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2016年3月 3日 (木)

どこまで図に乗る中共支那、南シナ海にミサイル・戦闘機を配備・5

南シナ海の他国領海で横暴な侵略行為を強行している中共支那が、スプラトリー諸島のファイアリークロス礁を勝手に埋め立てて造成した飛行場へ強引な侵略飛行を行なったのに続き、今度はベトナムから強奪したパラセル諸島のウッディー島に地対空ミサイル8基を配備し、さらに対空機関砲の設置に加えて戦闘機まで進出させた。
一方でベトナムと領有権めぐって係争中のスプラトリー諸島にあるクアテロン礁などには、高周波レーダー施設を設置したことも明らかになった。

同諸島はかねてよりベトナムと中共がその領有権めぐって係争中であり、こうした地域を一方的に自国領と断言し軍事施設を建設して、支配権の既成事実化を試みる中共支那の好戦的・冒険的な侵略行為は、ベトナム・フィリピンなど近隣諸国や関係国および公海上の海上交通路(シーレーン)の安全を脅かし、いたずらに紛争の危険性を高める、国際法上認めることの出来ない危険な挑発行為である。

この中共の重大かつ危険な挑発行為に対して、アメリカなどがこうした危険な行為を停止するよう要求しているにもかかわらず、これに対して中共は「最も重要なことは(自国の設置した)レーダーなどではなく、(米軍の)戦略爆撃機や駆逐艦を含む最新兵器が日々、南シナ海に出現していることだ」として居直り、こうした一連の行為が「(自国の)主権の範囲内」と強弁している。

こうした中共の態度は、世界の秩序を完全に愚弄する思い上がり図に乗ったものであり、中共がこうした態度を改めない限り、この地域での紛争・戦争の危険は日に日に増大するものと見なければならず、その結果中共軍は敗走して共産党の威信は失墜し、国内の暴動によって中共は崩壊するだろう。

このような凶暴かつ愚劣な行為を改めなければ、招来する重大な結果について、中共支那はその一切の責任を負わなければならない。

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中共支那と支那人という種は、他人・他国・他民族との「平和共存」という概念を理解出来ない狂人(あるいは凶人)・野蛮人・テロリストである。そのことは、南シナ海でのこれらフィリピン・ベトナムだけではなく、この残忍な野蛮国が、東シナ海での他国の領土領海を奪い取ろうとする露骨な侵略行為、またもともと支那とは無関係の独立国であったチベットや先日テロ事件が発生した旧東トルキスタンの新疆ウイグル地区などにおける凶暴凶悪な行為を見れば明らかである。特に習近平現政権になってから、この好戦的で残虐な性格がさらに一層明らかになっている。

中共はまぎれもない侵略テロリスト国家である。中共が国際法を遵守するモラルを身につけない限り、世界は中共とは共存出来ない。地球人類にとっての癌である残忍で凶暴な中共支那と支那人(漢人)の、一日も早い崩壊と絶滅を切に希望する。

リンク:中国への見方を大きく変えた米国、日本は再評価 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中国軍、南シナ海の艦隊でより高度な演習を実施 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:中央軍事委員会副主席、南シナ海の島を「最近」訪問=中国国防省 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:米軍、フィリピン駐留拡大 南シナ海の合同監視「定期的」に - 速報:Yahoo!ニュース.
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リンク:中国の南シナ海要塞化を見逃す米国の凋落と歴史観 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:南シナ海問題は隠れ蓑か 虎視眈々と尖閣狙う中国 - 速報:Yahoo!ニュース.
リンク:南シナ海 さらなる軍事化を防げるか ウッディ島にミサイル、戦闘機を配備 - 速報:Yahoo!ニュース.

以下、参考のために同記事を引用

中国への見方を大きく変えた米国、日本は再評価
JBpress 4月20日(水)6時5分配信

 2016年は米国の大統領選挙の年であり、年初からワシントンDCに所在する多くの安全保障関係のシンクタンクが、台頭する中国にいかに対処すべきかに関する論文を矢継ぎ早に発表している。

 例えば、CSIS*1
の“Asia-Pacific Rebalance 2025”、CSISとSPF USA*2
共同の“The U.S.- Japan Alliance to 2030:”、ランド研究所の“The Power to Coerce”、元太平洋軍司令官デニス・C・ブレア大将のAssertive Engagement:AN UPDATED U.S.-JAPAN STRAREGY FOR CHINA(主張する関与:最新の米国及び日本の対中国戦略)などである。 これら著名なシンクタンクの中から何人かは新大統領のスタッフとして新政権に参加することになるであろう。米国のシンクタンクにとって選挙の年は大いに活躍すべき年であり、各研究者にとっても個人としての将来がかかった重要な時期である。

■ 1 停滞期に入る中国

 各シンクタンクの報告書を読みながら思うことは、中長期的な世界の動向特に中国の将来を予測することがいかに難しいかということである。2014年頃まで、中国の目覚ましい国力の上昇と米国の相対的な国力の低下が常識とされ、2030年頃には中国の国力が米国の国力を追い越すとまで予想されていた*3
。 しかし、2015年6月に始まった上海株式市場の暴落をはじめとして、最近明らかになってきた中国の経済的な不振は深刻なものであり、著名な投資家ジョージ・ソロス氏は、2016年1月のダボス会議において、「中国経済のハードランディングは不可避だ。予測を口にしているのではない。今それを目撃しているのだ」と発言して中国政府の激しい反論を受けた。

