新聞 10月1日(土)9時8分配信

 証券取引所のほか、銀行や保険など、世界を代表する金融機関のビル群が林立する上海市内の国際金融センター。中国人民銀行(中央銀行)の幹部はテラスでウイスキーのグラスを傾けながら、「67歳の誕生日にふさわしい日になりそうだな」とつぶやいた。

 1949年に毛沢東が北京で「中華人民共和国」成立を宣言して、1日で67年を迎える。中国経済を象徴する通貨「人民元」がこの日、米ドルに並ぶ国際通貨になったことに幹部は深い感慨を抱いていた。ドル、ユーロ、日本円、英ポンドに続く国際通貨基金(IMF)5番目の特別引き出し権(SDR)構成通貨に正式に組み込まれたのだ。

 2010年に日本を追い抜き国内総生産(GDP)で米国に次ぐ世界第2位に台頭した中国。国慶節と呼ばれる1日、通貨でも世界の中心に躍り出たとして、「SDR」の3文字が国威発揚につながる文脈で喧伝(けんでん)されることになる。

 そこには深遠な野望も見え隠れしている。「最終目標は中国経済の規模に相当する通貨の地位を得ることだ」。中国人民大学の国際通貨研究所は、「2016年版人民元国際化報告」をまとめ、こんな目標を掲げた。一方で、人民元のSDR組み込みは「一里塚に過ぎない」と戒めた。

 人民元のSDR構成通貨入りは、貿易量や通貨の取引自由度などからIMFが人民元に国際通貨との「お墨付き」を与えた形だ。それでも、報告書は、君臨する米ドル経済圏に対抗しうるパワーを人民元が得るまでは気を抜くなと警告したのだ。

 中国には「東南アジア諸国連合(ASEAN)や欧州などドル離れを起こす地域と『人民元経済圏』を構築し、いずれ日本もそこに引き込む」(上海の大学教授)との思惑がある。日本を含む米ドル経済圏に、中国が改めて挑戦状を突き付けることになる。

 貿易や金融取引の大半で使われるドルを発行する米国は為替変動の影響が少なく、ドルを世界各国が外貨準備に取り入れることなどで、国際経済の中心的な役割をほぼ独占してきた。

 そのドルを追う人民元は急速に力をつけてきた。新興勢力としてまだまだ安定感に欠く面もある。だが、中国の貿易総額に占める人民元建て決済比率は30%になった。その実力は着実についてきている。

 ただ、人民元を外貨準備に加えた国はまだ10カ国。貿易で人民元が使える直接取引が可能な国は16カ国。通貨を融通し合うスワップ協定を中国と結んだ国も33カ国に過ぎない。それでも英国やドイツなど欧州諸国の中には、ドルと人民元をてんびんにかける先進国も増えている。

 欧州や東南アジア、アフリカなどをチャイナマネーで引き付けながら、白と黒の石が繰り広げる囲碁のような戦いが、ドルと人民元との間の陣取り合戦で火花を散らし始めている。

 1998年公開の米ディズニー映画「ムーラン」がいま、上海や香港の金融市場で話題に上っている。

 世界銀行が9月2日、国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)建て債券を中国で発行し、その愛称が「ムーラン債」と名付けられたからだ。従来も日本円建て債券が「サムライ債」、香港で発行された人民元建て債券が「点心債」と呼ばれ、通貨にかかわる国の歴史や文化のイメージが投影されてきた。

 映画は、老病の父に代わって男装して戦いに出た娘の「木蘭(ムーラン)」が異民族を相手に勝利を収めた、という古代中国の物語に基づく。ムーランは「名誉」を映画の中で歌い上げた。SDR入りはいわば人民元が国際通貨として「名誉ある信認」を得るための一歩だ。金融市場ではムーランと印象が重なった。

 人民元の10月1日のSDR入りに先行した総額5億SDR(約700億円)の債券は、中国の国有商業銀行や三菱東京UFJ銀行などが争って引き受けた。

 米ドル、ユーロ、日本円と英ポンド。従来のSDR構成4通貨は(1)貿易規模と代金決済で使われる通貨の比率の高さ(2)金融市場で自由に交換や売買ができる-との条件が整っていた。

 だが、人民元は貿易で条件を満たすが、「外貨との交換や海外送金で規制が強く、国際通貨と呼べる水準に至っていない」(大手商社幹部)と指摘される。

 日本円や米ドルで投資した中国でのプロジェクトで人民元ベースの収益を上げても、その資金を自由には持ち出せないため、「収益の大半は中国内で内部留保するか再投資に回すしかない」(同)のが実情だ。

 さらに、SDR本来の目的であるIMFからの緊急融資の際、外貨不足に陥った国がSDRをIMFから受け取っても、中国当局の為替管理の壁で自由な交換ができなければ、人民元の構成比率10・9%分は使えないとの問題が生じる。

 それでもIMFが人民元のSDR入りを認めたのは中国との経済的な結びつきを深めたい英独など欧州勢の圧力に加え、SDR組み入れを条件に中国に金融改革を迫る狙いがあった。

 匿名を条件に取材に応じた中国の銀行首脳は、「5年に1度の中国共産党と政府による『全国金融工作会議』が、次回予定の2017年から1年前倒しし、この10月か11月にも開かれる見通しだ」と明かした。

 同会議では、人民元の為替市場と資本取引の大幅な自由化のほか、タテ割りが続く銀行・保険・証券の3つの監督当局と人民銀行を一体化させる“スーパー金融庁”の創設と、そのトップ人事が決まるという。

 中国が、金融改革を国際社会が望む方向に一歩進めれば朗報といえる。

 ただ、「いわばSDRという外圧を使って金融政策を仕切る既得権益層や国内の政敵のクビを切るのではないか」(関係筋)と、権力闘争激化を予想する声も聞こえる。最高首脳部の入れ替えもある5年に1度の党大会を来年秋に控え、党や政府は「人事の季節」に大きく揺れ動いている。

 加えて、「国際法を無視して海洋進出による覇権主義をむき出しにする国家の通貨への『信認』が、国際社会から得られるか」(日中関係筋)との根本的な疑念も残る。今年7月、南シナ海をめぐるハーグの仲裁裁判所の裁定で主張が全面否定された中国は、国際法に基づく裁定を「ただの紙くずだ」と切り捨てた。

 国際通貨の地位は国際社会からの信認なくして成り立たない。海洋進出など国際社会との摩擦を引き起こす姿勢と矛盾する。人民元がいつ「名誉ある信認」を得られるか。ムーランのようなハッピーエンドが迎えられるのか。なお予断を許さない。


南シナ海 台湾、太平島に中国軍監視レーダー? 現地紙報道、「米国製」で早期警戒
産経新聞 9月30日(金)18時3分配信

 【台北=田中靖人】台湾の夕刊紙、聯合晩報は30日、台湾が南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で実効支配しているイトゥアバ(太平島)で、移動式の早期警戒レーダーを設置するための建設工事を行っていると報じた。

 レーダーは米国製で、探知距離は約370キロ。中国が岩礁を埋め立てて滑走路を建設しているファイアリークロス(永暑)礁やスービ(渚碧)礁の周辺空域を監視できるという。

 太平島では9月、米グーグルの衛星写真提供サービス「グーグルアース」で、消波ブロック4個が新たに設置されていることが判明。台湾当局が同社にぼかし処理を求めていた。記事は、消波ブロックはレーダーの設置台を水平に保つためで、すでに完成しており、現在はケーブルや電源の工事中だとしている。

 国防部(国防省に相当)の陳中吉報道官は産経新聞に「(記事の内容は)論評しない」と答えた。


中国の南シナ海進出に対抗 米国、新型爆撃機開発や最新鋭ステルス機取得へ アジアで軍備強化
産経新聞 9月30日(金)12時18分配信

 【ワシントン=加納宏幸】カーター米国防長官は29日、オバマ政権によるアジア重視の「リバランス(再均衡)」政策を強化するための軍備強化策を発表した。北朝鮮による核・ミサイル開発や中国による東・南シナ海への進出をにらんだ新型戦略爆撃機の開発生産や、対艦・対潜能力の増強が柱。カリフォルニア州サンディエゴに停泊中の空母で演説した。

 北朝鮮による5回目の核実験を踏まえ、カーター氏は「核による威嚇(いかく)で米国の同盟国を脅し、地域の緊張を高め続けている」と非難。中国の海洋進出やサイバー攻撃に対しても「深刻な懸念」を表明した。

 カーター氏は米国や世界にとり「最も重要な地域」であるアジア太平洋の安定を確保するため「(米軍が)最強であり続けることを確実にするための投資を増やす」と述べた。

 具体的には今後5年間で、新型戦略爆撃機B21の開発生産に120億ドル(約1兆2千億円)以上▽バージニア級攻撃型原子力潜水艦に搭載する巡航ミサイルの増強や水中無人機の開発などに400億ドル以上▽最新鋭ステルス戦闘機F35を500機以上取得する費用として560億ドル以上-をそれぞれ投じるとした。


中国依存から抜けられなくなる豪州
Wedge 9月30日(金)12時10分配信

 CNAS(新米安全保障センター)のフォンテイン会長が、8月24日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙掲載の論説にて、米豪同盟強化を推進する豪政府と米中対立に巻き込まれたくない豪国民の感情のギャップを示し、米豪のそれぞれなすべきことを論じています。要旨、次の通り。

米豪同盟の新たな役割
 米国のアジアシフトにより、米豪同盟には新たな重要性が生じている。豪は、軍事力と地域における行動主義を高め、安全保障上のパートナーシップを強化し、米国との防衛及び諜報協力を強化している。しかし、米豪関係は多くの分野でかつてなく強力になったものの、肝心のアジアではまだ試されていない。

 同時に、豪経済の対中依存が懸念すべき脆弱性を作り出している。豪の輸出の3分の1が中国向けで、これは他のG20諸国のいずれよりも高い割合である。中国の対豪投資も増加している。また、昨年、5万人近い中国人学生が豪の大学・学校に入学し、同国の「教育輸出」産業を後押しした。

 中国は、地域支配をめぐる米中の対立に巻き込まれることへの豪州人の恐れを煽ってもいる。豪が中国に南シナ海をめぐる仲裁裁判を尊重するよう求めると、環球時報は豪を「張り子の猫」と呼び、「豪が南シナ海に入ってきたら、中国にとり格好の警告・攻撃対象となる」と警告した。同時に、中国は、豪世論の形成に、メディアなど様々なソフトパワーの手段を動員している。

 豪には中国の努力を受け入れる土壌があるように思われる。最近のU.S. Studies Centerの調査によれば、豪州人は、米中がアジアの助けになるか害になるかとの質問に対し、両国に同じような評価を与えている。同じ調査で、かなり多くの回答者が、米国よりも中国との関係強化を望むとしている。米豪同盟への支持は依然として高いが、政府の政策と大衆の感情のギャップは拡大している。大衆は、同盟国米国と経済的後援者たる中国の選択を避けたがっている。

 豪はこのジレンマを永遠に避けられない。豪が南シナ海での航行の自由作戦を実施すれば中国の経済的報復のリスクがある。新しい爆撃機と給油機を豪の基地をローテーションさせたいとの米国防総省の発表は、「封じ込め」戦略を避けるようにとの中国の警告に真正面から対立し得る。

 米豪は共に中国にくさびを打ち込まれないよう努力しなければならない。米国は、同盟のコストについてのトランプのような発言を慎み、地域への深く継続的なプレゼンスを示すべきである。TPPの失敗も阻止しなければならない。豪は、対中依存からくる経済的脆弱性と利益をよりよく理解する必要がある。豪政府は、描いている戦略的将来、そしてそれがどのように今日の防衛投資と外交的選択を動かしているか、大衆によく知らせるべきである。豪州人は、中国の行動を押し戻すためにどの程度のリスクを取る用意があるのか議論する必要がある。これで中国のくさびのリスクを除去できるというわけではないが、軽減する効果はある。同盟の利益は、獲得維持の努力を払うに値する。

出典:Richard Fontaine,‘Australia’s Ambivalence Makes It Vulnerable’(Wall Street Journal, August 24, 2016)

 豪州が、安全保障では米国、経済では中国のジレンマに立たされているというのは、その通りでしょう。中国との関係ではまず、中国が食料、鉱物資源の輸出先として、豪州にとり極めて重要であるという事実があります。今や中国は豪州の輸出の3分の1を占め、豪州の最大の輸出相手国です。豪中経済関係は貿易に止まりません。中国の対豪投資は、2015年には150億豪ドル(約1兆2300億円)と過去最高となりました。分野は鉱業に限らず、不動産、健康医療、農業に及んでおり、特に最近は不動産投資が盛んで、中国の対豪投資の45%に達しています。

永久に避けられないジレンマ
 人的面でも関係が急速に進んでいます。豪州を訪れる中国人観光客は、2014年12月~2015年11月の1年間で100万人を突破し、過去5年で2倍となりました。論説は、昨年5万人近い中国人学生が豪州に留学したと述べています。

 豪州における中国の存在は近年急速に拡大していますが、他方で、論説も指摘する通り、米国のアジアシフトもあり、安全保障面では米豪同盟は強化されています。安全保障を米国に経済を中国に頼るという立場が豪州の世論に反映され、米中がアジアの助けになるか害になるかの質問に対し、豪州の国民は米中両国に同じような評価を与えていると言います。「豪はこのジレンマを永久に避けられない」というのは、必ずしも誇張とは思えません。豪は安全保障で米国に頼らざるを得ないですが、中国を刺激して経済的報復を受けることを恐れています。中国が豪州の食料、鉱物資源の最大の顧客であり、中国が豪州経済にとってなくてはならない存在であることを考えれば当然の反応といえます。

 しかし、豪州はアジア・太平洋の安全保障にとって、日米の重要なパートナーです。特に中国の南シナ海進出を抑止するために豪州の協力は欠かせません。

 日米としては、豪州のジレンマは十分理解しつつも、豪州の経済面での対中依存が、安全保障面での協力にマイナスの影響を与えないように努力する必要があります。そのためにはまず豪州との不断の対話が不可欠です。それに加え豪州の国民が南シナ海問題を含む中国の意図を正しく理解し、中国に対する警戒心を持つことが望まれます。最近中国の豪州の不動産投資急増に対し、一部に警戒心が出てきていると報じられていますが、当然です。論説の指摘する中国の対豪世論工作についても、豪州国民が実態を理解することが必要でしょう。


米との軍事演習、比「次回が最後」 大統領「中国が嫌がっている」
産経新聞 9月30日(金)7時55分配信

 【シンガポール=吉村英輝】フィリピンのドゥテルテ大統領は28日、米国と続けている合同軍事演習について、10月に計画している次回が「最後になるだろう」と述べた。合同演習を「中国が嫌がっている」とした。訪問先のベトナムで、フィリピン人らとの集会で述べた。

 米比両軍は10月4~12日にルソン島などで上陸演習を予定。来年の合同演習計画の立案にも着手している。だが、ドゥテルテ氏はロレンサナ国防相に次回10月の合同演習のみを許可したとした。また、前アキノ政権時代に合意した、米軍による南シナ海での「航行の自由」作戦への参加も行わない意向を重ねて示した。

 ドゥテルテ氏は、米軍との軍事協定は維持する一方、今後は中国やロシアとの経済面での「同盟」関係を模索すると表明。10月には日本や中国に加え、ロシアの初訪問も検討している。


南シナ海、平和的解決を確認=共同歩調を演出―比越首脳
時事通信 9月29日(木)19時27分配信

 【ハノイ時事】フィリピンのドゥテルテ大統領とベトナムのチャン・ダイ・クアン国家主席は29日、ハノイの国家主席府で会談した。

 ベトナムメディアによると両首脳は、両国と中国などが領有権を争う南シナ海問題で、地域の平和と安定に向けて外交的な手段を通じた解決を目指すことを確認した。

 安全保障や経済分野に加え、麻薬犯罪やテロへの対策で連携することでも一致した。

 ドゥテルテ大統領は6月の就任以降、中国への配慮を示しているが、ベトナム側は対中警戒感が依然強い。両首脳は今回、中国に対する姿勢の違いを封印し、南シナ海問題で引き続き共同歩調を取る構えを国際社会に印象付けた形だ。


「トランプ政権下」の日米関係をどう考えるか? - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 9月29日(木)17時0分配信

<大統領選でトランプは、同盟国との関係見直しを公言しているため、仮にトランプが当選すれば日米安保体制は大きな転換を迫られる可能性がある。また例えヒラリーが当選しても、日米関係は現状維持では済まされない>

 米大統領選では、ドナルド・トランプ候補が「日米安保を見直す」とか「TPPに強硬に反対」という姿勢を取っています。仮に同候補が当選して大統領になると、日米関係が大きく転換を迫られるという議論があります。

 極端な場合、在日米軍が大幅に削減されて、否が応でも日本が「自主防衛」を迫られる可能性はゼロではないと思います。問題はカネだけではありません。例えば、

「日本を守ってやっている米兵がヘリや航空機の事故で負傷すると、同情や感謝ではなく、危険だという非難が飛んでくる、そんな国など守ってやるものか」

 などという発言も飛び出しそうです。

【参考記事】討論初戦はヒラリー圧勝、それでも読めない現状不満層の動向

 こうした「同盟国内の複雑な対米感情」というのは、イタリアでも韓国でもドイツでも、そしてもっと複雑で危険な構図としてはトルコやサウジアラビアでも一般的なものです。ですが、トランプ的な発想としては、そもそも「同盟国への持ち出し」が許せないとしています。

 ですから、「一方的にカネと人を出してリスクを引き受けているのに、それに感謝しない国は守るべきでない」というようなことを言い出しても不思議ではありません。トランプとその支持層である「オルタナ右翼」の「アメリカ・ファースト」という一派には、そのような考え方があります。

 そうなると、100%ではないにしても「自主防衛」への転換を迫られることになります。そして、仮にトランプへのリアクションだとしても、「対米従属」的な発想から「自立」ができるのなら、それは良いことだという議論があります。

 ですが、「何も考えない」ままで「自立」すれば、それは「孤立」を招くだけという危険性もあります。これは極めて重要な問題です。

 例えば、トランプ政権のアメリカが「後方へ撤退」する中で、東シナ海や南シナ海の問題が現在と同じように続くとします。その場合は、韓国が中国に傾斜して、日本が中国の圧力を真正面から受けるような軍事外交の戦略では、もはや安全保障とは言えないでしょう。

 日韓関係を盤石なものとして、その延長に台湾の自由を維持するような力と外交のバランスを取らなければ、東アジアの安全は確保できません。対北朝鮮の問題も同様で、中韓が連携し、日本が孤立して、北のリスクを日本が単独で受け止めるような外交戦略というものはまずあり得ません。

 例えばトランプには「人権外交」などという発想はゼロです。ということは、アジアにおける人権の問題については、中国にしても、北朝鮮にしても、あるいはフィリピンの場合でも、日本が被害者保護や圧力行使など何らかの役割を果たしていかなければならないでしょう。

 その場合、まず日本社会において、世界から尊敬を受けるレベルの人権が確保されることだけでなく、国連やEUとの連携なども重要になってくると思います。そこで日本がリーダーシップを発揮するためには、一部の立場からは心外かもしれませんが、政治家の靖国参拝や慰安婦問題における「名誉回復」企図など「現代の価値観、国連や国際法の枠組み」から逸脱した行動は封印しなくてはならなくなると思います。

【参考記事】alt-right(オルタナ右翼)とはようするに何なのか

 国際社会における難民問題や人道支援問題などについても、トランプ政権のアメリカは「中国やロシアのように」振る舞う危険があるわけです。そうなれば、日本は欧州と連携して国連を機能させ、地球における人道危機に対処していく必要に迫られるのではないでしょうか。

 仮の話ですが、トランプのアメリカがNATOを軽視し、日米安保を軽視するのであれば、反対に日本がNATOの欧州とカナダに接近するか、あるいは加盟するというようなことも検討に値すると思います。

 一方で、ヒラリーが当選した場合は、基本的に「オバマ外交」が大筋で継承されることになるでしょうが、政権が変わることで、そこに変化が生じる可能性は十分にあります。特に「自分はオバマより強硬」だと公言しているヒラリーの場合、日米関係やアジア政策の全体で少し違うトーンになる可能性はあります。

 ヒラリーの場合は、何と言っても2009年からの4年間のアメリカ外交を主導した中で、中国との対決姿勢を取ってきたという「過去」があります。例えば、現在「南シナ海問題」と言われて世界が注目している、中国の海洋進出に対する牽制の動きというのは、すべて2010年7月にヒラリーがベトナムのハノイで行った「航行の自由」演説に端を発しているのは、誰もが認めるところでしょう。

 そこで、ヒラリーには2つの可能性があります。

 1つは大統領に就任後も、対中強硬姿勢を強める可能性です。その場合、日米同盟はこれまで以上に重視されるでしょう。では、オバマと同じように、日米が蜜月になるかというと、そうとは限りません。何しろ、トランプに代表されるような「アメリカを優先しないと許さないぞ」という「オルタナ右翼」が国内にいて、ヒラリーの「失態」に睨みを利かせている中では、「大統領としての広島訪問」などは難しそうだからです。

 また、現職閣僚の靖国参拝や、枢軸日本への肯定論のようなものも、オバマ時代のように「国内向けのパフォーマンスで、国際的には人畜無害」だという許容はしてくれないでしょう。中国との確執が強まるのであれば、アメリカの足を引っ張り、相手の増長に口実を与えるからです。

 もう一つには、ヒラリーが大統領になった途端、過去の経緯を水に流して「親中ヒラリー」に変身する可能性もゼロではありません。その場合は、日本もうまく立ち回れば、東シナ海の緊張をトーンダウンさせることも可能になるかもしれません。

 ですが、そうなった場合、アメリカは「中国の不良債権問題」、つまり陳腐化した生産設備など巨額な「目に見えない債務」リスクについて、厳しい目を光らせることを止め、破綻を先延ばしして本質的な解決とソフトランディングから逃げる危険性があります。中国を「甘やかしすぎる」ことで大破綻を招くようなリスクもあり得ます。

【参考記事】トランプ当選の可能性はもうゼロではない

 これに対しては、日本は警戒しなければならないと思います。その場合、世界中が金融緩和に流れる中で、どこかのタイミングで、米欧に先んじて日本が財政規律重視にシフトするなどのサバイバル策を考える必要も出てくるかもしれません。

 これに加えてヒラリーの場合は、中東への「関与」を「成功させる」野心が見え隠れしています。イランの無害化、クルド系の地位向上、トルコとロシアへの牽制、シリアのアサド政権打倒、ハマスの無害化とイスラエル=パレスチナ和平の仕切り直し、タリバンの無害化工作、アフリカの過激派掃討といった問題について、オバマがやらなかった「介入」をヒラリーは進めるかもしれません。

 そうした問題が提起された場合、日本は果たしてどのような方針を取るのか。イラク戦争のように「後に苦い後悔をする」ような事態は避けなければなりません。


フィリピン、17年も米と軍事演習へ 18年以降は再検討=外相
ロイター 9月29日(木)16時10分配信

[ハノイ 29日 ロイター] - フィリピンのヤサイ外相は29日、同盟国である米国との共同軍事演習を2017年も行う方針を示した。18年以降の実施については再検討するとした。