 中国政府の反論にもかかわらず、中国は今ハードランディング中であるという意見や中国崩壊論を唱える専門家が特に日本では増えてきた。

 中国崩壊とまではいかなくても、「中国経済は2014年から一貫して悪化していて、その状況は日本のバブル崩壊に似ていて、2016年の中国経済は間違いなく深刻な試練の年となろう。中国は長期停滞の10年、長い冬の時代に入っている」と主張する有名な専門家*4
もいる。 私は中国崩壊論には与しないが、中国は日本の「失われた20年」のような停滞期に入っていると思う。同じ主張を南カリフォルニア大学のダニエル・リンチ准教授がしている。

 彼は、フォーリン・アフェアーズ(FA)に掲載された「中国台頭の終焉」*5
という論考で次のように主張している。 「中国の株式市場の不調、会社の赤字増大、外貨準備高の流出は中国の経済的な不振を示す。中国共産党は、経済不振の深刻さを認識しているが、経済不振は中国崩壊まではいかない。中国崩壊をソ連崩壊と同列に考えることは適切ではない」

 「日本の1990年からの失われた20年のようなものである。日本は、株バブルと不動産バブルの崩壊によりデフレ・スパイラルに陥ったが、日本が崩壊したとは表現できないように、中国の崩壊とは表現できない」

 私は、ダニエル・リンチ准教授の意見に賛成である。

 一方、中国の李克強首相は、中国経済のハードランディングを否定し、政府発表の経済成長率6.5%以上の達成に自信を表明しているが、世界の専門家の評価との乖離は大きい。

 そもそも中国の経済に関する予測が難しいのは中国の各種データが信頼できないことに大きな原因がある。李克強首相自身、遼寧省の党委員会書記の時代に自国のデータが信用できないから、李克強指数を信頼していたと言われている。

 中国政府が発表するデータを信用しない専門家は、独自のデータで分析し、その分析結果は中国経済の未来に関して悲観的であるケースが多い。

 いずれにしろ、対中国戦略を構築するためには、中国の将来像を予想しなければいけない。本稿においては、米大統領選挙の年の12月に国家情報会議(NIC)が発表する「GLOBAL TRENDS」およびデニス・ブレア元大将(かつて国家情報長官であった)の中国分析を参考にして議論を進めることにする。

 *1=戦略問題研究所(CSIS:Center for Strategic and International Studies)

 *2=笹川平和財団USA(SPF USA:Sasakawa Peace Foundation USA)

 *3=米国国家情報会議(NIC: National Intelligence Council)、“GLOBAL TRENDS 2030”

 *4=田中直毅、「中国大停滞」、日本経済新聞出版社

 *5=Daniel Lynch、“The End of China’s Rise”、 Foreign Affairs、January 11 2016

■ 2 GLOBAL TRENDS 2030

 「GLOBAL TRENDS」は、米国のインテリジェンスの英知を集めて作成され、大統領選に勝利した次期大統領に提出されるもので、最新のものは4年前に発表された「GLOBAL TRENDS 2030」である。

 2012年末に公表されたGLOBAL TRENDS 2030は、「2030年において米国は、かつての覇権国からトップ集団の1位にとどまる」と指摘し、「圧倒的な力を背景に世界を同一の方向に向かわせてきた覇権国が存在しない2030年の世界」になると指摘している。

 そして、米国に関するシナリオとして、楽観シナリオ「再成長する米国」と悲観シナリオ「没落する米国」を提示しているが、現時点の米国の姿は「再成長する米国」であろう。

 また、各国の国力の比較予測を実施し、各国の国力を算定する2つのモデルの中で4変数モデル(GDP=国内総生産、人口、軍事費、技術投資の4つが変数のモデル)では、2030年頃に中国が米国を抜き、2048年頃にインドが米国を抜くと予測している。

 また、7変数モデル(GDP、人口、軍事費、技術投資、健康、教育、統治の7つが変数のモデル)では2042年頃に中国が米国を抜くと予想している。図1は4変数モデルでの予測を示している。

 以上の予測は4年前に発表されたのであるが、現時点でこれを評価すると、適切な分析だと評価できる部分と明らかに不適切な分析結果であると言わざるを得ないものが混在している。

 まず、「2030年において米国は、かつての覇権国からトップ集団の1位にとどまる。圧倒的な力を背景に世界を同一の方向に向かわせてきた覇権国が存在しない2030年の世界」という予測は適切であると思う。

 しかし、4変数モデルでの予測である「2030年頃に中国が米国を抜き、2048年頃にインドが米国を抜く」という分析結果を信じる者は現時点では少ないであろう。

 4年前の中国に関する予測は右肩上がりの破竹の勢いの中国であったが、今や中国は深刻な経済的危機にあり、長期停滞の冬の時代に入るとすれば、米国の国力が中国に抜かれることはないであろう。米国が2030年においてもトップ集団の1位であり続けるであろう。

 GLOBAL TRENDS 2030の一部の結論、特に米国の国力の過小評価に当初から反論してきた専門家はいた。例えば、米ハーバード大学のジョセフ・ナイ特別功労教授は早い時期から米国の没落というシナリオに対して反対し、米国の強靭さを主張してきた。

■ 3 GLOBAL TRENDS 2035

 今年12月に発表される予定の「GLOBAL TRENDS 2035」の一端を知るためには、米国国家情報会議(NIC)のホームページ*6
にアクセスするとよい。以下に示す4つのシナリオを知ることができる。 筆者が最近ハーバード大学で出会ったNICの専門家は以下のように話していた。

 「GLOBAL TRENDS 2035では図1のように主要国の国力の推移を定量的に明示することはしない。GLOBAL TRENDS 2030で提示した図1の妥当性に対する多くの批判があり、各国の国力を定量的に算出し提示することのリスクは大きい」

 「中国の各種データを信頼することができないにもかかわらず、それを使用せざるを得ないという点も大きな問題である」

 NICのホームページによると、GLOBAL TRENDS 2035のシナリオは4つであり、On the Brink(崖っぷち)、Hot & Cold(暑さ寒さ)、Trial & Error(試行と錯誤)、Feral Dogs(野生の犬)だという。非常に分かりにくい奇をてらったシナリオの表題ではあるが、その概要は以下のとおりである。

 ●On the Brink(崖っぷち)シナリオ:[大国間の紛争シナリオ]

 大国間における地政学的な競争が先鋭化し、各国政府は、攻撃的に影響圏を拡大しようとし、国家間紛争の可能性が高まる。しかし、紛争のエスカレーションのリスクや広範囲に拡大する分裂のリスクが、信頼醸成措置の構築を促すことになるかもしれない。

 このシナリオの戦略環境は、大国間の絶え間のない経済的・政治的・安全保障上の競争により、平和と戦争の崖っぷち(on the brink of peace and war)にある。

 ●Hot & Cold(暑さ寒さ)シナリオ:[気候変動の影響シナリオ]

 一連の不吉な天候予測、実際の悪天候に起因する事案および病気の発生が、これにいかに対処するかをめぐり国家間に深刻な不和を煽ることになる。場合によっては、自然災害や病気の発生が国際的な協力や対処メカニズムの発展を助長することもある。

 ●Trial & Error(試行と錯誤)シナリオ:[非国家主体の影響シナリオ]

 各国政府が経済的および政治的な諸問題を抱えている場合、各種の非国家主体(ビジネス・エリート、宗教グループ、犯罪シンジケート、過激主義者)が政府の中核機能を支配するために最新の技術を利用し、政府の形を変化させ多様な政府を作ることがある。

 多くの政府が、直面する諸問題に効率的に対処するために、そして公私のパートナーシップを通じた社会的刷新を実現するために、政府の伝統的な役割を個人やNPOに喜んで譲ることになる。

●Feral Dogs(野生の犬*7
)シナリオ:[長い期間の低成長やゼロ成長の影響シナリオ] 長い期間の低成長やゼロ成長が、世界の多くの地域で政治的な不安定さを増大させ、能力がある諸国を内向きかつ防衛的にさせ、より狭量なより分割された世界を作り出す国家主義的および重商主義的政策を採用させる。

 この時代を切り抜け、必要な経済的・政治的改革やロボット、バイオテクノロジー、3Dプリンターなどの新たなビジネス分野を追求する国々は、長期的に維持可能な経済パフォーマンスを達成するかもしれない。

 *6=https://nicglobaltrends.tumblr.com/post/141610120692/with-every-global-trends-the

 *7=野生の犬は、痩せて、いつも獲物を狙って牙をむき出しにしているイメージである。

■ 4 デニス・ブレア論文の中国認識と日米共通の対中国戦略

 本稿の冒頭で紹介した各種論文の中でブレア論文「主張する関与:最新の米国および日本の対中国戦略」を取り上げる。

 ブレア氏は、太平洋軍司令官や国家情報長官(2009年1月29日~ 2010年5月28日)を歴任し、特に国家情報長官の時にはGLOBAL TRENDSを指導する立場であった。現在69歳で日本のシンクタンクSPF USAの会長および最高経営責任者(CEO)である。

 筆者も何度かブレア氏と話す機会に恵まれたが、優れた安全保障の専門家である。ブレア氏は、米国の同盟国としての日本の重要性を理解したうえで、日米共通の対中国戦略を構築すべきであるという立場をとっている。

 ブレア論文の際立った特徴は、日米同盟関係を背景として日米共通の対中国戦略を提唱した点にある。

 ●ブレア論文の結論

 ブレア氏は、論文の結論として、米国と日本の共通の対中国戦略は「主張する関与(Assertive Engagement)*8
」であるべきだと主張している。 ブレア氏によると、日米の従来の対中政策が、中国の直接的侵略に対する軍事的抑止を維持しつつ、共通の経済的および外交的利益を促進するものであったが、その戦略は中国の活動に対して日米両国の国益を擁護するには不十分である。

 対中国政策に関しては、「関与とヘッジ」(Engagement and Hedging)という表現を使用する人が多く、ブレア氏の案も「関与とヘッジ」ではあるが、従来のような温厚な関与ではなく、より押しの強い自己主張の強い関与「主張する関与」である。

 この「主張する関与」では、中国とは協調をしつつも、双方の利害が対立する場合には公正で平和的な妥協を鍛造する(筆者注:forgeという単語が使用されているが、鉄(中国)をたたいて妥協策を作り上げるイメージである)ことにより日米の国益を擁護すると主張している。

 ●「主張する関与」の背景としての対中国認識と戦略の一端

 まずブレア論文が結論とした「主張する関与」が導き出された背景となっている、2030年までを見通した中国の未来に関する予測について説明する。

 図2は、中国の国力(経済力、軍事力など)と対外姿勢が将来に向けていかに変化するかの予測であり、X軸は対外姿勢が消極的であるか攻撃的であるかを示す。Y軸は国力が弱くなるか強くなるかを示す。

 中国の将来は、白紙的には4つのシナリオ、「強くて攻撃的(Powerful and Aggressive)」、「強くて友好的(Powerful and Benevolent)」、「弱くて攻撃的(Weak and Aggressive)」、「弱くて内向き(Weak and Inward Looking)」が考えられる。

 GLOBAL TRENDS 2035の関連で言えば、「強くて攻撃的」な中国は「On the Brink(崖っぷち)シナリオ」に、「弱くて攻撃的」な中国は「Feral Dogs(野生の犬)シナリオ」に関連している。

 *8=Assertive Engagementの訳について:英語のassertiveには、「断言的な」、「言い張る」、「自己主張の強い」などの意味があるが、本稿においては「主張する関与」と仮訳をしておく。