フィリピンのドゥテルテ大統領は28日夜、米軍との合同演習は次回10月が最後だと発表していた。

ヤサイ外相は、17年の演習は前政権が合意したものだとし、その後に関して再検討すると述べた。

また、フィリピンは軍事同盟を望んでおらず、すべての国と友好関係を築くことを望んでいるとし、これが南シナ海での対立解消に向けた方策だと語った。


中国に接近する「ドゥテルテ比大統領」外交感覚の背景
新潮社 フォーサイト 9月29日(木)15時45分配信

 麻薬犯罪容疑者に対する容赦のない超法規的殺人を認めているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(71歳)をめぐっては、6月30日に大統領に就任して以来暗殺の噂が絶えない。

■大統領暗殺の可能性

 アンダナール大統領補佐官(広報担当大臣)は2016年9月20日、大統領府が置かれているマラカニアン宮殿で記者会見を行い、フィリピン系米国人の一味によるドゥテルテ大統領を追放する企てが発覚したと述べた。暗殺を企てるグループとして浮上してくるのは、(1)麻薬密売組織(2)イスラム過激派(3)失脚した治安関係者(4)米国の特務機関など、いずれもドゥテルテ大統領が目の敵にしてきた相手であり、誰が大統領を暗殺しても不思議ではない構図が出来上がっている。この麻薬犯罪容疑者約3000人の超法規的措置のほかに、ミンダナオ島ではイスラム過激派への掃討作戦を展開し、麻薬密売に関与したとして警察幹部を名指し失職させた。米国オバマ大統領や国連事務総長がフィリピンには重大な人権問題があると批判すれば、オバマ大統領へ暴言を吐き、国連を脱退すると口走る有様だ。
 世論調査機関のパルスアジアが7月に行った調査では、実に91パーセントの国民がドゥテルテ大統領を支持するなど、全国的に圧倒的な支持率を誇る大統領だが、既得権益層や人権団体からは煙たがられる存在であることも事実だ。米英欧の海外メディアからは、連日のように人権問題で批判されるため、大統領は海外メディアが嫌いなことでも知られる。米国誌『タイム』(9月26日号)は、カバーストーリーに「夜の帳(とばり)がフィリピンに降りるとき」と題して、「麻薬戦争に立ち向かうドゥテルテ大統領の悲劇的な代償」を特集している。一方、人権問題で窮地に立たされているドゥテルテ大統領に、こっそりと歩み寄ったのが中国であった。

■「中国に感謝したい」

「中国が我々を助けてくれる。中国の厚意に対して感謝を述べたい」――南シナ海の領有権問題で中国と闘っている筈のあのドゥテルテ・フィリピン大統領が、9月9日にインドネシアの首都ジャカルタで発した言葉だ。中国に抗議することはあっても、まさか感謝する理由はないと、誰もが耳を疑った発言である。ラオスで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議から帰国する直前にジャカルタに立ち寄り、在外フィリピン人向けの集会に参加した際の演説であった。
 中国の「厚意」は何かと言えば、フィリピンに対する、麻薬中毒者を治療するためのリハビリ・センター建設資金供与のことだ。「来年(2017年)、フィリピンにリハビリ・センターを建設する。現在、我々はその準備をしている」と語った直後に出た発言が、中国に対する感謝の言葉であった。6月30日にアキノ前政権から政府を引き継いでも、麻薬対策予算がなくて困っていたドゥテルテ大統領に、救いの手を差し伸べたのが中国にほかならない。ラオスの首都ビエンチャンで開催されてきたASEAN関連の首脳会議で、中国はドゥテルテ大統領が全精力を傾けている麻薬撲滅作戦へ協力するとの立場から、リハビリ・センターの建設資金を提供すると約束した。
 米国のオバマ大統領は、フィリピン政府が強行する薬物犯罪容疑者に対する超法規的な殺人を人権問題として痛烈に批判するだけで、フィリピンに具体的な救いの手を差し伸べてくれない、との思いがドゥテルテ大統領にはある。人権問題には触れずに、薬物中毒者を治療するリハビリ・センターの建設費を提供することで、中国はフィリピンに秋波を送り、ドゥテルテ大統領はその厚意に感謝したのである。

■手打ち式

 アキノ前大統領と異なり、ドゥテルテ大統領の中国に対する警戒感は極めて薄い。フィリピンと中国との手打ち式は9月7日、ビエンチャンで開かれた中国ASEAN首脳会議の場で、大勢のプレスを前に行われた。同会議の開幕に際しては、大型スクリーンに中国側が用意した中国とASEANとの友好の歴史を描いた動画が流され、ミャンマーのアウン・サン・スーチー国家顧問、シンガポールのリー・シェンロン首相らは唖然とした表情で見入っていた。動画のメッセージは、中国とASEANにとって南シナ海問題は存在しないというものであった。
 同首脳会議を閉会するに際して、カンボジアのフン・セン首相が、ドゥテルテ大統領の背中を軽く押すように演壇の中央へ案内し、さらにラオスのトンルン首相が同大統領を誘導して、演壇の中央で待ち構えていた中国の李克強首相と引き合わせた。南シナ海は一触即発という報道が躍る中、両国首脳は微笑みながら握手し、会場を驚きの渦に包んだ。親中派で知られるラオスとカンボジアの首脳が、中国とフィリピンの手打ち式を演出した光景であった。南シナ海問題でASEANの中で中国に対して厳しい外交姿勢をとってきたフィリピンが、対中外交の軸を公の場で変えた瞬間だった。

■対決よりも経済協力

 しかしフィリピン政府が対中関係を、ビエンチャンの首脳会議で突然変えたわけではない。その兆候はすでに見え隠れしていた。中比首脳の握手から9日前の8月29日、マニラで開催された国際会議「日本ASEANメディア・フォーラム」(国際交流基金主催)で、フィリピンが南シナ海問題で対中交渉に踏み切る可能性を、ヤサイ外相がすでに示唆していた。同フォーラムは筆者がプロデュースしている国際会議で、今回のマニラ会議ではドゥテルテ大統領の側近であるヤサイ外相に加えて、アンダナール大統領補佐官=写真=の参加を取り付けることができた。オンレコの会見を快諾して頂き、その際の発言がそのままニュースとなって配信された。こうした要人との会見によって、首脳陣の息遣いや空気感を肌で感じることができる。
 南シナ海問題の解決には、「中国の挑発停止が条件」(日本経済新聞8月31日朝刊)としつつも、「国益を最優先、南シナ海、対中妥協を示唆」(読売新聞8月31日朝刊)、「ASEAN首脳会議 南シナ海の問題は」(NHKテレビおはよう日本、9月7日)という見出しで記事が配信された。中国がスカボロー礁などで人工島建設などの挑発的な行為をしなければ、フィリピン政府は対中交渉にオープンだという、ヤサイ外相のメッセージであった。
 すでに8月上旬、ドゥテルテ大統領の特使としてラモス元大統領が香港を訪れ、11日には中国の外務次官などを歴任した全国人民代表大会(全人代=国会)外事委員会の傅瑩主任と会談しており、この段階で中比2国間交渉の可能性が囁かれ始めた。
 南シナ海問題をめぐるハーグの仲裁裁判決(7月12日)では、中国の南シナ海領有化を全面的に否定し、提訴したフィリピンが全面的な勝利を獲得したが、これはあくまで法的な勝利であって、外交・安全保障の分野における勝利にはつながらない、との認識が政権側にはある。そもそも中国に対抗できる海軍もコーストガードもなく、海上における中国との対決は不可能であるとの立場を取っている。日米がフィリピンを沿岸警備能力の強化などで支援してくれても、中国の海軍や海上警備機関の「海警」には歯が立たない。そうであるならば、中国から資金援助などを引き出し、フィリピンの経済発展に利用した方が得策だとの考えに辿り着く。
 マニラ首都圏は経済成長が著しいが、大統領自身の地盤であるダバオなどの地方都市も何とかして豊かにしたいとの思いが強い。そのためには中国マネーを活用するのが、一番手っ取り早い。各地を高速鉄道で結び、地方都市のインフラ整備を行い、中国系企業を誘致するという発想だ。中国による南シナ海進出に際して、「水上バイクで(中国の人工島建設現場へ)乗り込んでやる」と発言しつつも、中国が高速鉄道を建設してくれるなら中国と手を組んでも良いと述べるなど、中国に対しては硬軟のレトリックを採用するドゥテルテ大統領である。
 大統領選挙戦の最中に、「匿名の中国人から献金を受けていたことを認めた」(英誌『エコノミスト』9月17日号)ように、ドゥテルテ大統領はすでに中国マネーの洗礼を受けているのだ。そして、匿名の人物の背後に中国政府が控えていても何ら不思議ではない。

■「パート・チャイニーズ」

「ドゥテルテ大統領が、中国に対してフレンドリーなのは、彼の体の中に中国人の血が流れていることが、影響しているのかもしれない」と、マニラの地元記者から耳打ちされたことがある。
 フィリピンでは、中国系の血が混じっている人のことを「パート・チャイニーズ」と呼ぶ。部分的(パート)に中国系の血が流れていることを示す言葉だ。長い歴史の中で、血の混ざり具合は千差万別となり、ハーフなどと呼べる状態ではなく、パートという言葉がごく自然に使われるようになった。先住民が住む島々へポルトガル人、スペイン人、アラブ人、中国人、米国人、日本人がわたり、ハイブリッドな民族を生み出していった。
 フィリピン総人口に占める直系中国人の割合は、およそ2パーセント前後と言われている。現在の総人口は1億人に達しており、単純計算で直系の中国人は200万人前後ということになる。しかし、パート・チャイニーズまで視野に入れて参入すると、中国系はおよそ30パーセント、つまり3000万人が居住しているとみられる。
「私の祖父は中国系(チャイニーズ)であった」――ドゥテルテが立ち合い演説会で口走ったと言われる一節だ。大統領には中国系の血が流れていると、マニラの地元記者からも聞いたことがあり、また大統領の家系を追跡したネット情報でも、ドゥテルテの発言は確認できるのだが、信頼できる公開資料で家系を証明することが出来ない。
 フィリピンでは、実に多様な血が混じっているため、家系図を詳らかにするのは困難だ。本稿では、ドゥテルテ大統領が中国系であるという可能性を指摘するにとどめざるを得ないが、中国系の血筋を指摘されるほど、ドゥテルテ大統領は中国に対してオープンであり、抵抗感がまるでない。
 東南アジアの国々では、中国南部から移住してきた中国系は政治家、国家公務員、軍隊、公安関係への就職が閉ざされてきたため、中国系が生きる道は、ほぼ流通業や販売・サービス産業などのビジネスに限定されてきた。彼らは同じ境遇の下で臥薪嘗胆し、ビジネス界で財を成して有力者にのし上がっていった。そしてドゥテルテ大統領にとっての事実婚の相手も中国系と聞く。

■実質的な“ファースト・レディー”も中国系

 ドゥテルテ大統領が現在、ダバオの私邸で家庭生活を共にする相手は、実質的な“ファースト・レディー”であるハニーレット・アバンセーニャ(46歳)。ドゥテルテ大統領と事実婚の関係にあり、入籍はしていない。ダバオでは敏腕の実業家として知られる女性で、ドゥテルテとの間に愛娘ヴェロニカ(愛称キティ、12歳)がいる。ハニーレットも中国系の血が流れているようだ。
 ハニーレットの場合は、母親が中国系であるという。もともと中国南部から移住してきた家系で、商才に長けているともっぱらの評判だ。彼女はダバオの医療大学(ダバオ・ドクターズ・カレッジ)を卒業した後に米国へ渡り、看護師として4年間勤務した。大学時代にミス・キャンパスの栄冠を勝ち取り、市政を牛耳っていたドゥテルテ氏の目に留まった。経緯は不明だが、滞米中に彼女はドゥテルテの子供を授かり、育児のためにダバオに戻ることになった。母子家庭を支えるためにビジネス界へ転身し、中国系のネットワークを存分に活用して、いまではミスタードーナツの店舗11軒を経営、さらに精肉店など食材店を切り盛りする名物オーナーになった。この先には、大型ショッピングモールの経営も視野に入っているようだ。
 このように、ドゥテルテ大統領の生活環境には中国系の社会がごく自然に展開している可能性があり、中国系への抵抗感は無く、むしろ親近感を持っていてもおかしくはないといった状況が考えられる。
 前アキノ大統領の中国への強硬な外交路線とは対極的に、ドゥテルテ大統領は中国に対して歩み寄る姿勢を見せている。かつての中国と異なり、現在の中国は世界第2位の経済大国であり、重要な資金源である。ダバオを軸とした地方創生を思い描くドゥテルテ大統領にとって、資金調達を進める上で中国は重要な交渉相手であることは間違いない。
 スカボロー礁をめぐる領有権問題に関しても、(1)中国が人工島を建設する(2)中国が撤退する(3)中比が共同開発する――これらの選択肢の中で、中国が人工島を建設せず、海警の船舶を残すことに目をつぶりつつも、岩礁周辺の洋上から建設用の工作船を撤収させてフィリピンの面子を保つ。その上で、中比が共同開発するという選択肢を、ドゥテルテ大統領は構想しているのではないだろうか。国連海洋秩序を踏みにじった中国を、口では糾弾しつつも裏では追認するドゥテルテの手法は、南シナ海外交全体に新たな波紋を生みそうだ。
 ドゥテルテ大統領は、ミンダナオ島ダバオ市で30年間にわたって市政を切り盛りしてきた根っからの国内派で、国政や外交経験は皆無。地方政治の国内感覚で、外交の舞台に飛び込んできた。フィリピンは来年1月1日からASEAN議長国になる。

獨協大学外国語学部教授 竹田いさみ

Foresight(フォーサイト)|国際情報サイト
http://www.fsight.jp/


パールハーバー並みに大きかった中国の人工島基地
JBpress 9月29日(木)6時15分配信

 「南シナ海の大部分が中国の“主権的領域”である」とする「九段線」(本コラム2016年7月21日「仲裁裁判所の裁定に反撃する中国の『情報戦』の中身」参照)は、ハーグの国際仲裁裁判所によって「国際法的には認められない」と裁定された。だが、この裁定によって、ますます国際的にその名が浸透してしまっている感が否めない。

■ 一笑に伏せなくなった“怪地図”

 中国では南シナ海の九段線にとどまらず太平洋の広大な海域をも中国の“主権的領域”であるとする境界線が引かれた世界地図が出回っているという。この世界地図が実際に中国国内でどの程度浸透しているかは分からない。しかし、インターネットを通して国際社会に向けて発信されていることは確かである。

 この種の“怪地図”はこれまでにも繰り返し登場しており、かつては米軍やシンクタンクの中国専門家たちの多くはまともに相手にしなかった。しかしながら、今回は少なからぬ人々が問題視しており、議論が続いている。

 差し当たって中国の覇権がこの地図の通り実現するとは考えられていないものの、「中国の戯言」として一笑に付している段階は過ぎ去ったと考えねばならなくなった。

■ 人工島の軍事的価値を軽視する“主流派”陣営

 もっとも、現在進行中の中国による南シナ海(九段線内部領域)での覇権確保作業に関しても、対中専門家たちの間での評価、そして対応構想が一致しているわけではない。

 どちらかというとオバマ政権に近い軍首脳や“大手”シンクタンクの論調などの多くは、中国が完成を急いでいる南沙諸島人工島基地群を含めて人民解放軍の南シナ海覇権確立能力に関して、「空母打撃群を擁する米海洋戦力にとって、まだ必要以上に脅威論を振りかざす必要はない」といったスタンスである。

 これに対して、直接中国戦力と対峙する責を負っている第一線に近い戦略家や、より柔軟な戦略眼を持つ(これまでの戦略に拘泥しない)研究者などの多くは、アメリカ軍の介入に対抗すべく構築された中国A2/AD能力(接近阻止領域拒否戦略とそれを実施するための海洋戦力)は「巷で思われているよりも、より強力で効果的である」と考えている。

 このような中国A2/AD能力に対する評価の違いに加えて、中国人民解放軍に対する基本的スタンスも「関与(取り込み)」政策と「抑制(封じ込め)」政策とに分かれている。そのため、対中戦略の基本方針はますます混沌としている。

 オバマ政権下では“主流”ともいえる関与陣営が、過度な脅威論に慎重な姿勢をとるのは論理的に自然である。一方の抑制陣営が、中国のA2/AD能力を重大なる脅威であり、ますます脅威が増大しつつあると認識する傾向が強いのは言うまでもない。

 ただし、人民解放軍のA2/AD能力に対する評価軸と対中軍事政策に関する基本姿勢軸は単純には一致していないため、話はますます複雑になっているのだ。

■ 思われているより巨大な人工島基地

 中国が巨費を投じて南沙諸島に建設した7つの人工島のうち、ファイアリークロス礁、ミスチーフ礁、スービ礁に3000メートル級滑走路が姿を現したことは本コラムでもたびたび紹介した。ただし、それらの環礁を埋め立てた人工島や滑走路の航空写真を見ただけでは「洋上に浮かぶちっぽけな航空基地に過ぎないではないか」との声が上がりかねない。

 対中戦略研究者としてそのような受け止め方に強く警鐘を鳴らす米海軍将校のトーマス・シュガート氏は、興味深い写真をインターネットで公開した。それによると、ファイアリークロス礁に誕生した“航空基地”は、たとえば中国空軍の遂渓航空基地(第2戦闘機師団第六航空連隊、スホイ27/J-11を保有する)の規模に匹敵する面積である。すなわち、“ちっぽけな”と考えられがちな人工島航空基地には、航空連隊(航空団)1個部隊が常駐可能なのである。

 ということは、南沙諸島に航空連隊3個部隊が展開可能ということになる。そして、それらの人工島航空基地には爆撃機や大型輸送機までもが発着できる。さらに、滑走路を有する3つの人工島にはもちろんのこと、7つすべての人工島には、高性能レーダーシステム、地対艦ミサイル、地対空ミサイルそれに対地攻撃巡航ミサイルや弾道ミサイルまでもが配備可能である。そのため、人民解放軍はアメリカ海軍原子力空母よりも強力な航空戦力を南シナ海洋上に展開できることになるのだ。

■ 役に立たないどころかきわめて強力な人工島基地

 ただし、空母と違い人工島は移動できない。そこで、「精密攻撃手段が発達した現在、いくら人民解放軍が人工島という固定基地に各種ミサイルを多数配備しても、米軍や同盟軍によるピンポイント攻撃により沈黙させられることになる」といった楽観論がまことしやかに語られている。

 しかしながら、人工島基地は意外と広いことを忘れてはならない(再びシュガート氏の比較写真を見れば一目瞭然である)。

 たとえば3000メートル級滑走路があるスービ礁には、他の人工島同様に航空施設だけでなく軍艦や輸送船が使用できる港湾施設も併設されている。その広がり(面積ではない)はアメリカ太平洋艦隊の本拠地であるパールハーバーの海軍基地と匹敵する。また、ミスチーフ礁の広がりに至っては、ワシントンDCの主要部がすっぽり収まるくらいの距離がある。

 南沙諸島人工島に設置される各種ミサイルシステムは、地上移動式発射装置(TEL)から発射される。TELに搭載された地対艦ミサイルや地対空ミサイルは、そのような広がりを持つ人工島内を動き回ることができるのだ。したがって、いくら高性能精密攻撃兵器を有していても、容易に攻撃目標を特定できない。

 皮肉なことに、TELを攻撃することがいかに困難な作戦であるのかは、アメリカ軍自身がイラクなどでの実戦経験を通して“実証”している。それゆえ、米軍の動向から多くを学び取っている人民解放軍がTEL発射式の各種ミサイル戦力を充実させているのである。

 さらに攻撃側にとって問題なのは、人工島には軍事施設とともに、研究施設や気象測候所、それにホテルやリゾートビーチなどの観光施設も併設されることである。非戦闘員である民間人が滞在する人工島の、それも生来的に攻撃が困難なTELを沈黙させることは、現在アメリカ軍が保有する高性能ピンポイント攻撃兵器といえども不可能に近いのだ。

■ 敵を見くびった方が負ける

 「巷で考えられているより、実は人民解放軍のA2/AD能力は強力と考えねばならない」という事実は、上記のような人工島基地に関して以外にも枚挙にいとまがない。

 古来より言われているように「敵を知り、己を知る」を実践しつつ構築されている人民解放軍の南シナ海A2/AD能力(そして東シナ海A2AD能力も)を決して見くびってはならない。古今東西の戦史は、敵を見くびった側が敗北していることを豊富に物語っている。


暴言頻発の比・ドゥテルテ大統領は、なぜ中国に尻尾を振るのか?
週プレNEWS 9月29日(木)6時0分配信

今もっとも国際政治を賑わせているフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。相手が国連だろうが、アメリカだろうが、カトリックの頂点だろうが、とても一国のトップとは思えない暴言はとどまるところを知らない。

「バカ者!」(人権尊重を求める国連の潘基文事務総長に)
「売春婦の息子が!」(人権尊重を求めるオバマ米大統領に)
「あれはオカマ野郎だ!」(ゴールドバーグ駐比米大使に)
「もう来るな!」(訪比したローマ法王フランシスコに)

しかし、数々の暴言を発してきたドゥテルテは、1980年代からダバオ市長を7期にわたって務め上げ、大統領選でも圧勝した過去を持つ。この男は、本当にただの“狂犬”なのだろうか?