 以下に4つの白紙的なシナリオと最終的に対中国戦略を構築する際に前提となる基本シナリオを提示する。

 ●シナリオ1:「強くて友好的」な中国

 このシナリオは日米にとって好ましいシナリオである。中国経済は新常態に上手く移行し、短中期的に5~7%の経済成長率を達成する。

 国内的に安定し、対外的にも米国、日本、欧州と協調する。東シナ海・南シナ海の領土問題でも平和的解決を模索し、サイバー空間での情報窃取を慎み、世界の諸問題の解決に積極的に関与する。

 ●シナリオ2:「強くて攻撃的」な中国

 このシナリオは日米にとって最も危険で困難なシナリオである。中国経済はほぼ完全に市場経済に移行し、5~7%の経済成長率(少なくとも日米よりも3~4%高い成長率)を達成する。

 国内の企業が有利になるように外国企業の中国での活動を制限し、海外では重商主義的な政策をとる。国防費を増大させ、2030年には米国の国防費に迫る。

 その経済力・軍事力を活用し、中国共産党の独裁、台湾統一、チベット・新疆の統治、東シナ海・南シナ海の領土問題の要求実現をアグッレシブに追求する。日本周辺で大規模な軍事演習を実施する。

 さらにインドとの国境問題で拡大要求をし、インド洋での支配的な海洋パワーになることを追求する。

 サイバー攻撃を強化し、中国主導の経済的および軍事的な地域組織を構築し既存の国際組織に対抗する。世界の紛争地帯において中国の国益を追求する。気候変動などの国際的課題に対し自国の国益を優先する一国行動主義的な政策を追求する。

 ●シナリオ3:「弱くて内向き」な中国

 このシナリオは、中国の1975年から2000年までの状態と同じであり、日米ともに中国に脅威を感じないシナリオである。

 新常態の経済への移行に失敗し、せいぜい2~3%の経済成長率であり、国内問題(経済不振に伴う不満など)の処理に追われ、国防費も経済成長率の低下とともに削減せざるを得ない状況になる。

 国内的にはメディア・インタ-ネットの統制を強化し、共産党への反対意見を押さえつけるが、東シナ海・南シナ海の領土問題やインドとの国境問題での対外姿勢をソフトにする。国際的な機関や地域的な機関への関与を減じ、世界の紛争地域への介入を避ける。

 ●シナリオ4:「弱くて攻撃的」な中国

 このシナリオにおける中国の将来は、輝きを失った成長(2~3%以下)と国内の困難な諸問題に伴う社会秩序の維持に汲々とした状態である。

 共産党の権力を維持するために、国内の諸問題を米国および日本の責任であると非難する。チベットと新疆に対して過酷な対応をし、国粋主義的な論理に基づき領土問題などにおいて攻撃的な対外政策をとる。

 中国政府は、自国の弱さを認識しているため、日本や米国との全面戦争を求めはしないが、戦争一歩手前まで挑発を繰り返す。

 台湾、東シナ海・南シナ海、インドとの国境において挑発的だが制限された行為で緊張を高める。世界の諸問題の解決において、日米の国益を棄損するような挑発的で愛国主義的な政策を採用する。

 ●対中国戦略を構築するための基本シナリオ

 白紙的にはメリハリの利いた上記4つのシナリオが考えられるが、日米共通の対中国戦略構築のための基本的シナリオは以上4つをミックスしたものとして考える。

 その基本シナリオによると、中国共産党の権力掌握は継続し、その経済成長率は3~4%であり、中国が世界一の経済大国である米国を凌駕することはない。国防費の増加率は、現在のレベルを維持する可能性はあるが、現在の10%の伸び率から3~4%の伸び率に低下する。

 結論として、図3の濃い小さな楕円が示す基本シナリオに基づいた位置にある将来の中国を前提として対中国戦略を考える。なお、大きな楕円は基本シナリオの振れ幅を示すが、「強くて攻撃的」なシナリオに近づいてくる。

 次いで、中国に対していかに対処するかの選択肢であるが、ブレア氏は図3に示す4つの選択肢を提示している。

 つまり、「外的バランシング(External Balancing)」、「内的バランシング(Internal Balancing)」、「制度への取り込み(Institutionalization)」、「安心の保証(Reassurance)」である。

 ●「外的バランシング」とは、中国の影響力に対抗するために日米が他の国々と協力するか、中国と対立する他の国々の能力強化を手助けすること。例えば、日米が、インド、オーストラリア、南西アジア諸国と協力することである。

 ●「内的バランシング」とは、日米のそれぞれの国の政治的・軍事的能力を増強することにより、中国の影響力を相殺し、その侵略を抑止・撃退すること。例えば、防衛費の増加、在日米軍を作戦コマンドに格上げすること、民間飛行場を軍民共用にすることなどである。

 ●「制度への取り込み」とは、中国と協力的でウィンウィンの経済的関係を促進することである。中国のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)加入やアジアインフラ投資銀行(AIIB)への日米の協力などである。

 ●「安心の保証」とは、軍事的及び外交的措置で、共通の課題解決のために中国の協力を促進することである。例えば、中国と共同して人道的支援や災害派遣演習を実施することである。

 図3は、中国の将来の動向に応じて、「制度への取り込み」や「安心の保証」も活用されるが、主として外的バランシングと内的バランシングが多用されることを示す。

 なお、内的バランシング、外的バランシングという用語は国際政治のバランシング理論の中で普通に使われている用語である。

 簡単に表現すると、自らの努力(防衛費の増加、安全保障法制の整備、経済成長など)で対処する「自助」と同盟国や友好国との協力により対処する「共助」という表現になる。内的バランシングが自助であり、外的バランシングが共助である。

 公助が存在しない国際システム(アナーキーな国際システム)において、自らの安全確保のためには自助努力が前提であり、自助だけでは足りないところは周辺諸国との協力による共助で対処することになる。

 通常は、日米同盟によるバランシングは外的バランシングに分類されるが、ブレア氏は、日本と米国が共同して中国に対処することを強調するために、日米によるバランシングを内的バランシングで説明している。

 この点はブレア論文の「日米共同の戦略」という特徴がよく出ている。なお、ミアシャイマー教授は、「外的バランシングは、脅威を受けた側の国々がまとまって防御的な同盟を結成し、危険な敵を封じ込めることであり、二極化した世界だけに起こる」と主張している*9
。 ●「主張する関与」の5つの政策

 ブレア氏が提唱する「主張する関与(Assertive Engagement)」の5つの政策であるが、詳しくは次回のリポートで報告する。

 ●中国に対するより統合された米国および日本の戦略
●より強い米国および日本の経済
●中国との現実的な経済関係
●より強力な日米協同の軍事力
●東シナ海および南シナ海における中国の侵略への対処

 *9=ジョン・ミアシャイマー、「大国政治の悲劇」、P223、五月書房

■ 結言

 中国が現在陥っている経済的危機の深刻さは、GLOBAL TRENDS 2030で予想された中国の破竹の勢いの国力の増強が実現しないことを意味する。

 様々な中国に対するシナリオを紹介してきたが、私の中国に対する評価は「手負いの龍」のイメージである。

 経済的苦境にある手負いの熊であるロシアがクリミア併合やシリアでの軍事行動などの問題行動を引き起こしているように、手負いの龍である中国も攻撃的な対外政策をとる可能性がある。

 ダニエル・リンチ氏が「中国台頭の終焉」で指摘するように、「中国台頭の終わりは、日本の台頭の終わりが日本のエリートたちを傷つけた以上に中国共産党を傷つけるであろう。国粋主義的な軍人や野望に満ちた外交の戦略家たちは強圧的で不快な外交政策に明らかに関心を持っているが、それらの政策により中国の状況を支え切れるものではない」のである。

 一方、中国の台頭以降、世界の日本に対する注目度は極度に低下していたが、最近発表された論文などに共通的に見られるのが、米国の対中国戦略において日本を高めに再評価する動き、日米同盟を再評価する動きである。

 この日本に対する評価の上昇と中国に対する評価の低下は注目すべき現象であることを強調したい。

 かかる状況下でいかなる対中戦略を構築するかが私のテーマである。幸いにもワシントンDCに所在するシンクタンクが対中国戦略に関して各種の提言をしている。

 本稿では主として、デニス・ブレア大将の論文を中心に記述してきたが、次回はブレア論文の細部とともに、各シンクタンクが提唱する対中国戦略について、本稿の続編として記述してみたいと思う。


中国軍、南シナ海の艦隊でより高度な演習を実施
ロイター 4月18日(月)13時12分配信

[北京 17日 ロイター] - 中国人民解放軍(PLA)の機関紙「解放軍報」は、南シナ海に展開する艦隊の効率を高めるため、実際の戦場に近い環境を再現し、より高度な次元の演習を行ったとする記事を掲載した。

演習は7日に始まり、電磁環境下の訓練など、新手法が盛り込まれたという。実施場所は明らかにされなかった。

これまでにも、パイロットの訓練のため、全天候型の演習や視程外、低空・高速飛行などの演習を行っている。

今後も、24時間海上攻撃など様々な戦略についての演習が行われる予定で、他の軍部隊とも協力していくと記事は述べている。


中央軍事委員会副主席、南シナ海の島を「最近」訪問=中国国防省
ロイター 4月15日(金)19時1分配信

[北京 15日 ロイター] - 中国国防省は、同国軍制服組トップである範長龍・中央軍事委員会副主席が南シナ海の一部の島や岩礁を「最近」訪問したことを声明で明らかにした。具体的な訪問先は明らかにしていない。

南シナ海では、中国による人工島の造成で領有権をめぐり近隣諸国との緊張が高まっている。同省は、一帯に拠点を置く軍と謁見し建設作業を視察することが目的だとしている。

一方、カーター米国防長官は訪問中のマニラで同日、南シナ海を航行中の米航空母艦に搭乗。中国は神経をとがらせているとみられる。


米軍、フィリピン駐留拡大 南シナ海の合同監視「定期的」に
ロイター 4月14日(木)19時17分配信

[マニラ 14日 ロイター] - フィリピンを訪問中のカーター米国防長官は14日、米軍兵士と軍装備品を定期的にフィリピンに送る方針を示すとともに、両国が合同で南シナ海の監視を開始したことを明らかにした。

兵士らの輪番での派遣は、恒久的な駐留の拡大を避けるためだが、南シナ海で領有権を主張する中国への懸念を背景に、両国が安全保障面での協力を強化していることを示す。

米国防総省は、南シナ海でのフィリピンとの合同監視の1回目を3月、2回目を今月上旬に実施。今後は「定期的」に行うとしている。

カーター長官は、記者団に対し「アジア太平洋諸国は南シナ海での中国の大規模な岩礁埋め立てや軍事拠点化に懸念を表明している」と指摘した。

同省によると、現在実施中のフィリピン軍との合同演習後に一部兵士が同国に残るという。


フィリピンとベトナム、南シナ海の合同監視など協議へ
ロイター 4月14日(木)15時32分配信

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 4月13日、ベトナムとフィリピンの国防当局者が今週、合同演習や南シナ海の合同監視の可能性について協議を行う。軍関係者が明らかにした。写真は、中国が人工島を建設している南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁。5月代表撮影(2016年 ロイター)

[マニラ 13日 ロイター] - ベトナムとフィリピンの国防当局者が今週、合同演習や南シナ海の合同監視の可能性について協議を行う。軍関係者が明らかにした。

関係強化は、中国が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島に人工島を造成するなど領有権主張を強めていることに対応するため。