気になるのは、彼が「あの国」にだけはやけに気を使っているように見えることだ。国際ジャーナリストの河合洋一郎氏はこう語る。

「発言の過激さでは本家ドナルド・トランプを凌駕(りょうが)するドゥテルテも、なぜか中国の前では借りてきた猫のようになってしまいます。大統領選の時期には『ジェットスキーで中国が埋め立てた人工島に上陸し、フィリピン国旗を立てる』など勇ましい発言もありましたが、あとは『中国が交渉のテーブルに着いてくれれば話し合いをしたい』『私の祖父は中国人だから中国とは戦争したくない』など、弱気ばかりが目立ちます」

南シナ海の領有権問題で、フィリピンと中国は対立しているはずなのだが…。さらに、9月13日にはこんな“媚(こ)び発言”も飛び出した。

「南シナ海で中国を刺激せず、今後は麻薬密売人と反政府勢力との戦いに専念する。それらと戦うための軍装備を中国とロシアから求める」

フィリピンの狂犬は、なぜ中国に尻尾を振るのか? その秘密は彼の大学時代にまで遡(さかのぼ)る。中国や東南アジアの事情に詳しいジャーナリストの古是三春(ふるぜ・みつはる)氏はこう語る。

「ドゥテルテの大学時代の恩師はホセ・マリア・シソン。毛沢東主義の下で結成されたフィリピン共産党の軍事部門である新人民軍(NPA)の創始者で、アメリカとEUが『テロリスト支援者』に指定した共産ゲリラの大物です。彼の影響を色濃く受けたドゥテルテも、思想的にはバリバリの左派なのです」

中国人の祖父を持つドゥテルテは検事などを務めた後、フィリピン最悪の犯罪都市だったダバオ市の市長に就任。華僑や中国系企業家の支援を受け、荒っぽい手法で治安を改善させていった。

「市長時代も、大統領就任後も、彼は腐敗官僚や麻薬犯罪に対して“超法規的”なまでの厳しい態度を見せています。これは中国の文化大革命時代、『造反有理』(理のあることを実現するのに法は関係ない)を掲げて反対派を躊躇なく殺した毛沢東思想と共通するものがあります」(古是氏)

ドゥテルテの「人権無視」の根底には、毛沢東流の社会主義思想が流れていたのだ。しかも、ドゥテルテと中国とのつながりは思想だけではないーー。

発売中の『週刊プレイボーイ41号』では、フィリピンの狂犬の“裏の顔”に肉薄。日本とも密接に関係ある南シナ海情勢のカギを握るフィリピンの大統領が、中国の飼い犬になりつつある現状を取材しているので、是非そちらもお読みいただきたい。

(取材・文/小峯隆生 協力/世良光弘)

■週刊プレイボーイ41号「“フィリピンのトランプ” 狂犬ドゥテルテ 『中国の飼い犬化』で日本の生命線が切断される!!」より


国際法による説明なしに法の秩序に挑戦する中国に、厳しい南シナ海判決
Meiji.net 9月28日(水)12時52分配信

国際法による説明なしに法の秩序に挑戦する中国に、厳しい南シナ海判決
奥脇 直也(明治大学 法科大学院 教授)

 南シナ海におけるフィリピンと中国の紛争について、7月12日、オランダのハーグにある国際仲裁裁判所は 中国が主張するこの海域における歴史的権利は、国際法上根拠がないと断定しました。
 しかし、中国はこの判決について「受入れず、認めない」と表明し、事態はまったく変わっていないように見えます。本当に国際法は効力がなく、無力なのでしょうか。

◇裁判が万能薬でない国際法

 国際法は、一般の人にはあまり馴染みがなく、どのようなものか理解している人は少ないかもしれません。
 一言で言えば、主として国家と国家の関係を規律する法ですが、日本における六法全書のように、法典としてまとめられているわけではなく、国の領域(領土)の問題や、人権の問題、海洋における領域や漁業権の問題など、様々な問題ごとに各国間で取り決められた条約や協定、さらに慣習法などによって構成されています。
 国際関係における国家の存立の基盤をお互いに尊重し、かつ維持していくということが基本になっています。

 実際、国際法には統一的な法の機関はありませんし、国内におけるような裁判所もありません。それで法なのかと思う人は多いかもしれません。
 法を犯した人を罰することによって社会の安定を図る国内法を基準に考えるとそうですが、基本的に国際法とは、国家間で合意事項をベースにして外交的コミュニケーションを効率的に行うためのツール、と考えればわかりやすいのではないでしょうか。
 
 だから、それは紛争が生じた場合でも、裁判に直ちに結び付くわけではなく、国際法の概念と確定したルールを用いてコミュニケーションすることによって、国家が相互に何を意図しているか、より正確に理解可能にする。
 これが国際法のひとつの大きな機能なのです。

◇他国に受入れられることで、新しい概念も国際法になる

 国際法は、裁くためのツールというより、まずは国家相互の存立を維持していくためのコミュニケーションのツールなので、遵守するだけでなく、例えば産業や様々な技術の進歩や革新などに応じて生じる国際状況の変化に応じて、随時、新しい概念が取入れられ、その結果、変わっていくという特徴をもっています。

 例えば、国際的に確定した国家の領域には基本的に他国から自由に出入りすることはできませんが、国際郵便の発達により、万国郵便連合が組織され、連合員を構成する国家の間では国際郵便の国境通過が自由となりました。
 国家の領域で仕切られていることの不都合を是正する条約、つまり国際法が、郵便技術の発達に応じて新たに創られ、国際郵便業務が国際公共事務として認められるようになったわけです。

 また、国連海洋法条約により200海里を排他的経済水域(EEZ)とすることは国際法として認められていますが、これは1945年にアメリカのトルーマン大統領が、自国沿岸の大陸棚の排他的権利を主張し、また自国の沿岸漁業者を他国の遠洋漁業者から守るために排他的管轄権を宣言したことが始まりです。
 EEZの概念がなかった当時は、トルーマン大統領の一方的な宣言は、伝統的な公海の自由に反する違法行為と見ることもできます。

 しかし、大陸棚やEEZの概念が諸国によって受入れられ、国家間の同意に基づいた条約(あるいは慣習法)となったことで、この概念は新しい制度、すなわち新しい国際法として確立されました。
 一度確立された国際法は、外交のコミュニケーションのツールとなります。EEZの場合は、国家間で漁業領域の争いが起きたときには、この概念を土俵として、当事国同士が外交や交渉を行うことができるわけです。

 この例のように、どこで違法が合法になるのかは、国際法では非常に微妙です。確立された国際法を遵守しながらも、新しい法を提案する権利をそれぞれの国がもっているからです。

 しかし、少なくとも一方的に宣言しただけで、それが国際的な新しい概念、新しい国際法になるということでもありません。新しい提案をする場合は、それが自国のエゴの押しつけではないのか、他国が受入れられることであるかを確認するとともに、その新しい概念が理解され共有されることを目指して、法的概念として説明していくことが重要です。

◇当事国が受入れ得るオプションを残す国際裁判

 では、国際裁判所の役割は何かといえば、通常は、いずれかの国の行為をあからさまに非難することではありません。
 仮にそのような判決を出しても、国際裁判所には判決を執行するメカニズムがありません。
 国際裁判所で当事国が互いに法的な議論をすることで、裁判所側は当事国が何を実現することを目指しているのか、何を求めているのかを把握し、その判決がその国によって受け入れうるような行動の余地を残すことも多いのです。
 そのため国際裁判は、紛争当事国と裁判所による協働のプロセスであるといわれています。
 もともと執行制度をもっていない国際裁判所にとっては、どのような判決が実現可能なのかを見越し、当事国がともに受入れ得るような余地、オプションを残すことが重要なのです。ときには、当事国間で交渉しなさいと、交渉命令判決を出す場合もあります。

 北海における大陸棚の境界を巡って西ドイツ、デンマーク、オランダが争った北海大陸棚事件では、1969年に国際司法裁判所が、境界画定は衡平な結果を実現するように合意によって行わなければならないとし、当事国に誠実に交渉を行うようにという判決を出しました。
 その際、いままでの概念やルールでは各国が合意することができなかったため、裁判所側は衡平原則という新たなルールを提示し、それに添って交渉するように指示が出されました。
 交渉が合意に至るように、裁判所側が交渉の土俵を新たに設定する提案を行ったわけです。すると、いままで膠着していた交渉が合意に向かいました。

 このように国際裁判所は、実現できない判決を出しても意味がないので、当事国の意思を汲み上げ、その紛争の特殊な事情を取り込みながら、必ずしも他の例には適用できなくても、このケースでは受入れられ得るという余地のある判決を出すものなのです。

◇国際法と国際裁判を無視して孤立する中国

 ところが今回の南シナ海の紛争の判決では、中国の主張について「法的根拠がなく、国際法に違反する」と断定しています。理由は、中国は海洋法条約の当事国でありながらこの裁判を欠席し、自国の主張する「九段線」なるものについて、まったく法的に説明していないからです。

 中国は九段線を歴史的な権原であると主張していますが、歴史的権原というものは沿岸近海については概念としてはあっても、国際交渉の場で認められた例はありません。
 つまり、誰もがよくわからない概念である歴史的権原を根拠にしている九段線について、中国ははっきりとした概念が確定している国際法の言葉で説明しておく必要があったのです。

 九段線の中にある島の領有権を主張しているのか、九段線を排他的経済水域と主張しているのか、あるいはその海域の資源の独占を主張しているのか、あるいはそれとは別の歴史的権利なるものを主張しているのか。九段線なるものによって中国は何を実現しようとしているのか、国際社会はまったくわからないし、裁判所もわからない。
 それがわからないので、交渉命令すら出すことができず、あのような極めて確定的な判決を出さざるを得なかったのでしょう。もし、中国が説明義務を果たし、裁判所が中国の意図を理解して汲み上げることができていれば、中国にとってもフィリピンにとっても双方が受入れ得るような、実現可能な判決が出されていた可能性もあり得たのです。

 国際法は外交のコミュニケーションツールであると言いました。その国際法を無視し、国際社会の理解を得る機会であった国際裁判を欠席し、一方的に九段線や核心的利益を主張する中国の姿は、国際社会とのコミュニケーションを拒否しているかのようで、非常に危なく見えます。
 中国の海洋覇権の主張と海軍力の拡大が、九段線や南シナ海における埋立の強行というあからさまな法秩序への挑戦と結びつくのであれば、それは法を無視した力の政策のごり押しとして沿岸諸国のみならず国際社会全体に大きな不安をあたえることになります。

 第2次世界大戦以降、現代国際法が急激に発展してきている理由を、中国にはしっかり認識してもらいたいと考えます。


中露合同演習はなぜ南シナ海で行われたのか
Wedge 9月28日(水)12時30分配信

南シナ海で初の合同演習
 今年9月12日から19日に掛けて、中国とロシアは「海上連合2016」と題する共同演習を南シナ海で実施した。「海上連合」演習は2012年の第1回以来、毎年開催されており、今年は5回目。しかし、南シナ海といえば中国による強引な海洋進出が国際的な摩擦を生んでいる海域である上、同海域における中露の合同演習は初めてということもあり、我が国の内外でも大きな注目が集まった。

 では、その実態は如何なるもので、その狙いは何であったのか。本稿ではこの点について考察してみたい。

 まずは演習の実態を把握することから始めよう。ロシア国防省によると、今回の演習に参加した兵力は中露併せて以下のとおりであった。

・潜水艦2隻
・水上艦13隻
・航空機及びヘリコプター20機以上
・海軍歩兵(海兵隊)250人以上
・水陸両用戦闘車12両

 このうち、ロシア側から参加したのは、対潜駆逐艦2隻及びそれらの搭載ヘリコプター、揚陸艦1隻(海軍歩兵及び水陸両用戦闘車搭載)、洋上タグボート、補給艦であり、残りが中国側の参加兵力ということになる。中国側はロシア製のSu-30MK戦闘機や空中早期警戒機といった新型航空機も投入した。

 ただ、規模の面で言えば、今回の演習はさほど大きなものではなかった。昨年8月、ウラジオストク沖の日本海で実施された「海上連合2015」の第2段階(第1段階は地中海で実施)には潜水艦2隻や大型揚陸艦を含む艦艇20隻と海軍歩兵隊員500名が参加しているし、2012年の「海上連合2012」となると参加隻数は25隻に達していた。

「海上連合2016」における3つの「初」
 一方、今回の「海上連合2016」を質的な面からみると、幾つかの注目すべき点が認められる。南シナ海というホットスポットでの演習であったことはその最たるものだが、その意味するところを探るためにもう少し細かい点を見ておきたい。

 たとえば中国の『人民網』日本語版2016年9月21日付によると、今回の「海上連合2016」には3つの「初」があったという。その第1は、中露の艦艇や航空機が青軍と赤軍に分かれて部隊を編成し、両軍の対抗演習という形態で実施された点である。これまでの「海上連合」では、中露艦隊が合同で編隊航行を行ったり、互いの艦艇を目標に見立てて訓練を行うことはあったものの、敵味方に分かれて本格的な対抗演習を行ったことはなかったと見られる。

 第2点はこれと関連するもので、演習用に統合指揮情報システムが採用された。合同作戦を実施するためには味方の部隊同士をデータリンクシステムでつないで情報を共有する必要があるが、これまで中露間にはこうしたデータリンクは確立されていなかった。「海上連合」で導入されたのはおそらく初歩的なものであろうが、最初の一歩を踏み出したこと自体は注目に値しよう。

 第3点は、立体的な離島奪還演習が実施されたことであるという。昨年の「海上連合2015」において中国海軍は初めて大型揚陸艦を日本海に進出させ、ロシアと合同で上陸演習を行ったが、これは「他国を仮想敵国とし、指向性の明確ないわゆる「離島奪還」演習と異なり、中露海軍の今回の演習の上陸演習は、上陸行動における組織・指揮手順と基本戦術を演習するものであり、仮想敵も設けない」というものであった(『北京週報』日本語版2015年8月21日)。一方、今回の訓練では中露の海軍歩兵部隊が上陸用舟艇やヘリコプターを使用して上陸作戦訓練を行い、守備隊と交戦するという内容になっている。

 また、『人民網』日本語版9月12日付は、今回の「海上連合2016」の特色の1つとして、戦役級の演習であったことを指摘している。戦役(campaign)という概念はなかなか一口に説明しがたいが、概ね戦略と戦術の間にある一連の軍事活動ということになろう。過去の「海上連合」演習がどの程度の規模を想定していたのかははっきりしないものの、今回は実働部隊が小規模であった代わりに、司令部内ではより大きな規模の軍事作戦を想定して訓練が行われていた可能性もある。

海に引きずり込まれたロシア
 まとめるならば、今回の「海上連合2016」は、規模よりもその中身に大きな意義があったことになる。しかも、このような演習を南シナ海で実施したことの意義はさらに大きい。

 中国にしてみれば、ハーグの国際仲裁裁判所から南シナ海の領有を全面否定されたこのタイミングでロシアを南シナ海に引き込むことが出来たのは大きな成果であることは言うまでもないだろう。だが、ロシアは何故、南シナ海に出てきたのだろうか?

 もともとロシアは中国の抱える領土問題には深入りしない方針を貫いており、なんとかロシアを自国側に引き寄せようとする中国との間で綱引きが続いてきた。たとえば2005年に実施された初の中露合同演習「和平使命2005」では、中国側が台湾海峡に近い浙江省で実施し、台湾問題でロシアを自国の側に引き込みたかったと言われる。これに対してロシア側は内陸部の新疆ウイグル自治区での実施を主張し、最終的に山東半島での実施が決まった。

 ただ、ロシアが海上での演習に付き合ったのはここまでで、次回以降の「和平使命」演習は全て陸上での実施となった。さらに2011年には予定されていた「和平使命2011」が実施されず終いとなったが、これも海上での演習実施にこだわる中国と、それを避けたいロシアとの間で折り合いが付かなかったためとされる。

 そこで中露の合同演習を仕切りなおす形で2012年に始まったのが「海上連合」演習であったわけだが、以上の経緯を踏まえるならばこの演習名はなかなか意味深である。「海上」と名が付くからには、もはや陸上演習でごまかすというわけにはいかなくなるためだ。

ウクライナ危機のインパクト
 もっとも、「海上連合2012」では、依然として中露の立場に食い違いが見られた。当初、中国のメディアは、同演習の過程で中露合同艦隊が対馬海峡を合計3回通過するなどと報じていたが 、実際には対馬海峡の通過は行われなかった。また、演習では合同司令部は設置されず、ロシア艦隊は演習が開始される22日の前日に中国に到着したために十分な摺り合わせも行われないなど、形式的な側面が目立った。さらに演習終了後、ロシア太平洋艦隊の一部は南シナ海の領有を巡って中国と対立するヴェトナムを訪問し、中国一辺倒でないことをアピールすることも忘れなかった。

 ところが2014年の「海上連合2014」では、ロシアは東シナ海での演習実施に同意した。中露の艦艇が合同で編隊を組むなど、内容面での密接さも増した。東シナ海といえば日中が領有権を争う尖閣諸島を含んでいるため、同海域での演習に踏み出したことは大きな変化であると言える。これに先立ってロシアはウクライナへの軍事介入を行い、西側との関係が急速に悪化していたことから、中国との共同歩調をアピールすることは西側への牽制になるという狙いがあったものと見られる。ただし、中国側がより尖閣に近い海域での演習実施を主張したのに対し、ロシア側がこれに難色を示した結果、東シナ海北部が演習海域となったと伝えられるなど、ここでもロシアは中国の思惑に対して一定の距離を取った。

 2015年には、さらに新しい展開が生まれた。「海上連合」演習が2段階に分けて実施され、しかも第1段階の実施場所には地中海が選ばれたのである。さらにこの演習に先立ち、中国艦隊はクリミアを目の前に臨む黒海のノヴォロシースク港にも寄港していた。中露が地中海で合同演習を行ったのも、「海上連合」演習が2度に分けて実施されたのも初めてのことであった。

 このように、中露の合同演習は様々な思惑の相違を孕みながらも、徐々に深化する傾向を示してきた。そこで大きな役割を果たしたのは、やはりウクライナ危機以降の対西側関係の悪化であろう。

ロシアのためらい?
 問題は、ロシアがどのような思惑で南シナ海での演習実施にまで踏み込んだかであろう。昨年の地中海における中露合同演習の「借り」を返したとする説明も見られるが、地中海での演習はもともと中国が望んでいたことである。また、これに先立って中国艦隊は黒海を訪問しているが、ロシア領ノヴォロシースク港に寄港しただけでクリミア半島への寄港は避けた。要するに、中国がさほど「貸し」を作ったようには見えない。

 また、2016年に「海上合同」演習を実施すること自体は昨年から公表されていたものの、実施海域はなかなか定まらなかった。通例であれば「海上合同」演習は春から夏に掛けて実施されることが多いが、9月半ばという今回の演習実施タイミングはやや遅めである。

 演習実施に向けた中露海軍当局者の会合は4月に北京で開催されていたが、その後6月末になってロシア側が「9月に実施する」と発表し、中国側もこれを認めた。7月12日には国際仲裁裁判所が中国の南シナ海における領有権の主張を「根拠がない」とする判決を出していたので、その結果が出るのを待っていた可能性もある。ちなみに中国の主張を全面却下する判決が出た後も、ロシア外務省は「原則としてのどの国の立場にも立たず、紛争に巻き込まれることはない」として中立姿勢を改めて強調していた。

 さらに同月末、中国国防部は9月に南シナ海で中露合同演習を実施することを初めて明らかにしたが、ロシア側が南シナ海での実施について公式に認めたのは1カ月近く経った8月22日になってからだった。

中露接近アピールは日本への牽制か
 このようにしてみると、今回の「海上合同2016」でもロシア側は南シナ海での実施に積極的であったようには見えない。ただ、それでも中国側の思惑にロシアが乗ったとすれば、対立が深まる西側諸国への牽制にロシアが利益を見出したのだと考えられよう。

 たとえば中露接近をアピールすることで米国を牽制するという狙いがそこにはあったであろうし、年内のプーチン大統領訪日によって領土問題の進展が期待される中、領土問題や経済協力に対する日本への牽制効果が期待されていた可能性もある。我が国の安倍政権が対露関係の改善を対中政策の一環としても位置付けていることを考えれば、ロシアの対中接近は日本から妥協を引き出す手段となり得る。

 一方、中国に対しては、日露の接近が安全保障面には及ばないとのアピールにもなろう。さらにプーチン大統領は演習に先立ち、G20のために訪問した中国・杭州で習近平国家主席と会談した際、「法的に見て」「仲裁裁判所は中国の主張に耳を傾けなかった」などと中国を擁護するような発言を行っている。

 ただし、今回も演習自体は南シナ海北部の広東州沿岸で実施され、中国がサンゴ礁の埋め立てなどを行っている南沙諸島方面には接近しなかった。中露接近はアピールするが、領土問題そのものにまでは踏み込まないようにした形と言える。前述したプーチン発言も、あくまでも仲裁裁判所の判決に関してのみ中国を支持すると読めるように慎重に計算されており、南シナ海問題でロシアが全面的に中国支持へと回ったわけではない。

来年以降の見通しは
 「海上連合」演習は来年も実施されると見られる。今のところ公式の発表はないが、実施場所と内容がどうなるかは今から注目されるところだ。

 これまでの経緯を見れば、中国側としては南沙諸島や尖閣諸島にもっと近いところでの演習を希望しているのだろうが、来年は順番から言ってロシア近海で実施する番である。これまではウラジオストク沖が実施場所となってきたが、たとえば中国が望んでいたように、対馬海峡を中露が合同で通航するなどのデモンストレーションはあり得るかもしれない。黒海や北極海などが演習の舞台となる可能性もあるが、前者はともかく後者は南シナ海以上にロシアとしてはありがたくないロケーションとなろう(ロシアは中国の北極海進出に対して警戒的な姿勢を取り続けている)。

 内容面で言えば、今回の「海上連合2016」で見られたデータリンク等の合同作戦能力がどこまで発展するかも興味深い。あるいは中国海軍が運用を始めたばかりの空母「遼寧」など、参加兵力自体がこれまでよりもグレードアップされる可能性も考えられよう。


南シナ海問題でロシアを利用する中国
Wedge 9月28日(水)11時20分配信

 中国が、南シナ海において、米国を挑発するかのような行動を続けている。2016年9月12日から19日の間、南シナ海において、中ロ海軍合同演習が実施された。「海上連合」と呼ばれるこの合同演習は、2012年から毎年行われているが、南シナ海で実施されるのは初めてである。

陣容から見て取れる中国の力の入れ具合
 中国海軍は、南海艦隊だけでなく、東海艦隊及び北海艦隊からも、艦艇を参加させた。報道によれば、2000年代半ばに就役した052B/旅洋1型「広州(艦番号168)」及び中国版イージス艦とも呼ばれる052C/旅洋2型「鄭州(艦番号151)」という2隻の駆逐艦、最新の中国海軍フリゲートであり海軍艦艇の主力である054A/江凱2型の「黄山(艦番号570)」、「三亜(艦番号574)」、「大慶(艦番号576)」という3隻、揚陸用のホバークラフトを艦内に収容できる071/玉昭型ドック型輸送揚陸艦「崑崙山(艦番号988)」、0723/玉亭型揚陸艦「雲霧山(艦番号997)」、通常動力型潜水艦2隻及び、最新の904A型総合補給艦「軍山湖(艦番号961)」など10隻が参加した。

 その他、ロシア製Su-27戦闘機のライセンス版で中国航空兵力の主力であるJ-11B戦闘機、JH-7戦闘爆撃機、警戒管制機など、19機の海軍航空機も参加している。中国海軍の主力戦闘艦艇に加え、満載排水量が17600~20000トンになると言われるドック型輸送揚陸艦、中国がわざわざ島嶼補給艦と呼称する総合補給艦といった陣容から、中国の力の入れ具合と、島嶼を巡る海上及び陸上の戦闘を意識していることが見て取れる。

 一方のロシア海軍からは、「アドミラル・トリブツ(艦番号564)」と「アドミラル・ヴィノグラドフ(艦番号572)」という2隻のウダロイ級駆逐艦、「ペレスウェート(艦番号077)」揚陸艦等が参加している。ウダロイ級駆逐艦は現在でも、ソブレメンヌイ級と並んで、ロシア海軍の主力駆逐艦でもあるが、基本設計が1970年代という古い艦艇である。近年、ロシア海軍は、駆逐艦よりも少し小さいフリゲートを主に建造し就役させている。ロシア側の参加艦艇を見る限り、格別に規模が大きいという訳ではない。問題は、参加兵力の規模ではなく、場所である。ロシアが、南シナ海という海域で実施された中国との海軍合同演習に参加したことに意味があるのだ。