ただ、ある軍幹部は匿名でロイターに、今週の協議で交渉が成立する公算は小さいと指摘。「これは初期の協議。時間がかかるかもしれないが次の段階に進みたいと考えている」と述べた。


中国、G7外相声明めぐり各国大使館に不満表明
ロイター 4月13日(水)20時16分配信

[北京 13日 ロイター] - 主要7カ国(G7)外相会合が、南シナ海および東シナ海での中国の行動に強く反対すると表明したことを受けて、中国政府はG7各国の駐中国大使館幹部に不満を表明した。外務省の陸慷報道官が定例記者会見で明らかにした。

広島で行われたG7外相会合は中国に無関係と認識していたが、公表された声明に「誤りや不適切」な箇所があることを発見し、中国の立場を明確にする必要が生じたと説明した。

「われわれは関係国の大使館幹部を呼んで、この問題に関する我が国の立場を示した」と述べた。これまで中国が表明してきたことを伝えたとしている。


「G7に強烈な不満」中国が談話発表 海洋進出巡る声明受け
西日本新聞 4月13日(水)17時8分配信

 中国外務省の陸慷報道局長は12日、中国の海洋進出を念頭に「威圧的、挑発的な一方的な行動」に強い反対を表明した先進7カ国(G7)外相会合の声明に関し、「G7に強烈な不満を表明する」との談話を発表した。

 中国の王毅外相はG7外相会合に先立ち、北京を訪れた英独外相に南シナ海問題を議題に取り上げることに反対すると伝えていた。対中けん制に動く議長国の日本にも不快感を募らせているとみられ、調整中の岸田文雄外相の訪中に影響を与える可能性もある。

 陸氏は、南沙諸島周辺の人工島造成について「完全に中国の主権の範囲内だ」と強調。フィリピンがオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に申し立てた仲裁手続きを念頭に「いかなる仲裁案も受け入れない」とした。その上で、G7は経済問題に焦点を当てるべきだと指摘し、「海の問題をあおり、地域の矛盾を引き起こすべきではない。一切の無責任な言動をやめるよう促す」と批判した。

 また、海上自衛隊護衛艦が南シナ海に面したベトナム・カムラン湾に初寄港したことについて、陸氏は12日の記者会見で「第三国をにらんだものなら地域の平和と安定に不利益であり、中国に関わりがあるならば必ず反対する」と述べた。

=2016/04/13付 西日本新聞朝刊=


中国に「静かな圧力」…護衛艦初のベトナム寄港
読売新聞 4月13日(水)9時4分配信

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12日、ベトナム南部カムラン湾国際港に寄港する海自護衛艦「ありあけ」=児玉浩太郎撮影

 【カムラン(ベトナム)=児玉浩太郎、パダン(インドネシア)=池田慶太】海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が12日、南シナ海に臨むベトナム南部のカムラン湾国際港に寄港した。

 日本の護衛艦による寄港は初めてで、周辺海域の軍事拠点化を進める中国に対し、静かに圧力をかける意味合いがある。

 両護衛艦の乗組員はカムラン湾国際港の桟橋で、ベトナム海軍関係者らの出迎えを受けた。部隊を指揮する第15護衛隊司令の森下治1等海佐は歓迎式典で「ベトナム海軍との親善に努めたい」と述べた。「ありあけ」の艦内を地元メディアに公開し、友好ムードも演出した。

 カムラン湾はベトナムが中国と領有権を争うスプラトリー(南沙)諸島に近く、戦略的要衝とされる。ベトナム戦争では米軍の補給基地となり、戦争終結後も旧ソ連の重要な軍事拠点となった。ベトナム政府は外国船の入港を制限しているが、中谷防衛相が昨年11月に訪越した際、海洋進出を活発化させる中国に対し、日越両国が共同して対処することで一致。具体策の一環として海自艦を寄港させることになった。


海自艦、ベトナム要衝寄港 カムラン湾 南シナ海、対中連携
産経新聞 4月13日(水)7時55分配信

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カムラン湾(写真:産経新聞)

 【シンガポール=吉村英輝】練習航海中の海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が12日、南シナ海に面するベトナムの軍事要衝カムラン湾の国際港に寄港した。在ベトナム日本大使館によると、海自艦船が同湾に入港したのは初めて。

 カムラン湾は、中越などが領有権を争うパラセル(中国名・西沙)、スプラトリー(南沙)両諸島に比較的近い。寄港は、日本とベトナムが連携し、人工島建造などで南シナ海の軍事拠点化を進める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。寄港中、共同操艦訓練などを行う。

 カムラン湾は冷戦期には旧ソ連が東洋最大の海外拠点を構え、2002年のロシア軍撤退以降はベトナム海軍が基地を置くが、外国船の入港は厳しく規制されていた。

 昨年11月、中谷元・防衛相とベトナムのフン・クアン・タイン国防相(当時)が、カムラン湾への海自艦船寄港で合意。同湾に今年3月、外国の大型艦船や民間船舶が利用できる国際港が開港し、今回の寄港が実現した。

 中谷氏は12日の記者会見で、「わが国にとって南シナの航行の自由やシーレーン(海上交通路)の安全確保は重要な関心事項だ」と指摘。「今後も米国や豪州とも連携しつつ、南シナ海周辺国との関係強化に向けた努力を積み重ねたい」とも強調した。

 一方、中国外務省の陸慷報道官は12日の定例記者会見で、中国を念頭に置いた行動であれば「反対せざるを得ない」と牽制した。


中国の脅威に東南アジア諸国が「頼みの綱は日本」
JBpress 4月13日(水)6時10分配信

 東南アジアで中国の膨張を抑える中心的存在として日本の安全保障面での活動に今や大きな期待がかかっている──。

 米国の大手研究機関のベトナム系米国人学者がこのほど発表した論文によると、東南アジアにおいて日本の影響力拡大が広く歓迎されるようになってきているという。

 同論文は、そうした日本の影響力拡大を安倍晋三首相による外交政策の成果として高く評価し、中韓両国以外のアジア諸国から安倍外交がきわめて前向きに受けとめられている実態を映し出した。

■ 評価され歓迎されている安倍政権の外交政策

 3月後半、ワシントンの大手シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」のフォン・グエン研究員は、「東南アジアは日本の安倍ドクトリンの旋律に協調する」と題する論文を発表した。グエン氏はベトナム系米国人の女性学者で、ベトナムをはじめ東南アジア諸国の米国や中国に対する政策などについて研究を重ねてきた専門家として知られる。

 まずグエン氏は、日本が今「東南アジアで他に比類のないほど高い人気を保っている」と強調し、東南アジア各国の政府や国民から日本が非常に好感をもたれていると説明する。

 その根拠の1つとしてグエン氏が挙げるのが、2015年に東南アジア4カ国を対象として実施した世論調査で「日本に好感を抱く」と述べた人が全体の80%以上だったという結果だ。

 グエン氏はさらに安倍外交の成果などを次のように指摘していた。

 ・安倍晋三氏は2012年12月に首相に再就任して以来、東南アジアの多数の諸国と緊密な安全保障の協力を築く政策を積極的に推進してきた。その結果、この地域での日本の影響力は非常に堅固となり、さらに勢いを増している。

 ・安倍政権は、特に南シナ海で中国との領有権紛争を抱えたフィリピンやベトナムという諸国にまず重点を置いて安全保障上の協力を拡大してきた。同時に、ラオスや東チモールという小国との関係も強化してきた。

 ・安倍首相は、日本が東南アジアで年来築いてきた経済的な基盤の上に確固たる地政学的な土台を構築することを意図している。そのために、日本は米国との防衛関係を強めると同時に、東南アジア諸国が安保面で相互連帯を強化できるよう支援してきた。

 ・南シナ海や東シナ海で中国が膨張政策を続けている。それに対して日本は、有志連合諸国の連帯を強めることで膨張の阻止を図ろうとしている。そのために日本は東南アジア諸国との合同演習も実施している。

 ・日本の自衛隊は最近、フィリピン、インドネシア、ベトナムとの合同演習を進めている。さらにベトナムの戦略的拠点にも自衛隊艦艇を寄港させる計画がある。日本は長年自己規制していた国際的な安全保障活動を東南アジアで拡大し始めた。

 グエン氏はさらに、日本が、中国との紛争に悩まされるべトナムやフィリピンなどに安全保障面で援助するだけに留まらず、東南アジア全域でのインフラ建設の推進や支援という経済面での活動も長期的な計画で進めている、と指摘した。同氏によると、日本のこうした経済面での動きは、中国側が「一帯一路」と名付ける「新シルクロード」構想に対抗する東南アジアとの連帯政策だとみなされている。

■ アジアの安全保障体制はどう変わるのか

 安倍政権のこうした東南アジアに対する安全保障主体の新たな関与政策の方針を、グエン氏は「安倍ドクトリン」と呼ぶ。

 また、グエン氏は本論文で、東南アジアをはじめとするアジア全体の安全保障が今後20年、30年という長期展望でどのような枠組みになるかという予測を、以下のような複数のシナリオとして提示した。

 (1)米国とアジア諸国の同盟関係が主体であることは変わらないが、米国は軍事、経済の両面で関与の規模を減らしていく。

 (2)中国が圧倒的なパワーで拡大を続け、東南アジア諸国も中国の影響下に入り、対中協調姿勢を強めていく。

 (3)東南アジア諸国が自主的に軍事や経済の力を強め、地域の安全保障の主役となる。

 (4)日本が中心的な役割を果たし、米国との連携を保ちながら、東南アジア諸国との協力をますます強めていく。

 グエン氏は以上のシナリオのなかで、東南アジア諸国が求めるのは(3)だが、その場合にも日本の関与や協力が不可欠であり、実際には(4)が最も現実的だとしていた。

■ 日本の関与が東南アジアに自信と一体感を与える

 グエン氏は総括として、日本の東南アジアへの深い関与が現在も同地域の諸国から歓迎されている点を、以下のように強調する。

 「東南アジア諸国は、日本の東南アジアへの積極的な関心と関与が自国にとって大きなプラスになると歓迎している。日本が安全保障と経済の両面で連携を強化することは、東南アジア諸国に自信と一体感を与える。これにより、日本にとっては、自国を利する大きな機会が開けることになる。アジア、太平洋地域でこれからの国際秩序を形成することは特に日本にとって重要だろう」

 日本の外交政策論議で語られることの少ない東南アジア政策が、米国で東南アジアの立場を代表するような学者から高い評価を受けている。我々もこの事実は注視すべきであろう。


中国がG7外相声明を非難 領有権問題めぐり
BBC News 4月12日(火)16時16分配信

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中国がG7外相声明を非難 領有権問題めぐり

中国外務省は12日、主要7カ国(G7)広島外相会合が南シナ海などでの領有権問題について出した声明について、「無責任な発言をやめるべきだ」とするコメントを発表した。

海洋安全保障に関する声明で外相たちは、緊張を高めるかもしれない「あらゆる威嚇的、威圧的または挑発的な一方的行動」に反対した。

中国は南シナ海、東シナ海のほぼ全域に対して領有権を主張しており、同じく領有権を主張する近隣諸国と摩擦が起きている。

中国は南シナ海で人工島の造成も進めており、専門家は、中国が人工島を徐々に軍事拠点化しているかもしれないと衛星写真からうかがわれると指摘している。

G7メンバーの米国、英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本の7カ国は中国を名指ししなかったものの、声明ですべての国に対し、土地埋め立てや「軍事目的」の拠点構築など、安定を脅かすか現状を変更し得る「行為を控えるよう」呼びかけた。