 しかも、今回の中ロ海軍合同演習は、中国がことさらに島嶼奪還などを強調していて、挑発的である。中国メディアは、中ロ両軍の陸戦隊が初めて演習に参加したことを報じ、島嶼奪還の演練を行ったとしている。また、中国国防部は、最新の904A型総合補給艦を、「島嶼補給艦」と呼んでいる。南シナ海における米海軍の「航行の自由」作戦等に反発し、中国の主張に逆らう行動をすれば、軍事衝突も辞さないという構えを見せているのだ。

 海上だけでなく、陸上の会議等の場においても、米国と中国は、南シナ海における軍事行動について、つばぜり合いを繰り返している。7月16日には、中国人民解放軍連合参謀部副参謀長の孫建国上将が、中国の大学が北京で開催したフォーラムでのスピーチにおいて、米国などが南シナ海で実施している航行の自由に基づく艦艇の行動は「危険な状態を招く」可能性があると警告した。

 これに対応するかのように、7月26日、マーク・リチャードソン米海軍作戦部長が、中国訪問を終えて帰国し、「中国に対し、米国が今後も南シナ海の上空と海上での活動を続ける姿勢を断固として示した」と述べた。その上で、南シナ海に関する仲裁裁判所の判決を受けて、米国は今後も南シナ海における「航行の自由」作戦を継続すると言明している。

クリミア併合がもたらしたもの
 ところが、一方のロシアは、これまで、一貫して積極的に中国を支持し米国をけん制してきた訳ではない。中ロ両国が対米けん制で協力姿勢を強調する「海上連合」合同演習における協力のバランスは、変化しているのだ。中国およびロシアの情勢認識の変化が、合同演習の性格に影響を及ぼしているのである。

 「海上連合」合同演習は、2014年に大きな転換点を迎えた。これは、主としてロシアの都合によるものだ。欧州諸国が「実質的な武力侵攻」と呼ぶ、ロシアによるウクライナのクリミア半島併合によって、ロシアが西の欧州側でのゲームに失敗し、東のアジア太平洋地域で新たなゲームを始めたことに起因する。

 ロシアは、2013年まで、対米けん制のために中国に利用されることに消極的だった。ロシアにとってメリットが十分でなかったのだ。ウクライナ問題によって、欧州との経済協力による第三極としての生き残りに失敗したロシアは、アジアにおいて米中対峙に目を付ける。米中両大国が対峙してくれれば、ロシアが生き残る空間が広くなる。東シナ海で実施された2014年の「海上連合」合同演習の開幕式には、別の会議に出席するために上海を訪れていたプーチン大統領が習近平主席とともに出席し、スピーチまで行っている。

 2013年の「海上連合」合同演習は、演習海域が日本海のロシア寄りの海域に設定されており、東シナ海に設定するよりも、日米に対して刺激が少なかったにもかかわらず、ロシア側の消極的な態度によって、合同演習の実施がなかなか公式発表できなかった。この2014年のロシアの極めて積極的な対中協力姿勢への変化は、180度の方向転換と言っても良いほどの大きな変化である。

 2015年には、初めて、1年に2回、「海上連合」合同演習を実施した。第1回の演習海域は地中海、第2回は日本海である。第1回の演習は、主として、中国がロシアに対して協力姿勢を見せたと言われる。中東及び欧州に対して、ロシアが、中国の協力を得て、その軍事プレゼンスを示したかったのだ。

 しかし、中国にとってもメリットがあった。中東は、中国が掲げる「一帯一路」イニシアティブの地理的及び意義的な中心であり、欧州は、「一帯一路」の終点であると位置付けられているからだ。中国は、今後、これらの地域において、米国との軍事プレゼンス競争をしなければならず、中東及び欧州からの海上輸送路も保護しなければならないと考えている。中東情勢が米ロだけの軍事的なゲームで動くのではなく、中国もプレイヤーとして関わっていることを示そうとしたのである。

どうしてもロシアの協力を得たい中国
 2016年に入って、南シナ海における米中の軍事的な緊張はさらなる高まりを見せる。7月12日に、常設仲裁裁判所が下した司法判断は、中国の南シナ海における主張を全面的に否定するものであった。しかし、「司法判断」が出される以前から、中国は一貫してこれを無視する構えを見せてきた。「司法判断」が下される直前の7月6日、戴秉国元国務委員が国際会議でこれを「紙屑」と呼び、同じ日に王毅外交部長(日本で言う外務大臣)はケリー国務長官との電話会談で仲裁裁判所の判断を「茶番劇」と切り捨てた。

 中国は、仲裁裁判所の判決には従わないと宣言しているのだ。南シナ海の実質的な領海化を、人工島の軍事拠点化という手段を以て進めるという意味である。しかし、G7でも、中国を非難するかのような共同声明が出されるなど、米国や日本、さらには西欧諸国も、南シナ海における中国の行動に懸念を示している。そして、米中両海軍は、南シナ海における行動をエスカレートさせているかに見える。

 中国外交部は、世界約70カ国が、あるいは90カ国余りの国の230以上の政党が、南シナ海における中国の立場を支持していると主張している。中国が、国際社会から孤立していないことを強調しようとするのだ。国際社会の支持を失えば、「国際秩序を変える」という中国の目標達成などおぼつかない。しかし、中国が主張する約70カ国のほとんどが発展途上の小国である。「国際関係は大国間のゲームである」と考える中国にとっては、非常に心もとない。相手にするのが、既得権益を有し大きな影響力を持つ、欧米先進諸国や日本だからだ。

 だからこそ、いかに不信に満ちた関係であっても、中国は、ロシアの協力が欲しいと考えるのである。軍事的にも、一国では米国に対抗できないと考える中国は、ロシアとの安全保障協力関係を見せつけることが不可欠だと考える。特に、南シナ海問題において劣勢に立たされたと考える中国は、「海上連合」合同演習によって、南シナ海におけるロシアとの緊密な協力を米国に見せつけたかったのだ。

台湾、フィリピン、ベトナムとの関係
 ただし、南シナ海の中でも、演習海域は微妙な位置に設定されている。演習海域は、南海艦隊司令部が所在する広東省湛江の東側海域とされたのだ。この海域のすぐ東に位置するのが台湾とフィリピンである。中国にとって、台湾とフィリピンは、圧力をかけたい相手だ。台湾への圧力は、台湾独立の動きを阻止するためである。フィリピンは、仲裁裁判所に申し立てた張本人であり、中国としては、仲裁裁判所の司法判断をなかったことにするためには、中国の主張に対するフィリピンの合意を取り付けなければならない。

 さらに重要なのは、台湾とフィリピンの間の、バシー海峡だろう。南海艦隊所属の中国海軍艦艇が太平洋に出るためには、バシー海峡を抜けるのが最も効率が良い。しかし、米海軍が南シナ海で行動していては、中国海軍の艦艇は、自由に太平洋にでることができない。特に戦略原潜(核弾頭を搭載する弾道ミサイルを発射可能な原子力潜水艦)は、米海軍に探知されずに太平洋に出ることができなければ、米海軍の攻撃型原潜に追尾され、米国に対する核報復攻撃の最終的な保証とは成り得ないのだ。

 これらの意味では、今回の合同演習は、戦略的に重要な海域で行われたと言うことができる。一方で、ベトナムに近い海域で実施したくなかったという理由も考えられる。湛江から西側の海域で合同演習を実施すれば、ベトナムに対して圧力をかけることになる。フィリピンとの問題が解決しない中、中国も、ベトナムを刺激することは避けたいだろう。

 しかし、さらにベトナムに気を使ったのはロシアである可能性もある。ベトナム軍の武器装備品はロシアから購入している。ベトナム空軍は、少なくとも中国と同時期からSu-27戦闘機を運用している。また、ベトナム海軍はゲパルト級フリゲートもロシアから導入した。そしてロシアは、中国が最も嫌がるキロ級潜水艦もベトナムに供給しているのだ。

 中国とベトナム両海軍は、西沙諸島(パラセル諸島)及び南沙諸島(スプラトリー諸島)の岩礁等をめぐって、海上戦闘を繰り返してきた。ロシアがベトナムに近代的な艦艇や航空機を供給することは、単に伝統的に良好なベトナムとの安全保障協力関係を維持するというだけでなく、中国が南シナ海において一方的に優勢になることを防ぐ効果もある。

米中ロ、それぞれの思惑
 これで、中国が完全にロシアを信じることができるだろうか。ロシアが、南シナ海において、中国との海軍合同演習に応じたのは、中東での米国との軍事的ゲームに関わっている可能性もある。アジア太平洋地域において、中国の背中を押して米国と対峙させれば、米国は、中東だけでなく、アジア太平洋地域にも軍事的資源を投入しなければならなくなる。ロシアは労せずして、中東における米軍の能力を削ぎ、軍事的ゲームを優位に進めることができるかも知れないのだ。

 中国は、ロシアの思惑を理解していない訳ではないだろう。それでも中国は、ロシアとの安全保障協力関係を誇示しなければならない。中国は、真剣に米国が中国に対して軍事力を行使することを懸念しているからだ。米国とロシア、どちらの方が中国にとってより危険かという比較の問題である。中国は、自身が経済発展を追求すれば、米国が自国の権益を守るために軍事的手段を用いて中国を攻撃する可能性があると考えている。中国による、南シナ海の実質的な領海化及び人工島の軍事拠点化は、「米国に対しては」防御的であると言うこともできる。

 中国が考えるように、南シナ海でも、米中ロという大国がそれぞれの思惑によって、ゲームをプレイしている。しかも、米ロ両大国の、南シナ海におけるゲームは、中東のシリア問題等を巡るゲームの一部、あるいは番外編という側面も持っている。中国海軍の行動は、米ロという大国関係の影響を受けて、強硬の度合いを増減させるかも知れない。

 しかし、中国にとっては、南シナ海問題は自国の存続に関わる安全保障の問題である。これ以上に重要な問題はない。戦争に勝利する見込みがない以上、現段階で、中国海軍は米海軍との衝突を避けるだろう。現在の中国は、ロシアを利用しながら、米国をけん制してその軍事力行使を抑止する以外に、米国の妨害を排除しつつ経済活動を拡大する方法はないと考えている。その間に、米国を凌ぐ海軍力を構築する努力を進めるのだ。

 中国の目標は変化していない。米中ロの大国関係の状況によって、中国の行動に変化が見られるかも知れない。しかし、目標達成に向けた大きな流れは変化しないことも同時に理解しなければ、中国の意図を見誤ることになりかねない。


南シナ海情勢、記載せず ベネズエラでの非同盟諸国会議 ASEANが抗議
産経新聞 9月28日(水)7時55分配信

 【シンガポール=吉村英輝】ベネズエラで今月17~18日に開かれた非同盟諸国会議の首脳会議の最終文書に、東南アジア諸国連合(ASEAN)が求めた南シナ海問題をめぐる最近の情勢が盛り込まれず、ASEANの今年の議長国ラオスがベネズエラ外務省に送付した書面で、「深い遺憾」を示して抗議していたことが分かった。

 会議をめぐっては中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報(電子版)が21日、「反対にもかかわらず、シンガポールが会議で南シナ海の仲裁裁定を取り上げた」とする記事を掲載した。これを受け、駐中国シンガポール大使が26日、「捏造(ねつぞう)と根拠のない批判に満ちた無責任な記事」と反論して訂正を求める公開書簡の中で、ラオスの抗議文書を証拠提示する形で“暴露”した。

 抗議文書は18日付で、参加国に示された首脳会議の最終文書に、南シナ海の最近の情勢が反映されていないとして、「ASEANは認める立場をとれない」と批判。付属文書として、ASEAN外相会議が7月にまとめた共同声明の内容を最終文書に追加するよう求めた。

 共同声明は、親中国派のカンボジアなどの反対で、南シナ海での中国の主権主張を全面否定した仲裁裁判所の裁定への言及を見送る一方、南シナ海情勢への「深刻な懸念」や一部の閣僚による埋め立てへの「懸念」を維持し、名指しを避けて中国を非難した。

 駐中国シンガポール大使は、3年ごとに開かれる首脳会議の最終文書では、各地域がそれぞれの情勢の変化を更新することが「原則」にもかかわらず拒否されたと指摘。「外部勢力が地域問題への見方を強要するようでは、非同盟諸国会議の利益に反する」とし、ベネズエラの最大の債権国である中国の圧力を示唆した。ASEAN加盟10カ国は会議メンバーで中国はオブザーバー参加していた。

 今回の非同盟諸国会議は反米左翼、マドゥロ大統領をめぐって政治的緊張が高まるベネズエラ政権との距離を置こうと、首脳級の出席は少なかった。


比元大統領、訪中中止 ドゥテルテ氏訪問、影響恐れ
産経新聞 9月28日(水)7時55分配信

 【シンガポール=吉村英輝】中国との2国間協議再開を模索するフィリピンで、南シナ海問題などの環境整備のため特使に指名されたラモス元大統領が、中国訪問を急遽(きゅうきょ)キャンセルした。ロイター通信によると、ラモス氏側近が27日、明らかにした。側近は「適切な時期」に北京を訪問するとしている。

 ラモス氏はフィリピンのドゥテルテ大統領が特使に指名していた。訪中に関して公式な発表はなく、中国側の会談予定者など詳細は不明だった。一方、在北京のフィリピン大使館はウェブサイトで26日、現地のフィリピン人に、ラモス氏との会合を28日に行うと呼びかけていた。

 ドゥテルテ氏は経済支援引き出しを念頭に中国との協議を模索。中国とパイプのあるラモス氏は、8月には香港を訪れて中国の外務次官などを歴任した全国人民代表大会(全人代=国会)外事委員会の傅瑩主任らと会談していた。

 南シナ海問題では、中国の主権主張を退けた仲裁裁判所の裁定を無視する姿勢の中国に対し、ドゥテルテ氏は協議の「前提」としている。ラモス氏の訪中キャンセルで、10月下旬で調整中のドゥテルテ氏の初訪中に影響が出る恐れもある。


中国の理解不能な“膨張主義”がまかり通る3つの理由
ダイヤモンド・オンライン 9月28日(水)6時0分配信

 国際社会で非難の的になっている南シナ海問題が、中国による一方的な「力の支配」で押し切られ、封印されようとしている。日米中とASEAN(東南アジア諸国連合)など18ヵ国が参加して、9月8日に閉幕したアジア首脳会議をはじめ、世界の首脳がアジアに集結した一連の外交ラッシュで、最大の焦点であった南シナ海問題を巡る攻防が、中国側の事前の切り崩しや巻き返し工作が功を奏して、中国ペースで終始したためである。

 「法の支配」で中国を牽制し、圧力をかける日米両国の攻め手が不発に終わり、周縁の当事国側の抵抗も腰砕けで、提訴したフィリピンが一切言及せず、封印に手を貸した格好である。

 オランダ・ハーグの仲裁裁判所が7月に国連海洋法条約に基づいて、中国の主権主張を全面否定した仲裁判決は、国際秩序を法的に守る最後の砦であったが、中国は「紙くずに従う必要はない」と強弁。引き続き国際秩序に挑戦する実効支配の手を緩めず、エスカレートさせている。

 中国の膨張主義、とりわけ海洋進出戦略は、今後とも拡大の一途を辿ることは必至である。東シナ海への攻略も明日は我が身であり、狙いは沖縄トラフ(海溝)にあることが明らかになってきた。日本を含め、国際社会は中長期的な戦略で中国の膨張主義と厳しく向き合い、国際秩序の中へ封じて、取り込んでいく必要に迫られている。

● 中国の「力の支配」に屈服?  南シナ海問題を巡る働きかけ

 一連の外交ラッシュを締めくくった東アジア首脳会議は、南シナ海での中国の主権主張を全面否定した仲裁裁判所の判決後、関係各国が顔を合わせる初めての国際会議であった。日本の同行筋によると、南シナ海をめぐる安全保障問題を議論して閉幕したが、日米両国が国連海洋法に基づく仲裁判決には法的拘束力があるとしてその受け入れを中国に迫ったものの、中国は反発、当事国間での解決を主張。参加各国からは南シナ海情勢を懸念する発言はあったものの、ASEANの当事国の代表からは中国を名指しで批判する声は出なかった。

 フィリピンのドゥテルテ大統領は、「仲裁判決の尊重」を主張するペーパーを用意、事前に配布していながら読み上げることもなく、南シナ海問題には言及しなかった。提訴した当事国のフィリピンの主張が宙に浮いてしまったため、日米両国の「法の支配」を砦に中国を強く牽制し、国際秩序の中へ取り込み、諌めていく絶好の機会を失したことは否めない。

 オバマ米大統領は、南シナ海での航行の自由や非軍事化の重要性を訴えて、中国に対し、改めて仲裁判決の受け入れを求め、国際法の順守を迫った。安倍首相も沖縄県の尖閣諸島の周辺での中国による挑発行動を念頭に、南シナ海や東シナ海で中国の一方的な現状変更や軍事化の試みが続いており、深刻に憂慮していることを強調した。その上で「すべての当事国が地域の緊張を高めるような行動を自制し、国際法に基づいて、平和的な解決を追求すべきである」と訴えた。

 これに対し、中国の李克強首相は「南シナ海問題は当事国間の問題であり、域外国は関与すべきではない」との従来の主張を繰り返し、強調するだけで、日米両国の訴えに聞く耳を持たなかった。この国際会議のさ中にも、南シナ海で中国船約10隻がフィリピン沖のスカボロー礁で確認され、同礁では中国が建設作業にも着手する準備が進んでいる懸念が広がっている。

 閉幕後に出された共同声明では、ASEANと中国は海上での行動を規制する「行動規範」(COC:Code of Conduct)の合意を急ぐことを盛り込んだが、仲裁判決については全く触れていない。ASEANと中国は、2002年に武力による威嚇と武力行使の禁止、領有権問題の平和的解決などを盛り込んだ「南シナ海行動宣言」(DOC:the Declaration on the Conduct of parties in the South china sea)に合意したものの、中国の一方的な実効支配で有名無実化してから14年。COCはDOCを発展させ、法的拘束力を備えたものである。

● 中国の実効支配は40年以上 騒乱の舞台となった南シナ海

 南シナ海は、中国をはじめベトナムやフィリピン、マレーシアや台湾など計8つの国・地域に囲まれている公海で、中東からの原油を輸送する要衝である。海域には南沙諸島、西沙諸島、中沙諸島、東沙諸島の4諸島があり、それぞれの諸島には大小様々な島や岩礁が広がり、その数はおよそ200超と言われている。国連海洋法条約による排他的経済水域の制定をめぐる攻防の過熱化とともに、領有権を巡る争奪戦が熾烈を極め、中国が1971年からいち早く人工島を造成し、多数の施設を建造して、実効支配への動きを強めてから、騒乱の舞台となってきた。

 以来、南シナ海問題とは南シナ海の島々や岩礁とその周辺海域の領有権を、中国とフィリピンやベトナム、台湾などが争う諸問題の総称となっている。南沙海域では6ヵ国・地域が、西沙や中沙海域では3ヵ国・地域が領有権を主張して争っているが、中国は領有権の約90%を主張している。

 背景にあるのは、周辺海域に眠る豊富な海底資源である。米政府の推計によると、原油埋蔵量は約110億バーレル、天然ガスは約190兆立方フィート。シェールガスなどその他の資源への期待も大きい。このため、1970~80年代から中国とASEANの間で軍事的な衝突が絶えず、多数の犠牲者を出してきた経緯もある。主因は、中国が一方的に実効支配をエスカレートさせてきたためであるが、その真の狙いは軍事基地化だろう。

 現在の中国の実効支配の状況を見ると、すでに西沙諸島の最大の島である永興島で人工用地を整備、飛行場と南シナ海の岩礁群のすべてを統治する自治体として三沙市を設置、市庁舎を建てて、主に中国人民解放軍、中国人民武装警察部隊、さらには三沙市の行政関係者が常駐し、居住している。居住者には、食糧や水、石油などの生活物資を支給し、軍事用地以外の土地の自由な使用を許可するなど、中国政府が直接住民の生活支援に乗り出している。

 2013年末には、南沙諸島の7ヵ所で人工島を造成するなど、実効支配のペースを速めている。米国防総省によると、人工島には滑走路や港湾施設などを次々と建設、滑走路は3000m級が3本あり、百数十人乗りのジェット旅客機を試験飛行、着陸させている。さらには、大型レーダー施設や灯台、ヘリポートから地下防護施設まである。実効支配が40年以上に及ぶ西沙諸島では、地対空ミサイル部隊の展開や戦闘機の配備など、軍事基地化を加速している。ウッディ―島では、対艦巡航ミサイルを展開させたとの分析もある。

● 執拗な妨害工作を続けるも 仲裁判決は中国の全面敗北

 中国政府がこれらの実効支配を対外的に認めたのが2012年7月。フィリピンが中国も締約・批准している国連海洋法条約に基づいて常設仲裁裁判所に提訴したのが2013年1月のこと。フィリピンが国際海洋法裁判所やICJ(国際司法裁判所)など4つの選択肢の中から常設仲裁裁判所を選んだのは、相手国が拒否しても、手続きは進められるからである。

 仲裁裁判所は、南シナ海のほぼ全域で領土の主権を主張する中国に対し、「中国が歴史上、排他的に支配してきた証拠はない」と断じた。中国が排他的な支配の根拠とする、いわゆる「九段線」についても「国際法上、根拠はない」と退けた。特に、中国が建設を進める7つの人工島については、うち3つは満潮時に水没する「低潮高地」であり、南沙諸島には「島」はなく、この海域には「中国の管轄権が及ぶ場所はない」と決めつけた。

 不利な判決は中国も予想していたようで、事前に「判決を出すな」との妨害活動に打って出て、それが無視されると、判決の翌日には中国国務院が準備していた2万字に及ぶ白書を発表し、一方的な反論を展開した。同白書によると、70ヵ国以上が中国の立場を支持しているとして、支持国を朱色で染めた世界地図を同日付けの中国共産党傘下のチャイナ・デーリー紙の一面に掲載した。ところが、インドが即刻「中国による誤報運動だ」と反発し、仲裁裁判所の裁定を支持すると表明した。

● 理不尽さがまかり通る3つの理由 国際社会と異なる国境・領土観

 中国の南シナ海における一連の実効支配は、中国が自ら認める国際秩序への確信犯的な挑戦である。それにしても誰もが「法の支配」に倣い、従うことで成り立つ国際秩序の中で、なぜ中国の一方的な「力の支配」がまかり通るのか。1つ目は中国の大国化による驕りであり、2つ目は中国の国境・領土観の違いであり、3つ目は国際秩序の劣化・脆弱化である。この3点をベースに分析してみよう。

 まずは、大国化による驕りである。「米ロ両国に肩を並べる大国になれば、大国の狙い通りに無理を通せば道理が引く」との国際秩序を蔑ろにした傲慢不遜な大国意識である。中国は、2010年にGDP(国内総生産)ベースで日本を追い抜き、世界第2の経済大国になり、今や世界の工場から世界の消費市場へ脱皮しつつある。軍事力の面でも、米ロ両国に追いつけ、追い越そうと軍事費のGDP比率では米ロ両国を凌駕、背伸びしている。

 習近平国家主席が就任前の訪米時、オバマ米大統領に対し米中両国の「新しい大国関係」を提案し無視されたが、「太平洋は米中を受け入れるに十分な広さがある」として太平洋の「米中二分論」を口にした構想は本音であり、いずれ太平洋へ進出する野望を抱いているのだろう。南シナ海の内海化と軍事拠点化はその布石であり、東シナ海の攻略もすでに指呼の間である。詳細は後述する。

 2つ目は、国際的には通用しない中国の国境・領土観による実効支配である。中国は歴史上、「天下に王土にあらざるものなし」と唱え、「世界はすべて中国のもの」という中華思想を根本に持ちながら今日に至っている。大国化してきた今の中国は、この認識が強く、中国は今こそ「天下はもともと中国のもの。そのすべてを回収し、取り戻すとき」と考えている。このため、中国は元来国境や領土に対する価値観が薄く、もっと言うとないに等しい。強いて言えば、実効支配した領域が領土であり、国境はその先々にあろうがあるまいが関心がない。

 さらに通用しないのが領土観である。中国が一度でも支配した国、中国に朝貢した国、中国の古典に登場する国なども中国の「領土のうち」になる。大琉球の沖縄や小琉球の台湾をはじめ、遣隋使や遣唐使も朝貢扱いであり、中国の古典に登場する邪馬台国・日本も北朝鮮や韓国並みの「領土のうち」で、その潜在意識は根強い。

● 国際的な法秩序の劣化を突いた サラミ・スライス戦略とキャベツ戦術

 そして3つ目は、世界統治(グローバル・ガバナンス)の体制維持に必須な国際社会の社会基盤である国際的な法秩序の劣化であり、脆弱化である。主因はひとえに国連の安全保障理事会の機能不全にある。拒否権を持つ常任理事国が大国の横暴で国際的な法秩序を無視した立ち居振る舞いに及んでも、拒否権の応酬で相互監視機能が働かず、むしろ大国が相互の牽制合戦で国際秩序を撹乱し、混乱に陥れる原因者と化している。とりわけ、国際社会で一極支配を続けてきた米国の統治力の衰退は否めず、そこに付け込んできたのが中国である。

 1992年に米軍がフィリピンの南シナ海に面するスービック基地から撤収し、南シナ海方面に向けた米軍の最前線拠点が沖縄まで後退したのとは対照的に、中国が南シナ海における実効支配を一方的に強化・拡大させてきたのは、いかにも象徴的であった。それ以来、中国は海洋戦力の増強とともに、南シナ海での積極的な海洋政策に打って出てきている。

 これに対し、米国は外交的な警告を発しているだけで、より具体的で効果的な反対行動には出ていない。少なくともオバマ政権は、中国の膨張主義的な海洋政策に対し、何の対抗措置も打ち出していない。この間隙を突いて中国が南シナ海の全域で展開してきたのが、いわゆるサラミ・スライス戦略とキャベツ戦術である。

 サラミ・スライス戦略とは、丸ごとのサラミでは目立つが、薄くスライスすれば目立たないように、敵側に気がつかれないうちに、目立たない些細な攻撃を小出しに積み重ねていくことで、敵側の抵抗勢力を封じ、制圧しながら、自軍の攻め手を尽くして、目標を達成する戦略手法のことである。

 これに対しキャベツ戦術とは、芯を葉が幾重にも取り巻いていくキャベツのように、目指す目標に向かって多種多彩な攻め手を繰り出して幾重にも取り囲み、そんな状況を継続することで、目標を陥落させる戦術手法のことである。この場合は、目標とする島嶼や環礁に対し、武装民兵が乗り込んでいる漁船をはじめ、海洋調査船や海洋警察艦、さらには海軍の艦艇などで取り囲む。中国は、この手で満潮時には水没する「低潮高位」の環礁を次々と立派な島々へと変身させてきている。

 東シナ海は、日本にとって明日は我が身である。とりわけ尖閣諸島だ。この絶海の小さな岩礁に、中国はなぜそこまで執着しこだわるのか。その狙いは沖縄トラフにあることを、日中両国の外交筋が明らかにした。中国が尖閣諸島の領有権を公言し出したのは、国連機関による石油資源探査が始まった1960年代以降であったため、当初は海底資源が狙いと思われていたが、狙いははるかに野心的で、安全保障上の軍事戦略拠点としての沖縄トラフが垂涎の的なのである。

 中国大陸を取り囲む大陸棚は、水深が約200m程度の浅瀬である。一般に、戦略原潜は自国周辺の安全な海中で係留、停泊し、外国の探知から身を守りながら、核ミサイルの発射命令を待つのが任務である。しかし中国は、戦略原潜を保有していながら、その身を潜め守るだけの深い海を持っていない。

 沖縄トラフは、九州の西側から台湾島の北側まで、南西諸島と琉球諸島の西側に沿った円弧状の海底盆地で、全長約1000㎞、幅約200㎞、水深は2200mに及ぶ、長大な、東シナ海では最深の海域である。この海域であれば、中国が保有する戦略原潜が身を潜めるのに、戦略上も恰好な位置取りとなる。沖縄トラフであれば、中国の戦略原潜096型「唐」が搭載する潜水艦発射弾道ミサイル「巨浪2」の射程は約1万1000㎞で、米国の東海岸の政治中枢をも射程内に納めることができるからである。

 中国は少なくとも4隻の戦略原潜を保有し、最低でも48基の「巨浪2」を搭載している。いずれも多弾頭(MIRV)であるため、約200個の核弾頭を積載していることになる。これは、中国の核戦力のおよそ3分の1を占めている。これだけの核戦力を外国の、具体的には日米の潜水艦ハンターによる監視の目からどうやって身を隠しながら、安全に作戦を展開し得るか。

 それには、この水域内に自国の領土、領海を多少でも確保することである。そこに逃げ込むことで、他国からの手出しを封ずることができるからである。そのためのお目当てが尖閣諸島である。水深は500m、12カイリ離れた領海の水深は1200mで、沖縄トラフの水深2200mには及ばないが、尖閣諸島は沖縄トラフへ通ずる、いわば橋頭堡なのである。中長期的な狙いでは、太平洋を米中二分論で管理、監視する野望への布石として押えておきたい海であり、島なのである。

● 「明日はわが身」の東シナ海 法の支配による平和的な解決へ

 直面する東シナ海への中国の一方的な攻勢を含め、中国の膨張主義に対し、日米両国をはじめ国際社会はどのように対処すべきか。国際社会は決して手を緩めず、厳しく向き合いながら、既存の国際秩序の中へ取り込み、その価値観の下で徹底的に話し合い、理解を求めて諌めていく必要がある。既存の国際秩序に挑戦的な中国の膨張主義は、やがて国際秩序も中華思想で塗り替え、世界の統治も中国が先導する新秩序の構築へと、いわばパワーシフトを狙っている遠大な戦略・戦術であり、放置できない危険な思想でもあるからである。

 したがって、ここは「力の支配」による愚かな武力衝突を避けて、国際的な法秩序を背景に「法の支配」による平和的な解決へ、人類の英知を結集すべき絶好の好機である。まずは中国に対し、中国が愛する子々孫々の未来に至るまで、このかけがえのない地球倶楽部の住人であり続けたいと思うならば、住人一人ひとりが公正に守り合う国際的な法秩序を守り抜く順法精神の醸成こそが、平和と安寧を守ってくれる真の安全保障であり、その第一歩であることを、中国が心から理解し悟ってくれるまで、愚直な努力を積み重ねていくことが先決ではないだろうか。


個別交渉でASEANの切り崩しを狙う中国
Wedge 9月27日(火)12時10分配信

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の8月18日付け社説が、先に行われた中国とASEANによる海洋行動規範に関する会議につき、中国は外交的成功を謳っているものの、合意内容の実現性は低く、関係国は安心すべきではないと警告しています。要旨次の通り。

名ばかりの行動規範
 仲裁判断から1カ月後、中国は先に行われた南シナ海をめぐるASEAN高官との会議が成功したと謳っている。しかし、その外交的ブレークスルーをよく見てみると、海洋の調和と妥協に繋がる新たな時代に期待する理由はほとんど見当たらないことを示唆している。

 内モンゴルで開催された会議において、中国はASEAN10カ国とともに、海洋の行動規範につき、来年半ばまでに枠組み合意を目指すことで合意した。この行動規範は、14年前に提起されて以降、地域外交の聖杯であり続けてきた。だが、この規範は名ばかりのものになる可能性が高い。

 中国とASEANは、2014年に取り決められた「海洋における偶発的衝突回避プロトコール」(CUES:Code for Unplanned Encounters at Sea)を南シナ海に適用することで合意した。しかし、同年に米中が調印した合意と同じように、この取り決めは海軍にしか適用されず、中国が近隣諸国への嫌がらせに多用している海警や漁船には適用されない。

 中国=ASEAN間の緊急ホットラインに関する新たなガイドラインにも合意する見込みだが、ホットラインが重要と言えるのは、中国がそれにちゃんと応じるようになることが前提だ。2年前、中国はベトナムの領海に石油掘削リグを設置してから1カ月もの間、ベトナムからの呼びかけを無視していた。6月には蔡英文新総裁への不快感を表すシグナルとして、台湾とのコミュニケーションを遮断している。将来、ASEANからの呼びかけに中国がどう応じるかは容易に想像がつく。

 現在、中国=ASEAN間の調整役を担っているのはシンガポールだが、中国の外交副部長は「シンガポールは南シナ海における領有権主張国ではないのだから、介入すべきではない」と述べ、同国を退けようとしている。

 次なる中国の一手は、フィリピンをはじめとする力の劣る近隣海諸国と個別の二国間合意を結ぶことだろう。フィリピンや他の脆弱なASEAN諸国は、雰囲気のよい首脳会談が心地よい新時代の幕開けとなると勘違いしないよう注意する必要がある。まして、米国による安全保障と中国の口約束とを交換してはならない。

出典:‘China’s Maritime Diplomacy’(Wall Street Journal, August 18, 2016)

 最近、内モンゴルで開催された中国とASEAN10カ国の会議において、南シナ海における海洋の行動規範を来年半ばまでにつくることが合意されました。しかし、最近の中国の独善的な海洋進出ぶりから見て、中国の望む行動規範とは、しょせん名ばかりで、実体として意味のないものとなろうと、この社説は述べています。最近の中国の南シナ海、東シナ海でとっている行動からみて、この社説の指摘は実体に近いものとなりそうです。

ハーグの裁定は「紙屑」同然
 中国はハーグの仲裁裁判所の裁定を「紙屑」同然として無視し、代りに自らより弱小のASEANの国々との間で、各個撃破の形で自らの望むルールを押し付けようとしています。

 目下、フィリピンは中国とスカボロー礁を巡り交渉しており、中国はフィリピンに経済協力などの見返りを用意するのではないかと見られています。一方では、フィリピンはこれを受け入れるだろうとの根強い見方がある一面、他方では、フィリピンはそう簡単に譲歩しないのではないかとの見方もあります。フィリピン大統領自身、ごく最近、「中国はいずれ東南アジアのすべての国々によって、仲裁判決の遵守を要求されることになるだろう」、「我々は簡単には屈しない」などの発言を行うまでになっています。

 2014年に中国とASEANとの間で取り決められていた「海洋における偶発的衝突回避プロトコール」は、南シナ海に適用されることで合意されていましたが、この取り決めには大きな抜け道があることを本件社説は指摘しています。つまり、この取り決めは海軍だけにしか適用されず、中国が多用する海洋警備の公船や漁船には適用されないことです。また、ホットラインに関する新たなガイドラインが合意されたとしても、それらは、しょせん中国次第で、使用されないこともあるでしょう。

 目下、中国は台湾の新政権との間では、双方の窓口機関同士の交流を停止した状況が続いています。

 中国の口約束を簡単に信じてはならない、というのが本件社説の警告です。最近の中国は、経済失速、腐敗を巡る対立、権力闘争などを抱え、習近平体制としては、内部の求心力を保つためにも、ことさら外部に対し、強硬路線を取りつつあります。特に、南シナ海、東シナ海、台湾海峡において、自分たちだけに通用する一方的な論理を押し付けようとする姿勢が際立っています。


フィリピン大統領、ロシア・中国との連携模索へ 年内訪問で
ロイター 9月27日(火)8時48分配信

[マニラ 26日 ロイター] - フィリピンのドゥテルテ大統領は26日、記者団に対し、年内にロシアと中国を訪問し、独自の外交政策を展開するとともに、両国との「連携を模索したい」と表明した。

大統領は、フィリピンは旧宗主国である米国との関係で「後戻りできない局面」にあると発言。そのため、他の国との関係強化を模索する中で、米国と歴史的に対立関係にある二つの大国を連携相手に選んだと明らかにした。

大統領は先週、訪中の意向を示していた。ただ、フィリピンと中国とは南シナ海の領有権問題をめぐり長年対立している。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は今年7月、南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を退ける判断を示したが、中国は仲裁判断の受け入れを断固拒否している。

ドゥテルテ大統領は「(米国と)本当に断交するつもりはないが、中国やロシアのメドベージェフ首相との連携を模索したい」と発言。「イデオロギー上の障壁の反対側」を開拓したいとも語った。

米国務省の報道官は定例会見で、フィリピン政府からドゥテルテ大統領の発言に関して連絡はなかったと説明。両国の協力関係は依然強く維持され、米国はフィリピン政府の方針転換を示唆する兆候を何も確認していないと語った。


「殺してやる」「米国は黙れ」 フィリピンの暴言大統領はなぜ支持されるのか
BuzzFeed Japan 9月25日(日)6時0分配信

強硬な発言と言動が注目を集めるフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領。その型破りな政治手法には、国内外から懸念の声が上がっている。

しかし、フィリピンでは未だ高い支持率を維持している。破天荒なドゥテルテ大統領に支持が集まるのはなぜか。

支持の背景にあるフィリピン独特の事情を整理した。【BuzzFeed Japan / 鈴木貫太郎】

解決しない社会問題
フィリピンでは、社会のあちこちに汚職が蔓延している。一般的な庶民の日常生活にまで悪影響を及ぼすレベルだ。

日本では、警察官に路上で小銭をせびられることはない。だが、フィリピンの都市部では、悪徳警官に因縁をつけられることがしばしばある。

交通違反で捕まっても「現金をくれれば見逃す」と露骨に迫り小銭を稼ぐ警察官もいる。クビになった元警官による犯罪はもはや定番といえる。中には殺人事件や違法麻薬取引に手を染める現職の警官もいる。

汚職がはびこっているのは警察組織だけではない。税関も入国管理局も。「法の下の平等」を保障するはずの司法界でも、賄賂を受け取る判事の噂が絶えない。

政治家は選挙のたびに聞こえのいい政策を掲げるのに、いつまでたっても汚職は無くならない。そんな「変わらぬ現状」に多くのフィリピン人が不満を抱いているのだ。

国民の苛立ち
フィリピンの都市貧困層の実情に詳しい名古屋大学大学院の日下渉准教授は「ドゥテルテ人気には、国家の機能不全に対するフィリピン国民の苛立ちが現れている」と分析する。

フィリピンでは交渉次第で法の規制から見逃してもらえることが多々ある。賄賂を生活の糧にする政府職員もいる。

日下准教授は、「賄賂をもらう政府職員も渡す国民も、そういった腐った国家システムから恩恵を受けてきた部分がある。それに対して、国民がノーと言い始めた」と話す。

国民が腐敗したシステムに苛立つ中、「現状の制度をぶっ壊す」と公言する強面のドゥテルテ大統領が登場した。

そして、ドゥテルテ大統領が推し進める違法麻薬対策は「諸悪の根源との闘い」として象徴的な扱いを受けている(日下准教授)。

人権派や知識層は懸念しているものの、容疑者殺害の急増は「闘いの犠牲」として容認されてしまう。

国民の大半が、悪に立ち向かうドゥテルテ大統領ならば、「腐った社会を変えてくれる」と希望を抱いているからだ。

占領の歴史
とはいえ、公の場で汚い言葉を連発する大統領が支持を集めるなど、日本人の感覚では到底考えられない。

「ジョーク好きの国民性だから」とフィリピン側が説明しても、罵られた側からすれば簡単に片付けられないだろう。

しかし、フィリピンの歴史を紐解くと、アメリカや国連に暴言を放つ大統領が支持される土壌を理解出来る。

16世紀からスペイン、アメリカ、日本と外国に占領され続けてきたフィリピン。

歴代大統領は大国の意向を常に配慮してきた。経済も政治も文化も、大国の影響を受けざるをえない状況が続いてきた。

しかし、ドゥテルテ大統領は、アメリカだろうが、国連だろうが、文句があったら容赦なく噛み付く。

大国をも恐れない姿は、歴代大統領とは全く異なる。そのため、「口は悪いがきちんと物申す政治家」「フィリピン国民のことを第一に考える大統領」と評価されているのだ。

地元での実績
こういった国民心理に合わせて、ドゥテルテ大統領の地元での実績が相乗効果となり、人気をさらに強固にしている。

ドゥテルテ大統領が20年以上市長を務めたフィリピン南部のダバオ市は、国内でも「最も安全な街」として知られている。未成年に対する夜間外出禁止令や深夜の飲酒取り締まりなどで治安を回復させたと定評がある。

実際に「ダバオ市は本当に良い街。マニラとは違う」と話す日本人観光客も多い。

最近、ドゥテルテ大統領とダバオ市で暗躍する処刑団とのつながりが報道された。

だが、ドゥテルテ大統領が安全なダバオ市を築くために、私兵団を使って犯罪組織と戦った経歴は公然の事実だ。国際人権団体もこれまでに何度も警告してきた。

フィリピン国民は、処刑団の存在を知った上でドゥテルテ大統領に投票したのだ。

「悪を成敗するには、法を逸脱した正義の鉄拳も必要」と考えるフィリピン人は非常に多い。警察や司法にも汚職がはびこっているからだ。

ドゥテルテ大統領は市長時代、「俺の街では麻薬、汚職、犯罪は許さん」と公言していた。その結果、犯罪件数が劇的に減ったとされている。

大統領になって、この発言は「街」が「国」に変わった。

「俺の国では麻薬、汚職、犯罪は許さん」

「ダバオ市のように全国でも犯罪組織を駆逐してほしい」と願っているからこそ、フィリピン人は強硬的な犯罪対策を支持してしまうのだ。

独裁者に変貌するか
フィリピンで1970年代から戒厳令を布告して独裁体制を敷いた大統領がいる。

フェルディナンド・マルコス元大統領だ。

今では独裁者と評価されるマルコス元大統領も1965年に当選した際は、国民の高い支持を得ていた。「東洋のケネディ」とも賞賛された時期もあったが、政策に行き詰まり、国民の人気が低迷すると、次第に独裁者へ変貌していった。

ドゥテルテ大統領もいつか、マルコス元大統領のように独裁者になるのでは、と不安視する声もある。

政策研究大学院大学の高木佑輔助教授は「閣僚の中にドゥテルテ大統領を諌めるような有力者が見当たらないことが懸念材料」と指摘する。

日下准教授も「今のところ、高い支持率を背景に安定した政権運営ができている。しかし、支持率が下がり司法・立法が邪魔になるまで追い込まれたらどういう態度に出るか不透明だ」と見ている。

日本の役割
南シナ海情勢が緊迫するとともに、日本にとってもフィリピンの重要性が高まってきている。朝日新聞などの報道によると、ドゥテルテ大統領は10月下旬に来日する方向で日本政府と調整をしている。

安全保障政策に関してドゥテルテ大統領は、これまでの米国追従の姿勢を転換させる可能性を示唆しており、今後の動向に注目が集まっている。

過去の政権で大統領補佐官(安全保障担当)を務めたロイロ・ゴレス元下院議員はBuzzFeed Newsに対して「フィリピンと米国の軍事協力体制が変化することはない」と話した。

その上で、ゴレス議員は「今後、比米両国の間に誤解が生じた場合、日本は『良き仲介役』になれる」との見方を示した。


フィリピン大統領、日本と中国を来月訪問 南シナ海問題協議へ
ロイター 9月23日(金)15時39分配信

[マニラ 23日 ロイター] - フィリピンのドゥテルテ大統領は、日本と中国を10月下旬に訪問する方向で外交ルートを通じて調整を進めている。複数のフィリピン政府当局者が23日、明らかにした。

日本の外務省当局者も、ドゥテルテ大統領の訪日計画について認めた。中国の当局者からは取材への返答が得られていない。

フィリピンは日本とは良好な関係を保っているが、中国とは南シナ海の領有権問題をめぐり長年対立している。国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は今年7月、南シナ海の領有権をめぐる中国の主張を退ける判断を示したが、中国は仲裁判断の受け入れを断固拒否している。

ドゥテルテ大統領はこれまで、対立は無益だとして、中国との関係改善を望む姿勢を示している。

ドゥテルテ政権の関係者によると、ラモス元大統領が来週にも中国を訪問し、2国間協議ついて根回しをするという。

一方、日本は南シナ海への進出を強める中国をにらみ、フィリピンの海上安保能力向上を支援するため巡視艇10隻を供与することなどで合意している。


台湾、南沙諸島の島の画像にモザイク処理要求 グーグルに
BBC News 9月22日(木)17時26分配信

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台湾、南沙諸島の島の画像にモザイク処理要求 グーグルに

台湾当局はグーグル社に対して、南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)で領有権が争われている太平島(別名・イトゥアバ島)について、グーグル・アースの衛星画像をモザイク処理するよう求めた。衛星画像では、新しい軍用施設が4つ建設されたように見える。太平島については、台湾が実効支配しているが、中国とベトナムとフィリピンが領有権を主張している。

グーグル・アースの衛星画像では、新しい港と修復された滑走路の隣に、Y字型の構造物が4つ半円形に並んでいるのが見える。

台湾国防部の陳中吉報道官は21日、「軍事機密と安全を守るという前提条件のもと、重要な軍事施設の映像をぼかすようグーグルに要請した」と述べた。

海岸巡防署(海上警察に相当)もBBCに対して、グーグルと協議中だと認めた。撮影場所が軍事エリアだとグーグルは認識していなかったかもしれないと、海岸巡防署はみている。

海岸巡防署は、他の国が同じような立ち入り禁止区域の衛星画像を公表されたら、同じように問題視するはずだと話している。

グーグル社は台湾の要請を検討していると述べた。

タジ・メドウズ広報担当はBBCに対して、「安全保障上の懸念は非常に重大なこととして受け止めるし、公的機関や当局者と協議する用意は常にある」と話した。

グーグルはこれまで同様の要請に応じず、画像をぼかしたことはない。グーグル・アースの画像の大半は第三者から提供されたもので、複数の商用ルートで入手できるものが多いためとみられる。

オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は7月、太平島は「島」というよりは「岩」で、そのため周囲に最大200カイリの排他的経済水域(EEZ)を設定することは認められないと判断を示した。中国も台湾も共にこの判断は受け入れていない。

(英語記事 Taiwan asks Google to blur images from disputed island)


尖閣の次は沖ノ鳥島、止まらぬ南シナ海問題の余波
Wedge 9月21日(水)12時20分配信

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THE ASAHI SHIMBUN/GETTYIMAGES

 来年の党大会に向けて、中国共産党指導部は国内の批判の矛先を日本に向けようとしている。領土を守るためには防衛装備だけでなく、法的な根拠も用意しておかなければならない。

  8月5日、中国漁船と中国公船1隻が尖閣諸島周辺の領海に侵入した。その後、一時は最大15隻の中国公船が同時に接続水域を航行、延べ36隻が領海に侵入し、関係者の間に緊張が走った。

 8月1日に東シナ海での漁が解禁されたため、尖閣諸島周辺に200隻程度の中国漁船が押し寄せることは想定の範囲内であった。しかし、警備という名目で15隻もの中国公船が同行し、漁船とともに領海侵入を繰り返すとともに、接続水域内で漁業規制とみられる管轄権行使に当たる行動を取ったことは過去にはなかった。尖閣周辺に派遣される中国公船は合計26隻が確認されているが、今回はこれまでに確認されたことのないものも含まれていた。新しく確認されたものは通常中国の沿岸部で警備に当たっている小型船がほとんどであったが、武装していた。

 ただ、11日に中国漁船が尖閣諸島周辺海域でギリシャ船籍の貨物船と衝突し、沈没したことは中国にとって痛手となった。沈没した中国漁船の14人の乗組員のうち6人を救助したのは、現場海域にいた中国公船ではなく、海上保安庁であった。中国公船は自国の漁船の保護を名目に現場にいたにもかかわらず、自国船の乗組員を救助することができず、結果として、日本が尖閣諸島の周辺海域を有効に管理していることを示すことになった。

 なぜ中国はこのタイミングで尖閣諸島に対する主張をさらに強めようとしたのであろうか。おそらく、それには南シナ海問題と中国の国内情勢が絡んでいる。

 中国は安倍政権が国際会議などの場で、南シナ海の問題を繰り返し取り上げることに対するいらだちを強めている。7月に、フィリピンによる南シナ海問題をめぐる中比の仲裁手続きで、中国のいわゆる「九段線」に基づく主張が否定され、フィリピンの圧勝ともいうべき裁定が出た。

 中国はこの仲裁手続きを「無効」と主張し、裁定内容も「紙くず」と呼び無視しているが、国内では外交上の失敗に批判が高まっている。安倍政権が「法の支配」を唱えて、南シナ海問題で中国を批判していることは、中国共産党指導部にとって、傷に塩を塗られたと感じているようなものだ。

 8月上旬は、中国共産党の指導者や長老らが集まる「北戴河会議」が開催されるタイミングでもあった。この非公式の会議は、党大会で党内の対立が露呈するのを避けるための事前調整の場である。2017年の共産党大会で、習近平総書記、李克強首相以外の常務委員5人が交代するが、この会議で指導部人事や重要議案の内容がほぼ固まるとされている。

 8月上旬に中国が尖閣諸島に政府公船を集中させたのは、この「北戴河会議」で指導部が突き上げられないよう、中国国内向けに実効支配を強化していることを一時的にアピールするためだったと考えられる。習近平指導部は国内の権力を固めるために、反腐敗運動を強行し、周永康元中央政治局常務委員をはじめ、政敵を失脚させてきた。だが、来年の党大会に向けて、指導部としてはさらに足元を固める必要がある。そのような中、中国はとりわけ日本との関係には敏感になっている。

 南シナ海での失点を覆い隠すように、中国では仲裁手続きを始めたフィリピンと並んで、日本を批判する論調が高まっている。つまり、中国国内の批判が習近平指導部に向かないようにするため、中国外交が失敗したのではなく、「部外者」である日本が南シナ海問題を複雑にしているという虚構を作り上げようとしているのである。

 国連海洋法条約に基づく中比の仲裁手続きでは、最終的に仲裁裁判の判事を国際海洋法裁判所の裁判長が選ぶことになっているが、それが偶然日本人の柳井俊二氏であったことも中国の日本批判に利用されている。

 8月下旬には王毅外相が日中韓外相会談のため来日を予定していたため、その前に日本に対して弱腰と言われないため強気の姿勢を示しておく必要もあったのであろう。そのためか、1週間ほどで中国公船の数は減少した。

「3・3・2方式」から「3・4・2方式」へ
 しかし、その後の領海侵入にはこれまでとは異なるパターンが見て取れる。12年9月に日本政府が尖閣諸島の3島を民間の地権者から購入した後、中国はしばらくの間、中国公船の尖閣周辺への派遣を激増させたが、次第に公船の数と領海侵入の頻度が安定し、毎月3回、3隻の政府公船が2時間領海に侵入する「3・3・2方式」に落ち着いていた。これが、中国が26隻態勢で断続的に日本の実効支配に挑戦する上で持続可能なパターンなのだと考えられていた。

 だが、8月以降、領海侵入は4隻が2時間行うようになっており、少なくとも「3・4・2方式」への変更を試みているようにみえる。これは、中国が常態的に尖閣諸島の主権をめぐって日本への挑戦のレベルを一段階上げることを意味する。場合によっては、より領海侵入の頻度を上げ、「4・4・2方式」としてくるかもしれない。そうすることで、中国はこれ以上日本が南シナ海問題に介入してくることを牽制しようとしているのであろう。

 だが、日本にとって南シナ海問題は海上交通路として、そして何より海洋法秩序の維持という観点から極めて重要な海域である。南シナ海で中国の一方的な現状変更を容認すれば、海洋法秩序が崩壊し、それは東シナ海問題をより悪化させることにもなる。このため、日本は毅然と南シナ海問題でも法の支配を主張するべきである。そのためには尖閣諸島・東シナ海で中国の挑戦に有効に対処していかなければならない。

 日本は東シナ海における中国の挑戦に対処するため、「統合機動防衛力」構想の下、陸海空自衛隊による南西諸島防衛を強化してきた。また、平和安全保障法制の制定と日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の改定により、日米同盟の抑止力も強化した。それでも、6月には中国艦船が初めて尖閣諸島の接続水域を航行する事案があったし、4月から6月に航空自衛隊が行った対領空侵犯措置(スクランブル)は199回と前年度同時期と比べて大幅な伸びを示した。 

 このため、引き続き、南西諸島周辺における警戒監視や対艦・防空能力の向上、高速揚陸艇の導入などによる陸海空統合輸送力の一層の強化が求められる。中国軍との不測の事態を避けるための「海空連絡メカニズム」の早期運用も不可欠だが、日本が公海とその上空での運用を提案したところ、中国が同メカニズムを尖閣の領海・領空でも適用することを主張し、合意できていない。海空を切り離して、「海上連絡メカニズム」を先行させるなど、異なる発想が必要であろう。

 より喫緊の課題は、グレーゾーンにおける危機管理である。東シナ海において、軍事バランスは依然日米に有利な状況が続いている。このため、中国は軍事的手段ではなく、漁船や海上民兵、政府公船を利用し、グレーゾーンにおいて日本への挑戦を続けている。

 海上保安庁は巡視船12隻からなる尖閣専従態勢の運用を開始した。だが、これは常時3隻の中国公船を監視するための数であり、中国側が「3・3・2方式」をさらに高めてくるのであれば、海上保安庁もさらに増強する必要がある。

 中国の海上民兵の実態は不明な点がまだ多いが、その動きにも注意が必要である。おそらく、今回中国公船と一緒に領海に侵入した漁船は海上民兵によるものであったと考えられる。他方、今回尖閣に大量に押し寄せた漁船の乗組員の多くは、内陸部から浙江省や福建省に出稼ぎにきた農民で、船の扱いにも慣れておらず、不測の事態を起こす可能性が高い。

中国だけでなく米国にも理解されない海上警備行動
 グレーゾーン対処に関して慎重に議論するべき点は、海上警備行動または治安出動による自衛隊の投入である。事態が海上保安庁の能力を超えた場合、海上警備行動を発令し護衛艦を派遣することになり、昨年その発令が電話閣議で迅速に行えることになった。

 ただ、これは国際的な慣行ではなく、あくまで日本国内の手続きであり、日本が自衛隊を先に出せば中国が軍艦を出す格好の口実を与えてしまう。海上警備行動については米国でも理解が広がっておらず、日本に慎重な対応を求める声が依然多数を占めている。このため、グレーゾーン対処は海上保安庁による対応を優先するべきである。他方で、自衛隊法を改正し、平時から護衛艦が海上保安官同乗の下で領海警備をできるようにし、まずは尖閣周辺以外の海域で、常日頃から海上保安庁のすぐ後ろに護衛艦がいる実績を積み重ねていくことが望ましい。

 東シナ海では、尖閣諸島の問題だけではなく、中間線付近での中国の一方的な資源開発の問題もある。また、日本全体に視点を広げれば、北方領土、竹島、小笠原諸島沖でのサンゴ漁、日本の排他的経済水域(EEZ)内への北朝鮮の弾道ミサイルの着水など、海の国境周辺で問題が山積している。

 なかでも最も深刻なのが、沖ノ鳥島である。中比の国際仲裁判断は当事国のみを拘束するとはいえ、国連海洋法条約における「島」と「岩」の基準を、中国が沖ノ鳥島を「岩」と主張してきたことに何度も言及した上で示した。特に、スプラトリー諸島で最大の太平島にも「岩」との判断が下されたため、日本も沖ノ鳥島を「島」とする主張を改めるべきだという論調が国際的に出始めている。

 国連海洋法条約では、島はEEZおよび大陸棚の基点となり得るが、岩では領海を主張することしかできない。仮に沖ノ鳥島が「岩」になれば、約40万平方キロメートルにおよぶ広大なEEZを失うことになる。中比仲裁判断では、「島」の基準について、自然の状態で、人間が集団で生活でき、資源採取以外の経済活動を外部の支援なしに行えることとしている。この基準では民間人の住まない離島はほとんど「岩」になってしまう。この基準を厳格に当てはめるなら、沖ノ鳥島だけでなく、南鳥島など他の離島もEEZの基点とはなれない。

 沖ノ鳥島を「島」として守るため、日本は「独自の経済的生活」を維持できるよう沖ノ鳥島の特徴を活かす必要がある。サンゴの再生研究や波力発電の研究、沖ノ鳥島が地質学上の「不動点」であることを活かした海面上昇の定点観測などを行って、島である根拠を積み重ねることが必要である。

* * *

現在発売中のWedge10月号では、「国境騒然」という特集を組んでいます。

■特集「国境騒然」
 ・南シナ海問題が発端の尖閣騒動 余波を受ける沖ノ鳥島、南鳥島
 ・尖閣周辺海域に現れた中国漁民の正体
 ・ガス田に東シナ海の“目”を設置した中国
 ・海上保安庁だけでは尖閣を守れない 待たれる「離島警備のプロ」創設
 ・図解 海に囲まれた日本 国境付近で絶えぬ争い
 ・現地ルポ 自衛隊基地配備に揺れた与那国島 次なる「震源地」石垣島の“騒乱”
 ・「アホウドリ」が広げた日本の領土 巨万の富を巡る無人島獲得合戦


「日本は孤立化招いた」、中国が南シナ海問題でけん制
ロイター 9月20日(火)15時33分配信

[北京 19日 ロイター] - 中国外務省の陸慷報道局長は19日の定例会見で、稲田朋美防衛相が先週、海上自衛隊と米海軍の共同巡航訓練を行うことなどで南シナ海への関与を強化する方針を示したことについて、日本は南シナ海情勢を「混乱させようとしている」と批判した。

中国はこれまでもたびたび、南シナ海問題に干渉しているとして米国や日本を非難している。

同報道局長は、この問題をめぐっては、直接関係している国々の対話を通じて解決すべきで、中国と東南アジア諸国が協力して地域の平和と安定を維持するべきとの点で、周辺地域の国々の意見が一致していると指摘。

さらに「国際社会のために行動しているふりをしながら、南シナ海情勢を混乱させようとした日本が招いたその無秩序な結果を見るといい」と述べた。

日本の行動は他国からの孤立を招き、自国の観点を関係国に押し付けようとして失敗したと指摘した。

同報道局長は「自国の主権と海洋権益を守ろうとする中国の決意は断固たるものだ」とあらためて強調した。


最強の米軍は不変
Wedge 9月20日(火)12時11分配信

 元米CIA長官で元イラク駐留米軍・中央軍司令官のペトレイアスと米ブルッキングス研究所上席研究員のオハンロンが、8月9日付のウォールストリート・ジャーナル紙に連名で論説を寄せ、米軍の即応性危機は神話であり、予算の強制削減の影響はあるものの米軍は世界最強の戦闘能力を維持していると述べています。主要点は次の通りです。

米軍の即応性に危機はない
 米軍の即応性が大統領選挙で再び争点になっているが、幾つかの重要な事実が見過ごされている。国防費強制削減の影響はあったが米軍の戦闘態勢は整っている。米軍は各般の戦闘経験を有し、ハイテク国防産業は最新兵器を供給し、秀逸な諜報能力が米軍を支えている。幾つかの事実を指摘しておきたい。

 目下6000億ドル超の国防予算は冷戦時代の予算を上回る。その額は米国に続く中国、ロシアなど世界上位8か国の国防予算の合計よりも大きい。国防支出はブッシュ政権後期やオバマ政権初期に比べれば少ないが、海外での作戦行動の縮小と財政緊縮のためであり理由のあることである。

 さらなる強制削減がないとすれば、国防省の装備購入予算は今や年間1000億ドルを超える。1990年代から2000年代にかけての低調な調達の時代は終わった。一部航空機等は老朽化し交替や改修が必要だが、大半の装備は概ね良好である。陸軍装備の戦闘使用可能比率は90%にもなる。

 訓練も、テロ等への対処を重視し、10年以上やってきた。2017年までに、陸軍は、毎年全体の三分の一を、海兵隊は、全体の半分を訓練に投入する。空軍は、フル稼働の80~98%レベルの訓練をする予定である。兵士は優秀で士気も高い。軍隊の在籍期間は下士官で約80カ月となっている。

 このように、米軍は、即応性の危機にはない。しかし、次のような緊急を要する課題がある。近年、縮小された陸軍、海軍は、もう少し強化すべきではないか。航空機の近代化計画では、ドローンや爆撃機をより重視すべきではないか。海軍は、海中ロボットや無人システムの導入を強化すべきではないか。米国は他国の弾道、巡行ミサイルの性能により効果的に対処すべきではないか。

 サイバースペース能力は十分か。中東、欧州等での支援体制を如何に強化するか。シリコンバレーなどの技術革新を国防分野に取り込む方法はないか。国防予算の規模はどれほど拡大すべきか。自己主張を強めるロシアと中国に対し更に何をすべきか。これらの課題に対する答えは分かっている。問題は、それらの課題が現下の議論では十分に議論されていないことである。

出 典:David Petraeus & Michael O’Hanlon ‘The Myth of a U.S. Military ‘Readiness’ Crisis’(Wall Street Journal, August 9, 2016)

 米軍の即応性は大統領選挙のイシューになり易いです。今回の選挙でも、トランプは民主党政権下で米軍は弱体化した、と民主党を攻撃しています。トランプは、自分が大統領になれば、軍隊の規模、能力を増やす、国防予算の上限を外すと公約しています。他方、クリントンは世界最強の米軍を維持していくとして、基本的には目下の政策の継続を示唆するとともに、むしろ同盟の強化に重点を置いています。

依然として世界最強
 ペトレイアス元在イラク司令官等によるこの記事はトランプ流の米軍衰退の主張に反論するものです。トランプ共和党候補の言っている米軍の危機論については、米メディアも懐疑的です。実際、例えば、兵器近代化支出は、今もブッシュ政権時代と同じレベルにあります。また、オバマ政権時代の国防費削減は、議会の共和党、民主党双方の主張によって合意されたものだと指摘されています。

 この論説記事は、米軍は予算規模、装備、訓練、兵士の質などから依然として世界最強であると強調します。しかし同時に、今後の課題の指摘も忘れていません。自己満足のコメントではありません。

 最近潜水艦戦力バランスが議論になっています。西側の優位が崩れつつあるのではないかと指摘されています。ロシアや中国の潜水艦が一層静かになり、装備する武器も高度化しているといわれます。水中ドローンの導入を含め、米国などによる潜水艦の追跡能力強化の必要性が指摘されています。

 西側にとって大きな課題は、特に中国とロシアの軍事力強化です。ハードウェア、訓練、ポリティコ・ミリタリー(同盟強化、友好国拡大等)という三つの分野で対応を強化していくことが重要です。その関連で、南シナ海問題を抱えるフィリピンについて、麻薬取り締まりに係る人権批判をした国連からの脱退も厭わないとの大統領発言など今後に不安はありますが、フィリピンとの連携に努めていくことは極めて重要なことでしょう。


フィリピン米国離れ中国接近の真相 ドゥテルテ大統領のしたたかさ その2
Japan In-depth 9月17日(土)18時1分配信

■「新たな独自外交」への布石なのか
だが、こうしたフィリピンの「米国離れと親中」というこれまでの外交機軸の転換は本当なのだろうか。これを読み解くカギはこれまでのドゥテルテ大統領と外務省、大統領府の絶妙のコンビネーションにあるといえそうだ。

9月15日、訪米したフィリピンのヤサイ外相はワシントンでの講演で南シナ海問題に関して仲裁裁判所が下した裁定について「最終的なもので拘束力がある。現在の海上領域における国際的な基準だ」としたうえで中国が裁定を無視する限り「(中国と)対話する用意はない」と明言した。

この発言はラモス特使の派遣が「中国との2国間だけの協議で南シナ海問題の解決を目指すものではない」とのフィリピンの思惑を示したといえ、ラモス特使を「2国間協議の窓口」と理解して歓迎する姿勢を示している中国側との間で認識のずれがあることを浮き彫りにしたといえる。

こうした事例が示すようにフィリピンの外交は、ドゥテルテ大統領が過激な発言で物議を醸し、その後外相や外務省、大統領府などがその発言の真意や背景を改めて説明して誤解を解き、火消しに努めて理解を求めるという「手法」を繰り返している。このドゥテルテ流あるいはフィリピン流に今後を占う「カギ」が隠されているようだ。

フィリピンの英字紙「インクワイアー」はドゥテルテ外交の真髄を「ダメージコントロールと忍耐に基づく新たな独自の外交戦略」と位置付けた。どういうことかというと、ドゥテルテ大統領は「厚かましく、ずうずうしく、粗野で無礼で大胆、そして誤解を招きやすい」と辛らつながらかなり正確に分析し、そのうえで大統領の発言や行動の真意を巡って外交当局や大統領府が「ダメージを修復したり、誤解を解いたりと懸命にコントロール」しながら、内外に「新しくそして独自のフィリピン外交」への理解を求めている、のだと解説する。

■「確信犯、ピエロ」は中国も手玉か

懇意のフィリピン人記者は「新外交戦略」を「これまでの米国べったりのフィリピン外交とは一線を画し、何でもかんでも言いなりにはなりません、独立国として言うべきは言う、やるべきはやります。それは中国に対しても同じで、もらうものはもらいます、でもダメなことはダメです。なめてもらっては困ります」ということだと解説する。

つまりドゥテルテ大統領の数々の暴言、失言、ピエロ的な行動すら国内麻薬犯罪者への容赦ない強硬策と同じ「計算に基づく確信犯的言動」というのだ(いささか自国の大統領だけに甘い見方とも言えなくもないが)。そして米国、中国すら手玉に取ろうとするその「新外交戦術」には確固とした国民の支持とそれに基づくしたたかさがあると指摘する。

■国民の圧倒的支持としたたかな気質

ドゥテルテ大統領は9月5日、ASEAN首脳会議出席のためフィリピン・ダバオ空港を出発する際、空港での会見で「私はフィリピン国民に選挙によって選ばれた大統領だ。だから国民の言うことは聞くが、他国の言うことは聞くつまりはない」と明言した。もっともこの言葉に続いて「フィリピンは独立国家であり、米国の植民地ではない。オバマ大統領は何さまのつもりだ」と続けて物議を醸したのだが。

この「国民に選ばれた大統領である」という意識がドゥテルテ大統領の一連の強気の発言、麻薬犯罪取り締まりに殺人さえ厭わない強硬策などを根底から支えているのは間違いない。圧倒的多数で大統領に選ばれ、その後も80%以上の国民の支持率を維持していることが「何よりドゥテルテ大統領のパワーの源」(地元紙記者)というのだ。

ドゥテルテ大統領のこれまでの言動をその表面だけを見る限りは、「傍若無人」「傲岸不遜」「唯我独尊」「遠慮近憂」などという四字熟語で表現できそうだ。しかし、これまでみてきたような分析や解説を考えると、こうした評価は実は的確ではなく、実態は「臨機応変」「変幻自在」「奇策妙計」「深謀遠慮」などという表現が相応しいのではないか、とすら思えてくる。

ASEAN首脳会議でオバマ大統領にみせた態度にフィリピン国民は「拍手喝采」し「溜飲を下げた」という。さらにフィリピン共産党も「我が国の国内問題に介入しようとする米などに堂々と異議を申し立てた初めての大統領だ」と高く評価した。これはドゥテルテ大統領に「オバマ大統領はすでに去ることが確実な大統領で、11月の大統領選の結果を見据えたうえでの行動」という、言ってみれば「もう(大統領任期の)先が長くない人だから」との思いがあったからともいわれている。

このようにあれこれ米国には言いながらもその一方で「同盟国との関係は変わらない」「フィリピン外交の基本的な立場や基軸に敵的な変化はない」「フィリピン社会は親米社会であり、中国が入り込む余地はなく、国民はいかなる場合にも中国より米国を選択する。米国が好きだからだ」などとメディアを動員してのラブコールも忘れない。

これこそが東南アジア流、いやスペイン、米国、日本など歴史的に外国勢力に植民地化され、占領されながらもしぶとく生き抜いてきたフィリピン流の「したたかさ」といえるだろう。今年の天皇皇后両陛下によるフィリピン訪問が両国関係の新たな絆となった日本が今するべきことがあるとすれば、「混迷増幅」、「米比の亀裂が中国を利する」「南シナ海の要を自覚せよ」などと上から目線でドゥテルテ大統領への批判を繰り返すだけでなく、同じアジアの一員として真摯にフィリピン国民の声に耳を傾けて理解する努力をすることだろう。などと考えることもひょっとすると見事に手玉にとられた結果なのかもしれない。

(その1もあわせてお読み下さい。)


フィリピン米国離れ中国接近の真相 ドゥテルテ大統領のしたたかさ その1
Japan In-depth 9月17日(土)18時0分配信

毎度お騒がせのフィリピンのドゥテルテ大統領は、9月6日からラオスで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議、東アジアサミットなど一連の会議で最もメディアの注目を集めた「時の人」になった。
もっともその理由が暴言や失言、会議欠席など会議本来の目的や議題とは遠くかけ離れた問題ばかりで、各国首脳の反応は徐々に冷めたものになり、メディアも「本論、本筋ではないものの報道しないわけにはいかない」ために報道し、その報道がまた物議を醸すという悪循環が続いた。終わってみれば「ASEAN首脳会議はドゥテルテの言動以外に何があったのか」という後味の悪い、印象の薄い会議となってしまった。

ドゥテルテ大統領自身がそれを望んだかどうかはわからないが、こうした結果に密かにほくそ笑んでいたのが中国であることは疑う余地がない。南シナ海を巡る問題で強硬姿勢を見せている米国と国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)に提訴して「中国悪者」裁定を勝ち得たフィリピンによるオバマ・ドゥテルテ首脳会談がお流れとなり、ASEAN首脳会議、東アジアサミットいずれの会議でも日米など一部の国から指摘はあったものの、中国を名指しで非難したり、主要議題となったり宣言文に盛り込まれることはなかった。対中国の国際世論あるいは域内世論の沸騰をドゥテルテ大統領が結果として「埋没化」してくれたことは、中国にとって敵失でチームメイトがあきれ、観衆がやんややんやとしている間にホームインしてゲームセットしてしまったようなものだろう。

ドゥテルテ節はその後9月9日に訪問したインドネシアでも炸裂。国連の潘基文事務総長を「あいつも馬鹿野郎だ」と悪しざまに批判したり、前アキノ大統領が執行猶予の嘆願をしていたインドネシアに麻薬犯罪で服役中のフィリピン人女性の死刑判決を支持したりと相変わらずニュースを提供している。

こうしたニュースには国際社会は「またか」という程度の反応しか示さなくなってきていたが、9月13日にマニラ首都圏パサイ市のビリヤモール空軍基地で行ったドゥテルテ大統領の演説は「ドゥテルテ節に慣れた」国際社会を再び驚かせるに十分だった。特に同盟国米政府は「突飛な発言を繰り返してきた人物なので驚かない」(アーネスト米大統領報道官)としながらもまさに「寝耳に水」だった。

■米軍退去要請、合同パトロール不参加表明

フィリピンのミンダナオ島には米軍特殊部隊107人がイスラム過激派対策やフィリピン軍の教育訓練の目的で駐留している。この駐留米軍に対しドゥテルテ大統領は退去を要請した。さらに南シナ海で対中強硬姿勢を示す一環として実施している米とフィリピンによる合同パトロールについても「米中どちらにも加担したくない。自分たちの領海をパトロールしたいだけだ」と述べて、合同パトロールに参加しない意向を表明した。

そして同じ演説でこれまで米国、イスラエルなど同盟国から調達していた軍装備品の調達先にロシア、中国をも検討していることを明らかにした。「20年から25年の借款契約を2国と合意している。その2国に対し武器、装備がほしいとすでに伝えてある」としてすでにロシアと中国との間で武器・装備調達に関する何らかの合意があることを示唆した。フィリピン軍事筋によると、対外戦争を想定していないフィリピン国軍が装備近代化で必要としているヘリコプターや装甲車、ハイテク通信機器、人道支援、災害支援用の各種機器などをロシア、中国に提示しているという。

これに対し中国はドゥテルテ大統領の大統領専用機を提供する考えを示したとされているが、フィリピン情報当局が「中国からの大統領専用機供与は秘密保持や機体の信頼性で問題がある」として反対する意向という。

■米国離れは中国接近のサインか

こうした一連のドゥテルテ大統領の発言や行動を見る限り、フィリピン外交の基軸である親米路線、米軍との同盟関係を見直そうとしており、その結果として中国に接近しようとしているとみることもできるだろう。

中国との間の最大の懸案である南シナ海の領有権問題ではフィリピンがオランダ・ハーグの仲裁裁判所に中国の「南シナ海のほぼ全域に及ぶ領有権の主張」の違法性を訴え、今年7月12日に「中国の主張に法的根拠はない」との「勝利の裁定」をフィリピンは得ている。ところが中国は仲裁裁判所の裁定を「単なる紙屑」として無視、「あくまで領土問題は関係当事国の2国間で解決する問題」として日米や国際社会の関与を拒絶している。こうした中、ドゥテルテ大統領は就任直後にラモス元大統領を特使として中国に派遣して「領土問題を2国間交渉で協議する」という対中柔軟姿勢に転じたと報道された。

米特殊部隊の撤退、米との合同パトロール不参加、米以外の国からも武器調達と立て続けのドゥテルテ大統領の発言をみれば、オバマ大統領に対する暴言を伏線として確かに米国離れを意図的に狙っていることがわかる。そしてその米国離れと表裏一体となっているのが中国への急接近の傾向である。

6月30日の大統領就任以来、ドゥテルテ大統領が派遣したラモス特使は中国に歓迎され、中国はこの機に乗じて一気にフィリピンを親中に変換させようと躍起となっている。武器、装備の供与、大統領専用機の提供に加えてアフリカやカンボジア、ラオスを「籠絡」させている中国の得意技である「経済援助」まで持ち出して一気にフィリピンを引き込もうとしているのだ。

その結果、中国の劉振民外務次官をして「中国とフィリピンの関係は今転換点にある」(9月13日に訪中したフィリピン外交関係者に対して)とまで言わしめるまでになっているのだ。

(その2に続く。)


フィリピンの暴言王ドゥテルテ大統領 中国包囲網に暗雲
週刊文春 9月17日(土)7時1分配信

「こいつもバカだと思った。(批判は)まったく気にしない。私はフィリピンの大統領であって、国際社会の大統領ではないのだから」

 9月9日、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領(71)は、潘基文国連事務総長についてこう言い放った。

 潘氏の批判とは、ドゥテルテ大統領が6月に就任して以来、推し進めている“ある政策”に対するものだ。

「ダバオ市の市長を7期22年にわたり務めたドゥテルテ大統領は就任以前から麻薬撲滅を掲げていましたが、就任直後に麻薬密売人の殺害を警察に命じ、一般市民にも麻薬中毒者の殺害を奨励しています」(現地紙記者)

 フィリピン国家警察は8月までに756人の麻薬関連容疑者を殺害したと発表したが、一説には既に3000人以上が殺害されているという。

「死者の半数以上が正体不明の襲撃者に暗殺されていることから、市民の間では治安部隊や警察に雇われた殺し屋が麻薬に関与していると疑われる人々を手当たり次第に射殺していると恐怖が広がっています」(同前)

 ドゥテルテ政権による“超法規的”殺人に対し国連やアムネスティ・インターナショナルから批判の声が高まり、6日に予定されていた米比首脳会談でも議題に上ることが指摘されていた。

「前日にそのことを問われたドゥテルテ氏は、オバマ大統領を『プータン・イナ(売春婦の息子)』と罵り、米国側が会談をキャンセルする事態になりました」(同前)

 91パーセントという驚異的な支持率(7月時点)を背景に強気な発言を繰り返すドゥテルテ氏だが、これはさすがにまずいと思ったようだ。

「9日に、自身の暴言は、オバマ氏ではなく米国務省に向けたものだと釈明しましたが、同じ席で潘氏への新たな暴言が飛び出した。本音はこちらでしょう」(外信部記者)

 一連のドゥテルテ氏の“暴走”は、日本にとっても大きな影響を及ぼしそうだ。

「強気なドゥテルテ大統領ですが、中国による南シナ海の実効支配に対しては方針が定まらず、オバマ大統領は今回の首脳会談で、連携を確認する予定でした。この暴言騒動は、両国の連携に悪影響を与えたのみならず、“中国包囲網”を築きたかった日本にとっても痛かった」(同前)

<週刊文春2016年9月22日号『THIS WEEK 国際』より>


対中強硬派のベトナムがASEAN諸国を結束させられない理由
ニューズウィーク日本版 9月16日(金)18時50分配信

<南シナ海に中国が作った人工島を攻撃することも辞さないベトナム。先のASEAN首脳会議でも声を1つにして南シナ海の大半に中国の管轄権は及ばないとする仲裁裁判所の裁定を世界に示そうとしたがかなわなかった。カンボジア、ラオスなど、中国からの投資だけが頼りの国々を中国が切り崩しているためだ。一方、メコン川流域に目を向ければ、上流に中国が建設しているダムのせいで下流域の国々では農業や生活に不可欠の水量が減るなど共通の利害もある。かつての敵国アメリカと手を結んだベトナムは、中国を退けられるか>(写真は2014年、水流が減ってしまったメコン川で牛を洗うカンボジア人)

 最近の報道によるとベトナムは、中国と領有権を争う南シナ海にロケット発射装置を移動させ模様だ。つまりベトナムは、中国が埋め立てた人工島を攻撃する可能性もあるということだ。南シナ海をめぐる中国と周辺諸国の緊張は高まるばかりだ。

 米国防省は2016年5月に公表した年次報告書で、周辺国が領有権を争う南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島における中国の埋め立て面積が約13平方キロに達し、人工島には長さ約3キロの滑走路や大規模な港湾施設が建設されたと明らかにした。中国はさらに、ベトナムなどが領有権を主張する西沙(パラセル)諸島のウッディ―島に地対空ミサイルを配備するなど、着々と軍事拠点化を進めている。2015年に米政府が公表した同様の報告書は、中国がたった18カ月で約8平方キロに及ぶ人工島を造成した経緯が詳細に書かれていた。

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 こうした中国の動きは、中国が南シナ海のほぼ全域に及ぶ九段線(中国が領有権を主張するため地図上に引いた境界線)に沿ったADIZ(防空識別圏)を設定するのではないかと国際社会は警戒感を強めている。

 南シナ海の領有権をめぐってフィリピンが中国を相手に起こした仲裁裁判で、オランダ・ハーグの国際仲裁裁判所は7月、フィリピンの主張をほぼ全面的に認め、九段線に基づく中国の歴史的権利に「法的根拠なし」とする画期的な裁定を下した。だが中国政府は裁定を無視し、日米の外交圧力に屈した国際仲裁裁判所の判決に根拠はないと一蹴。従う気配はない。

 そんななか、中国に反旗を掲げて行動に出たのがベトナムだ。もともとベトナムは、中国の強引な海洋進出に対抗するため、南シナ海をめぐる領有権問題についてASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国が一致団結して対応しようと模索してきた。全会一致を原則とするASEANが一丸となって中国に立ち向かうことで、中国を交渉の場に引きずり込むのが狙いだった。

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 一方の中国政府はASEANと交渉するよりASEAN各国との2国間協議を望んでおり、これまでのところは中国の思惑通りに進んできた。

中国に分断されたASEAN

 ASEAN諸国の足並みはなかなか揃わない。南シナ海問題に関する実績といえば、2002年に領有権問題の平和的解決を目指して中国とASEAN諸国が調印した「南シナ海行動宣言(DOC)」くらいだ。それから10年後の2012年、ASEAN諸国と中国は「行動宣言の実施に向けたガイドライン」に合意したが、いまだ実施には至っていない。

 2016年7月にラオスの首都ビエンチャンで開催されたASEAN外相会議では、中国から多額の経済支援を受けるカンボジアが、ASEAN共同声明で南シナ海問題に言及させまいと抵抗。ASEANは分裂し、法的、外交的なプロセスを尊重するという緩やかな文言すら盛り込めず、仲裁裁判所の裁定にも言及できなかった。

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 カンボジアが中国に不利なASEAN共同宣言を阻止したのは、これで3度目だ。ASEAN外相会議を1カ月後に控えた今年6月、カンボジアはミャンマーやラオスと手を組み、中国による南シナ海の軍事化を念頭に「深刻な懸念」を示したASEANの声明への支持を取り下げ、より軟らかなトーンに変えさせた。中国の王毅外相は、カンボジア政府の努力を称賛した。

 はるか昔、2012年にカンボジアの首都プノンペンで開催されたASEAN外相会議でも、南シナ海問題をめぐる関係諸国の対立が激しさを増し、史上初めて共同宣言を採択できずに閉幕した。南シナ海の領有権をめぐる中国との紛争をASEAN共同宣言に明記するよう求めたベトナムとフィリピンに対し、議長国のカンボジアは盛り込むことを断じて許さなかった。

 なぜカンボジアはそれほど中国寄りなのか? 専門家や外交筋に言わせれば、カンボジアは中国マネーに買収されたようなもの、と見るのが一般的だ。事実、中国はカンボジアだけでなく、ミャンマーやラオスでもインフラ事業に率先して多額の資金を注ぎ込み、影響力を拡大している。中国がASEANの切り崩しにこれほどまで努力するのは、南シナ海問題のためだけではない。中国政府が進めるより強引なプロジェクトに対し、ASEAN諸国が結束して異議を唱えるのを阻止するためだ。

メコン川流域にも紛争

 中国と一部のASEAN諸国の間でとりわけ大きな火種になってきたのが、中国がメコン川流域で進める水力発電ダムの建設と水源の管理をめぐる問題だ。最大の関心を抱いているのはメコン川の下流に位置するベトナム。メコンデルタはベトナムで最も稲作に適した土地であり、米を育てるためにはメコン川上流からの水源が一番の頼りだ。ダムの建設によって下流部への水がせき止められれば、コメの生産に影響が出る恐れがあり、死活問題だ。

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 1986年に中国政府が国内のメコン川流域でマンワン・ダムの建設を始めて以来、ベトナム政府は中国に対してダム建設がメコンデルタへの水流をせき止める危険性があると再三訴えてきたが、状況は何も改善していない。中国政府はマンワン・ダムが遠く離れた南方のメコンデルタに影響を及ぼすはずはないとしてベトナムの主張を拒み、中国国内にあるメコン川の水源は川全体を流れる水の16%にしか満たないと反論した。

 ベトナムは世界中の国々から支持を取り付けようと奔走し、とりわけアメリカの後ろ盾を求めた。米政府はベトナムの期待に応え、一貫して中国のダム建設プロジェクトを公の場で非難してきた。

アメリカは中国に対抗できるか

 当時の米国務長官だったヒラリー・クリントンは2012年7月、アメリカの政府高官としてベトナムとカンボジア、ラオスへの歴訪を実現し、バラク・オバマ政権の「アジア重視」戦略を見せつけた。彼女はラオスを訪問中、タイの会社が受注しラオスで建設中だったサヤブリ・ダムについて、沿岸住民の暮らしや環境への悪影響が懸念されるため、計画を一時凍結するよう主張した。それは中国以外のメコン川下流域の本流では初めてのダム建設プロジェクトで、ベトナムやカンボジアが反対していた。

 近年アメリカは、メコン川流域国を囲い込むため様々な布石を打ってきた。アメリカが主導して立ち上げた「メコン川下流域イニシアティブ」には、カンボジアとラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムの5か国が参加。2010年には環境保全や教育振興などを目的に、流域4カ国で構成する「メコン川委員会」と「米ミシシッピ川管理委員会」がパートナーシップ協定を結んだ。「米・ラオス二国間対話」も今年で7回目を迎えた。最たる例はベトナムだ。今ではアメリカ海軍の艦船が毎年ベトナムに寄港し、合同の軍事演習も行っている。

 つまりアジアにおける覇権と資源をめぐる争いは、南シナ海だけで繰り広げられているわけではない。メコン川流域国でも米中の主導権争いがますますエスカレートしているのだ。戦略的には中国が先行しており、外交や軍事面でアメリカのより積極的な動きが求められる。

Oliver Hensengerth, Lecturer in Politics, Northumbria University, Newcastle

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.


あらゆる正面で閉塞状態の中国
Wedge 9月16日(金)12時11分配信

 8月15日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、同紙コラムニストのラックマンが、南シナ海や中国の対豪投資の問題によって、中豪関係が緊張していると述べています。主要点は、次の通りです。

標的にされる豪州
 南シナ海とオリンピックという二つのことが相まって中国のナショナリズムの毒舌は豪州を標的にしている。南シナ海に対する中国の主張を否定した先月の国際仲裁裁判所の裁定が発端になった。豪州は日米と共に中国に対し裁定の尊重を求めた。中国は烈火の如く怒った。人民日報傘下の環球時報は豪州が南シナ海に入って来れば豪州は格好の攻撃目標になる等と主張している。オリンピック水泳競技も紛争の種になっている。豪州の選手が中国の選手を薬物使用者だと呼んだため、中国メディアは対豪批判を爆発させた。

 これは、中豪関係を超え、中国の台頭と西欧の間の緊張を示している。南シナ海と太平洋が競争の海域になれば、豪州は、中国がアジア太平洋を支配することを受け入れるのか、あるいは引き続き同盟国である米国の支配に賭けるのかという難しい選択に直面する。

 これまでは、安全保障上の懸念は経済上の利益に比べて重要性が少ないと考えられてきた。資源の対中輸出により豪州は20年以上、不況を回避することができた。しかし、経済関係でも問題が出てきた。今年に入って、豪州政府は中国企業によるSキッドマン社(豪州の国土の1%を所有する)の買収を阻止した。先週は2つの中国企業によるオースグリッド送電電力公社の買収を阻止した。買収阻止に当たって豪州政府は安全保障上の懸念を理由にした。

 米国は、南シナ海の航行の自由作戦への豪州海軍の参加を求めている。一方、中国は、豪州がそのような活動に参加すれば厳しく対応することを明らかにしている。中国の対応は、当面心理的、外交的なものであろうが、中国からの投資が阻止されることになれば中国の反発は一層強まるであろう。

 このように考えると、豪州が今後数十年の間地政学上の引火点になる可能性がある。豪州にとり21世紀はそう幸運な時代にはならないかもしれない。

出 典:Gideon Rachman ‘Why Australia’s luck may be running out’ (Financial Times, August 15, 2016)

 上記は、興味深い見解です。従来、豪州の中国観は総じてソフトなものであり、中国の脅威も左程感じてきませんでした。同時に、価値を共有する国として対米同盟は強固に保ってきました。ところが、南シナ海の問題や中国の対豪投資の問題などを契機に、豪州の中国に対する安全保障観がより現実的なものに変わり始めています。これは、悪いことではありません。

 ラックマンは、今の問題の根源は中国の台頭にかかる戦略上の問題であるといいます。まさにそうでしょう。中国がかつて宣言したように「平和的」な台頭であれば問題はありません。しかし最近の中国の言動や振る舞いを見れば、とても「平和的」とは言えません。覇権主義であり、拡張主義です。

中国の最大の障害
 南シナ海の問題を契機に、今中国の対外関係はほぼあらゆる正面で閉塞状態にあります。中国から見て最大の障害は、米国を中心とする日本、豪州、韓国などの同盟です。それを打破するために、第一に日本への対応を厳しくし、第二に韓国、豪州と米国の間に楔を打ち、第三はASEANの国々を分断しようとしています。中国の対豪州戦略は対韓国戦略と同様に中国の対ミドル・パワー戦略とも言えるもので、今後経済分野を含め対抗措置をとっていく可能性もあります。この戦略には結構高い優先度が置かれているものと思われます。 

 THAADに関する韓国に対する中国のメディアの執拗な批判や中国における韓国文化活動の停止などは、韓国の政府内外に大きな心理的圧迫を加えています。今の中国の言動を見る限り、対中均衡を強化していく他により良い政策はありません。米国を中心に日本、豪州、韓国の連携を一層強めていくことが重要です。

 中国の海洋進出の行動は国際秩序に挑戦する勢力であるとの中国の姿を世界に印象付ける結果になっています。中国に対する信頼感は大きく低下しています。英国のメイ新政権は、仏EDFと中国の企業が建設するヒンクリーポイント原発の最終決定を延期しました。在英中国大使が激しくこれを批判する書簡をメディアに投稿しましたが、問題の深刻さが窺われます。メルケル独首相の対中姿勢も最近厳しくなっているといわれます。漸く欧州がアジアの現実を理解し始めたのであれば良いことです。


日米訓練など通じ南シナ海への関与強めていく=稲田防衛相
ロイター 9月16日(金)7時5分配信

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 9月15日、訪米中の稲田朋美防衛相は、日米の共同巡航訓練や地域海軍との演習を通じて、南シナ海への関与を強めていく方針を明らかにした。ケネディ駐日米大使と防衛省で9日撮影(2016年 ロイター/Issei Kato)

[ワシントン 15日 ロイター] - 稲田朋美防衛相は15日、日米の共同巡航訓練や地域海軍との演習を通じて、南シナ海への関与を強めていく方針を明らかにした。訪米中の防衛相は米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で講演。

法の支配を変更したり規則をゆがめようとする行為を容認すれば、その影響は世界全体へと波及すると指摘し、「その意味で、ルールに基づく海洋秩序の維持に資する、米海軍の『航行の自由』作戦を強く支持する」と語った。沿岸国への能力構築支援も表明した。


天皇処刑と日本の共産革命に動き始めた中国
JBpress 9月16日(金)6時15分配信

 日中首脳会談などで安倍晋三首相が主張する法の支配・対話路線とは裏腹に、中国は「力の支配による既成事実化」としか思えない行動をとり続けている。

 南シナ海の人工島構築が発覚した時点での米中首脳会談では、軍事基地化は考えていないと発言していた。しかし、いまの実体は、軍事基地化以外の何物でもない。

 スカボロー礁でも、米国のやや強腰な警告に対し、同じ屁理屈を述べていた。しかし、浚渫船などが確認されている。

 東シナ海でも同様で、話し合いの合意を無視して一方的に中間線付近ではガス田の施設を拡充しているし、尖閣諸島では接続水域への入域や領海侵入を繰り返している。

 ASEAN(東南アジア諸国連合)は中国の経済支援を武器にした切り崩しで、一致団結した包囲網が形成できない。そうした中で人工島の施設は着々と完成し、軍事基地的運用も活発になっている。

 米国は大統領選挙の時期とも重なり、いま一つ南シナ海や東シナ海での姿勢が判然としない。日本は東シナ海問題で話し合いの機会を持つ努力をしつつも、最悪の状況も想定してしかるべき準備をしなければ後れを取るのではないかと危惧される。

 習近平政権になって一段と強権的になったが、基本的には建国以来の長期目標を達成する一環で、日本の共産化という最終目標に変わりはなく、日本は断じて阻止しなければならない。

■ 中国の対日工作

 中国の対日工作は長期的、かつ巧妙である。「100年マラソン」とも言われるように、目的達成(日本の共産化・中国化である)を100年のスパンで考えているということである。

 従来、香港・マカオ・台湾を取り返すのが主たる目的とみられたが、既に一部は達成している。近年は南シナ海ばかりでなく、尖閣諸島を含む東シナ海、さらには沖縄さえ中国領土だと喧伝している。

 こうした戦略を描いたのは、ゾルゲや尾崎秀実ともつながっていたとみられる中国の「国際問題研究所」所長の王梵生であったとされる。1945年2月のヤルタ会談は、王の情報を基に開催されたと米国は分析している(福田博幸『中国対日工作の実体』)。

 ちなみに、国際共産革命の勝利を確保するために、王はどういう図面を描いていたのだろうか。

 まずソ連を擁護するため、日本を中国との全面戦争に引きずり込み、北進論を南進論に転換させ、米英との戦争に発展させる。そして、日本だけでなく、米英も帝国主義だと宣伝して排除し、アジアの共産化を成し遂げるという構想であったという。

 「日本解放第二期工作要綱」なる秘密指令文書が「(1972年)7月中旬」に入手されたことから、福田氏は「『7月5日』の田中(角栄)内閣誕生と同時に中国の対日工作『第一期』は終了し、『第二期』に入ったことを物語っている」と解釈する。

 第二期の基本戦略は「日本が現在保有している国力のすべてを我が党の支配下に置き、我が党の世界解放戦に奉仕せしめることにある」と明記している。

 第一期工作の目標としていた国交正常化は田中内閣によって達成されたので、第二期の「民主連合政府の形成」を打ち出したのだ。「日本列島は、日本人だけの所有物じゃない」と嘯く鳩山由紀夫政権の出現によって達成されたかに見えたが、あまりにも短期間で終わった。

 ちなみに第三期工作の目標は「日本人民民主共和国の樹立、天皇を戦犯の首魁として処刑する」と、身の毛が弥立つ恐ろしいことを平然と書き連ねている。日本を革命で共産化するという堅忍不抜の意志表明であることが分かる。

 共産党の一党独裁による強権で、人権擁護どころか、指導者を批判する言論も民主化要求の反政府デモも一切許さない、今日の中国における状況の日本での展開である。2000年以上にわたって連綿と続いてきた日本的平和維持の二重構造(天皇の権威と政治の権力)の破壊である。

 カンボジア、ラオス、ネパールでは中国共産党の影響下で王政が廃止された。タイでも、華僑のタクシン派が台頭して以降、王政を揺るがす混乱が続いている。

 安倍政治を強権政治などと論(あげつら)い、自称民主化闘士などと思い込んでいる人士は、その時「こんなはずではなかった」と思っても後の祭りである。

 工作要綱には、第二期の目標を達成するために、「群衆掌握の心理戦」「マスコミ工作」「政党工作」「華僑工作」などを列挙する。

■ 第二期工作の細部

 「群集掌握の心理戦」では、「展覧会・演劇・スポーツ」「教育面での奉仕」「委員会開設」の項目がある。

 中国の書画・美術品・民芸品等の展覧会、民族舞踊団、雑技団、京劇団の公演、さらには中国語学習センターの開設などは、日本人が思うような単なる芸術鑑賞や語学の勉強ではなく、日本革命の素地をつくる遠大な目標の一里塚と位置づけていることが分かる。

 教育面での奉仕では、「大学へ中国人中国語教師派遣の申し入れ」や「留学生奨学金」という項もある。

 日本の大学や研究機関などで勤務する中国人教授は約3000人いるという。また毎年2000人の日本人高校卒業生に全額無条件の奨学金を発給して中国の大学へ留学させる、応募状況によっては5000人まで増加するとしている。

 教授たちは中国共産党の日本革命意志のもとに派遣されているのであり、また中国に親近感を持つ若者を育てて革命の土壌にする目的が透けて見える。

 日露戦争後、白人社会を負かした日本に憧れ日本に学びたいと、中国から1万2000人の留学生がやって来た。孫文、魯迅、梁啓超、蒋介石らはそうした留学生であった。

 お金がなく日本に来られない江沢民などのためには南京に中央大学を設立して学ばせた。日本は純粋に学問の場として提供したが、中国はすべてが革命の素地つくりと考えていることが分かる。

 「委員会開設」では、「中日文化交流協会」を拡充し民間人の組織体で実施させるが、大使館が支援する方式をとると明記したうえで、「初期においては純然たる奉仕に終始し、いささかも政治工作、思想工作、宣伝工作、組織工作を行ってはならない」と述べる。

 中国政府の革命意図を察知されないように手の内を隠し、友好的雰囲気で気軽に接触できるようにせよ、と厳命しているのだ。どれほど多くの日本人がこうして友好人士になったことであろうか。

 「マスコミ工作」では、「マスコミを支配する集団の意志が世論を作り上げる」として、田中内閣成立が日本解放工作の実績と述べ、さらに国交正常化へ追い込んだのは「日本のマスコミを支配下に置いた我が党の鉄の意志と、たゆまざる不断の工作」であるとも述べる。

 「我が国への好感、親近感を抱かせるものを、第一に取り上げさせる」など、すべては統制下で、マスコミ工作を推し進めるとしている。

 「政党工作」では「議員を個別に掌握する」「招待旅行」などが書かれている。親中派議員とされる人士は、招待旅行などで一生忘れられない、恩義に着るような思い出を抱かされたに違いない。

 「華僑工作」では、日本に住む華僑は無産階級の同志ではないが、「利用すべき敵」として台湾などへ逃亡させない、青少年などをしっかり掌握し、中国銀行に預金させ、大使館開設後は中国国籍を取得させるなどとしている。

 国籍を取得した後は、「日本解放の一戦力となすべく、政治教育、思想教育を開始」し、「対外諜報工作の手足」として〝いろいろなことができる″「利用価値の高い便利な存在」と位置づけしている。

 いずれにしても、中国は天皇を処刑して日本人民民主共和国を樹立すると公言し、日本在住の華僑を「利用価値の高い存在」としている。それにもかかわらず、日本国民ならびに国民を代表する議員たちはあまりにも無防備な昼行燈ではなかろうか。

■ 国防動員法の適用

 中国は国防動員法を2010年2月に公布し、7月施行した。この半年前(2009年9月)に鳩山由紀夫首相が政権に就く。中国にとっては工作の大いなる成果に思えたに違いない。ますます「民主連合政府の形成」に拍車がかかったのではないだろうか。

 この頃から日本国内での大規模土地取得の動きが明らかになり、高市早苗衆議院議員は、「平時からの国防動員準備業務の一環なのではないかという疑念」を抱いている(『WiLL』2011.8所収論文)。

 国防動員法第4条は「全国民の参加、長期的準備、重点的建設、全局を考慮した統一的計画」などを規定し、第5条で「公民及び組織は、平時には法により国防動員準備業務を完遂しなければならない」と規定している。

 第49条は「満18歳から満60歳までの男性公民及び満18歳から満55歳までの女性公民は、国防勤務を担わなければならない」とし、外国在住の中国人も免除されていないので、国防勤務の対象者である。

 こうして、「中国資本系企業の日本事務所も中国の国防拠点となり得るし、膨大な数の在日中国人が国防勤務に就くことになる」(高市議員)とみられる。正しく、〝いろいろなことができる″華僑の活用ではなかろうか。

 なお、中国は国防動員法を補強する「国防交通法」を来年から施行する。「特殊な状況」が発生すれば、民間企業の車両、船舶、航空機までも軍事行動に供出する義務があるというもので、在中日系企業も例外ではない。

■ 中国が目指す日本のモザイク化

 イスラエルはエルサレムを首都としているが、その東半分(東エルサレム)はパレスチナの首都でもある。南西部にはパレスチナが管轄するガザ地区があり、ヨルダン川西岸一体も概ねパレスチナ管轄地域である。

 このように、イスラエルは、国家の中にイスラエル官憲の力が及ばないパレスチナの管轄地域がモザイクのように点在している。

 北海道の広大な山林やリゾート地、さらに奥尻島、佐渡島、対馬、長崎県の高島と五島列島、鹿児島空港周辺の林地、鹿児島県の沖永良部島、沖縄県の石垣島や西表島周辺などが中国系資本の手に落ちたか落ちようとしている。

 東京都内や名古屋、新潟市内では公館用地として必要以上の広大な土地の取得に中国や中国資本が動いている。

 札幌市では地下3階、地上29階の高層ビルの数階の店舗を除くすべてが中国人の店舗と居住階になるビルが計画されている。新千歳国際空港近くには、住民の反対などで計画は縮小されたが、中国人専用の戸建て住宅がある。

 首都圏にあるマンションなども、中国人に占領されるのが少しづつ増えているという。そうした場所がいずれはチャイナタウン化するのは必定であろう。中国人に対する入国管理の緩和で、永住者は増大の一方で、現時点では30万人前後ともみられる。

 名古屋と新潟の土地に関しては、桜井よしこ氏が『中国に立ち向かう覚悟』で以下の事実を暴露している。

 日本政府は2011年7月、北京に新しい日本大使館を完成させたが、申請のなかった吹き抜けが作られているとして中国政府が使用を認めなかった。そのうえで、新潟と名古屋の土地買い取りについて日本政府が便宜を図るよう当時の丹羽宇一郎大使に求めたという。

 桜井氏は「筋違いの要求」なので「拒否すればよいだけ」のことを、「中国の属国になるのが日本の幸福だと信じている」「(民主党政権の)大使らの気概なき外交」で、「前代未聞の屈辱的な対応」をする。

 大使に泣きつかれた外務省は玄葉光一郎外相と野田佳彦首相(肩書きはいずれも当時)の了承を得て、「中国側の要請に関連国際法に従って協力する」という口上書を中国政府に提出する。

 そうすると、2日後に日本大使館の使用許可が下りたという。何と幼稚な恫喝に屈したことか。

■ 議員たちは土地を検分せよ

 古代から、土地検分が権力者たちの中心的仕事であった。それは、国家を運営する租税ばかりでなく、領民の生活を安堵するためにも可能な範囲で耕作地を開拓しようとしたからである。

 今日では、基本的には所有権が確立しているが、転売などを重ねて所有者不明の土地も相当あると見られている。所有者が確定していても、貸与などで所有者の目が届かない状況に置かれている土地もある。

 「土地売買の規制は外資も含めほぼ皆無、一方で土地所有者の権利(私権)は際立って強い。(中略)世界でも特異な日本の土地制度が改めて浮き彫りになっている」(笹川陽平論文「産経新聞」平成25年5月17日掲載)わけで、イスラエルのように、日本の土地が虫食いされても、手がつけられない状況のようだ。

 多くは中国系資本であろうが、ある部分は韓国系資本、あるいは北朝鮮系資本などで買い占められ、日本の官憲が手を出せない状況になってはいないか、法律や条例を基に検分する必要があろう。

 今では国会議員ばかりでなく地方議員までもが、いろいろな目的を掲げて外国視察に出かける。しかし、議員は第一義的には国や自治体の問題点を見つけ、その対策に責任を持つ立場にある。

 そうであるならば、議会に縛られない連休などで、責任下にある地域を隈なく見て歩き、問題点を見つけ、政策に反映するようにする必要があるのではないだろうか。

 国会議員と言っても、小選挙区制で、自分の選挙区を知るのがせいぜいである。しかし、議員になった暁には、責任は日本全土に及ぶわけで、○○(地域名)の出ですからなどの言い訳は成り立たない。

 日本の土地が中国を主とする外国資本に買い漁られているが、報道されている場所でもその細部は把握されていない。ましてや、所有者不明のところや、報道されていないところにおいておやではなかろうか。

 そうした場所を真剣に検分して回った議員は何人いるだろうか。議員は議会に出席すれば1日1万円などの手当てが出ると仄聞したが、議会に出席して議論するのが本務であろうから倒錯も甚だしい。そのための議員歳費ではないだろうか。

 歳費以外の手当などは一律ではなく、出張に出張手当があるように、地域を検分して回るなどには検分手当をつけるなど、実績主義で行うようにしてはいかがであろうか。

■ おわりに

 尖閣問題に関しては、古森義久氏が多くの米専門家に問いただしており、様々な意見が開陳されている。

 その1つ「尖閣に迫る中国、日本はどう対応すべきか 米専門家が警告、中国の尖閣奪取計画は確実に次の段階へ」では、「国際評価戦略センター」のリチャード・フィッシャー主任研究が日本は危機的な状況を迎えていると強調し、「中国側は、数の多い『漁船』民兵とヘリコプターや潜水艦を使った尖閣奇襲上陸作戦を計画している気配が濃厚です。さらに最近ウクライナなどから調達した大型ホバークラフトの使用もあり得るでしょう」と述べている。

 尖閣周辺では、日本漁師の2カイリ内での漁は海上保安庁の実力で排除されるが、中国船は退去を呼びかけるだけのため、島ギリギリの遊弋を許してしまうそうである。

 島ギリギリに行動できるということは、海保の目が届かない夜陰等にまぎれて、民兵が偽装漁船から上陸して地下工事などを行い、持久にも耐えるように物資の事前集積を図り、また夜陰に紛れて帰ってくることができるということである。

 すでに尖閣諸島では民兵が作った地下施設などがあって、明日に備えた何かをやっているのではないかと考えるのは思い過ごしの妄想であろうか。杞憂であれば幸いである。


注目浴びるドゥテルテ比大統領。「対米反逆者」の運命は? --- 井本 省吾
アゴラ 9月15日(木)16時30分配信

今、東アジアで最も注目を浴びるのは6月末にフィリピンの大統領に就任したロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)だろう。米オバマ大統領に「ケンカ」を売って、世界の目を釘付けにする外交レビューを果たした。

ドゥテルテ大統領は麻薬犯罪容疑者を7月1日からの2ヶ月間で1000人以上殺害、逮捕した麻薬犯罪容疑者は1万5000人弱に上る。容疑者が抵抗するそぶりを見せれば現場で射殺するよう警官に指示しており、強権的手法への批判が国連などで高まった。日本では考えられない強行だ。

オバマ大統領も「超法規的行為で人権無視だ」と懸念を表明した。これにドゥテルテ氏が猛反発、「(オバマ氏は)我々に敬意を持たなくてはならない。質問や疑問を投げつけるな。冗談はやめろ」と記者団に述べるとともに、フィリピン語であるタガログ語で「ろくでなし」という意味のひどい言葉で侮辱した。

オバマ氏は予定されていた米比首脳会談の開催について急遽停止を申し入れた。驚いたフィリピン側は「ドゥテルテ大統領は発言を後悔している」との声明を慌てて発表した。南シナ海で攻勢を強める中国に軍事力に乏しいフィリピンが対抗するには、米国を後ろ盾とするしかないからだ。

ところが、それもほんの束の間。ドゥテルテ氏はフィリピンの正装であるバロン・タガログという白いシャツを、第2ボタンまで開けて袖をまくり上げる「マフィアのような」スタイルが普段の姿だが、8日にラオスの首都ビエンチャンで開かれた東アジア首脳会議では、その同じ姿で米大統領バラク・オバマ(55)に向かってまくし立てた。

「米統治時代、我々の祖先は米軍にたくさん殺された。それなのに(我々が麻薬犯罪者を殺害などで裁いたことについて)何が人権だ!」

ドゥテルテ氏は100年ほど前にフィリピンを植民地化し宗主国となっていた米国の兵士が関わったとされる住民殺害の写真を、わざわざ用意して他の首脳に見せた。

12日には、フィリピン南部に常駐してイスラム過激派対策にあたっているとされる米軍の特殊部隊について「退去しなければならない」と発言し、米国を刺激した。

これほど米国の気持ちを逆なでにする発言をして大丈夫なのか。先に記したように、南シナ海で攻勢を強める中国に軍事力に乏しいフィリピンが対抗するには、米国に頼らざるうをえない。前政権はその外交姿勢だった。

だが、ドゥテルテ氏は自由自律、言いたいことを言う。自分の政治に口出しはさせない。それで通そうとして米国に冷たくされないか。日本をはじめとして、超大国アメリカの外交に依存する多くの国々の外交官はそう心配する。

冷たくされるだけなら、まだいい。米国に逆らった海外のリーダーで外交的、否、実際に殺された例は少なくない。死刑にされたイラクのサダム・フセイン元大統領、米国が直接的に手を下さないまでも、実質的に抹殺された例としてはリビアのカダフィ大佐が挙げられる。

かつては批判していた田中角栄氏を近著で「天才」 (幻冬舎)と賞賛する石原慎太郎氏は「角さんがロッキード裁判で逮捕されたのだって、勝手に中国と国交正常化したりしてアメリカの言いなりにならなかったからだ。それで米国は裁判を起こして社会的、政治的に角さんを抹殺しようとしたんだ」とテレビで発言している。

アメリカは恐ろしい。露骨に米国に反逆するドゥテルテ氏を政治外交の世界から引きずりおろす画策をする可能性は十分ある。

だが、ドゥテルテ氏には強かさ計算も感じさせる。中国は南シナ海問題でハーグの仲裁裁判所から中国の主張は根拠がないと全面的に批判され、世界的に孤立の危険にさらされている。特に米国や日本との対立している。

だから、中国にとってフィリピンが米国と冷たい関係になることは好ましく、実際、ドゥテルテ氏の言動を見て早速「話し合おう」と秋波を送っている。ドゥテルテ氏にすれば、中国から多大の譲歩を得るチャンスである。フィリピン周辺では中国はおおっぴらな侵攻をせず、漁業活動などでフィリピンの活動を全面的に認める約束をとりつける可能性もある。

また、米国は「世界の警察官ではない」と内向き志向が強まっている。新大統領にトランプ政権が誕生したなら、その傾向はさらに高まる。米国が東アジアから相対的に離れるには、フィリピンが中国に一方的にやられないよう援助することが求められる。

それらを計算している可能性は十分ある。

むろん事はそう簡単ではない。中国や米国の手練手管にがんじがらめにされ、引退させられる懸念も大きい。

だが、ドゥテルテ氏の過去の実績を見ると、自らの座を維持しながらフィリピンの国益を拡大できそうな雰囲気も感じさせる。ダークホースと言われながら、アッと言う間に大統領の座を射止めたのも、犯罪抑止などで多くの実績を積んだ彼の実行力をフィリピン国民が評価したからである。

アメリカに従順すぎる日本としては、ドゥテルテ大統領に学ぶことも多い。その行動に今後も注目して注目しすぎることはあるまい。


東アジアにおける戦略関係の転換期 - 細谷雄一 国際政治の読み解き方
ニューズウィーク日本版 9月15日(木)11時38分配信

<フィリピンのドゥテルテ大統領が「アメリカは出て行け」と言い、アメリカのトランプ大統領候補が「アジア防衛は無駄だ」と言う。これにより、アジア太平洋地域のパワーバランスが大きく動き、まずは南シナ海、その後は東シナ海の尖閣諸島を中国が掌握することさえ現実になりかねない>

「ドゥテルテ比大統領、米との軍事同盟転換を示唆」(ウォール・ストリート・ジャーナル)

 これは、今後のアジア太平洋地域のパワーバランスや安全保障環境を大きく動かしかねない、とても大きな決定だ。あまり、日本では広く報道されていないが、今後の東アジアの戦略関係を考えると、一つの大きな転換点となるであろう。

 気になるのは、ドゥテルテ大統領とトランプ大統領候補が過激な発言をするスタイルが驚くほど似ており、それが悪いスパイラルとなり、事態を予期せぬ悪い方向へと導いていくことだ。両者とも、安全保障や外交には興味もなければ、経験もなければ、残念ながら理解もない。ドゥテルテ大統領は「私は米国人が好きではない」と宣言し、他方でトランプ氏はアメリカ国民のお金を使ってアジア諸国を防衛することは無駄だと語っている。自分の国のことだけ考えることが正しいことだ、と述べることで、圧倒的な国民の支持を得ているのだ。これは、多かれ少なかれ、どこの国にも見られる現象である。6月に、イギリス国民は非効率的なEUに分担金を支払うことは、大切な国民のお金の無駄遣いだと述べていた。

【参考記事】トランプの「暴言」は、正式候補になってますますエスカレート

 つまりは、アジア諸国から「出ていけ」と言われ、アメリカ国民側も「アジアから撤退せよ」と述べているとすれば、長期的趨勢として、アメリカのアジア関与が後退していくことは、かなりの程度自然な成り行きとなるのではないか。アメリカの関与が大きく弱まった東アジアを、われわれは想起しなければならない。

 その後、ドゥテルテ大統領は、おそらくは外務省や国防省からの助言を受け入れて、自らの発言を修正するような姿勢を示している。しかしながら、フィリピン政府がどのような態度を示そうとも、アメリカの世論はこれから南シナ海で関与を深めることで中国との関係を悪化させたり、そのための財政負担を負うことによりいっそう大きな抵抗を感じるであろう。多くのアメリカ国民は、南シナ海の問題でフィリピンを支援したり、東アジアの安全保障問題に深く関わることが国益であるとは考えていない。

 その第一の影響として、南シナ海でフィリピンとベトナムが自らの領有権をこれ以上主張するのは難しくなるであろう。国連安保理常任理事国のロシアが、先日、中国政府がICJ仲裁裁定を拒絶すると述べたことを「支持する」と意見を表明した。中国政府高官はICJの裁定を「紙屑」と述べ、これから国際法や法の支配に基づいた国際秩序は大きく傷つけられるだろう。

 そのうえで、本来であればアメリカのパワーに依拠しなければならないはずのフィリピン政府が、アメリカに「出ていけ」と言っているわけなので、アメリカ政府は堂々とそのようなドゥテルテ大統領の発言に責任転嫁をして、アジアでの軍事関与を後退させる口実を得たことになる。だとすれば、アメリカが東アジアへの軍事関与を削減したことで、地域情勢が不安定化したという批判を、回避することができる。

 いま中国は、南シナ海の戦略的な要所であるスカボロー礁を掌握するうえで重要な時期に入っている。これである程度安心して、スカボロー礁を確保できるでろう。そうなると、南シナ海のほぼ全域が、中国の制空権と制海権に収まることを意味する。中国は圧倒的な戦略的優位を手に入れるのだ。

【参考記事】南シナ海「軍事化」中国の真意は

 南シナ海で制海権と制空権を確保すれば、次に中国が集中的に攻勢をかけてくるのは、いうまでもなく東シナ海の尖閣諸島であろう。国際世論からの批判や、中国が保有する公船の数の制約を考慮して、これまでは南シナ海での制空権と制海権の確保を優先してきたが、南シナ海でのそれがひと段落すれば東シナ海に行動の方向性を転換していくであろう。ロシアが中国の背後で支援をして、アメリカが「トランプ大統領」の下で日本防衛とアジア関与の関心を失えば、中国は大きな抵抗を受けることなく、尖閣諸島の奪取と領有を可能とするであろう。その際には、当然ながら、日本は歴史を直視して反省するべきだと、歴史問題としてこの問題を国際世論にアピールするはずだ。

【参考記事】中国はなぜ尖閣で不可解な挑発行動をエスカレートさせるのか

 その結果として、おそらくは10年後には、東シナ海の制空権と制海権を確保して、日本の自衛隊は容易に東シナ海で活動ができなくなるかもしれない。

 そもそも、南シナ海で中国が活動を活発化させるようになる大きな契機が、1991年にフィリピンの議会が、冷戦終結後に米軍基地を閉鎖することを求めたことだった。そして、四半世紀が立ち、再びフィリピンは国民世論に迎合して、アメリカに「出ていけ」と言っている。外交が、国民感情や世論の犠牲になるという、典型的な例かもしれない。もちろん、その背後に、中国からの圧力がフィリピンのドゥテルテ大統領に対して存在していたのだろうと予測する。

 これらのすべての動きは、日本の安全保障やアジア太平洋の戦略環境を考えると、とても悲観的にならざるを得ない趨勢だ。もしも、これから東アジアの平和を考えるとすれば、南カリフォルニア大学のデイヴィッド・カン教授が述べているように、かつての中華帝国の時代の朝貢体制に見られたような、中国を中心とした緩やかな階層的な秩序に依拠しなければならなくなるのかもしれない。そのような安全保障環境の不透明性や、不安定性を考慮して、われわれは自らの安全保障政策を考える必要がある。

※当記事はブログ「細谷雄一の研究室から」から転載・改稿したものです。

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