またG7外相たちは、領有権をめぐる紛争が「信義誠実及び国際法に従い」解決されることを求めた。

これに対して中国外務省の陸慷報道局長は、同国が主張する領有権は正当だとあらためて反論。

陸慷局長は、外相らが「無責任な発言、無責任な行動をやめ、地域の平和と安定のため本当に建設的な役割を果たすべきだ」と語った。

(英語記事 China voices anger at G7 comments on disputed islands)

海自護衛艦、ベトナム南部に寄港…中国をけん制
読売新聞 4月12日(火)11時18分配信

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12日、ベトナム南部カムラン湾国際港に寄港する海自護衛艦「ありあけ」=児玉浩太郎撮影

 【カムラン(ベトナム南部)=児玉浩太郎】海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が12日、南シナ海に臨むベトナム南部のカムラン湾国際港に寄港した。

 海自護衛艦の同湾への寄港は戦後初めてで、ベトナム海軍との交流を主目的としている。ベトナムが中国と領有権を争うスプラトリー(南沙)諸島に近い戦略的要衝への寄港により、同諸島などで人工島の軍事拠点化を急速に進める中国をけん制する狙いもある。

 護衛艦2隻はフィリピン・スービック港に3日に寄港した後、カムラン湾へ向かっていた。


海自艦、越要衝に初寄港=中国けん制へ連携アピール
時事通信 4月12日(火)11時3分配信

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練習航海中の海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」(写真)と「せとぎり」が12日、南シナ海に面したベトナム南部カムラン湾の国際港に寄港した。

 【カムラン(ベトナム南部)時事】練習航海中の海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」が12日、南シナ海に面したベトナム南部カムラン湾の国際港に寄港した。

 中越などが領有権を争う南沙(英語名スプラトリー)、西沙(パラセル)両諸島にも比較的近い軍事上の要衝であるカムラン湾に、海自艦艇が入港したのは初めて。

 南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制するため、日越両国の連携をアピールする狙いがある。中谷元防衛相は談話を発表し、「南シナ海が安全であり続けることは、地域や世界の平和と安定にとって非常に重要だ」と強調。ベトナム海軍との関係を強化し、日本として地域の安定に貢献する考えを示した。

 4日間の寄港中、両国関係者の交流や海上での衝突回避訓練などを行う。こうした動きに対し、中国の反発も予想される。


G7外相会合、東・南シナ海での挑発行為に反対表明
ロイター 4月11日(月)16時1分配信

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 4月11日、先進7カ国(G7)外相会合は、領有権をめぐり中国がフィリピンやベトナム、日本などと対立する南シナ海および東シナ海での挑発行為に強く反対すると表明した。写真はG7の会合に参加する外相。厳島神社で10日撮影(2016年 ロイター/Jonathan Ernst)

[広島 11日 ロイター] - 先進7カ国(G7)外相会合は11日、領有権をめぐり中国がフィリピンやベトナム、日本などと対立する南シナ海および東シナ海での挑発行為に強く反対すると表明した。

「われわれは現状を変え、緊張を高める可能性のある威圧的で挑発的な一方的行為に強い反対を表明する」との声明を発表した。

また中国とフィリピンの領有権争いを念頭に、各国に対し、国際海事法を順守し、裁判所の判断に従うよう求めた。

南シナ海で領有権を中国と争うフィリピンは、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に仲裁を申し立てており、判断は6月までに下される見通し。


ターンブル豪首相が来週訪中へ、経済界から1000人超の代表団同行
ロイター 4月8日(金)19時21分配信

[シドニー 8日 ロイター] - オーストラリア政府は8日、ターンブル首相が来週、中国を訪問する、と発表した。訪中には経済界から1000人以上の代表団が同行する予定。自由貿易協定(FTA)発効を受けて、一段の関係強化を目指す。

発表によると、ターンブル首相は北京で、習近平国家主席、李克強首相と会談する。南シナ海が議題になるのかどうかには触れていない。

南シナ海などへの海洋進出を進める中国の動きに対しては、中国の近隣国のほか西側諸国の間でも警戒感が強まっており、ターンブル首相も先月、南シナ海における中国の軍事的な動きについて批判している。

オーストラリア首相府は声明で「中豪FTAの発効を受けて、両国間の通商およびその関係において、一段の機会が生まれた」と指摘。「中国が消費、サービス経済に移行する中、オーストラリアの企業は中国で新たな市場、新たなチャンスを見出している」との見方を示した。


【社説】在日米軍、米国民には安い買い物
ウォール・ストリート・ジャーナル 4月8日(金)16時27分配信

 日本で先週、集団自衛権の限定行使などを可能にする安全保障関連法が施行された。これにより、たとえ日本が標的とされていない場合でも、米軍が攻撃を受ければ日本の自衛隊が防衛で協力することができるようになった。これは、共和党の大統領候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏が米国の同盟諸国を非難し、西太平洋からの米軍撤退を提案する際に見落としている重要な事実のひとつである。

 トランプ氏は先月、米国は日本と韓国の「面倒をみているが、(その見返りとして)何も得ていない」と発言した。同氏は米国が日韓両国とそれぞれに締結している安全保障に関する条約の再交渉もしくは破棄を訴えている。これらの条約は5万人規模の在日米軍と2万8000人規模の在韓米軍を配備する根拠となっている。

 だが、これらの条約は一方的なわけでも、米国が負担しきれない取り決めでもない。日本と韓国は現在、駐留米軍経費の半分近くを負担している。年間で日本は約20億ドル、韓国は約9億ドルだ。仮に日韓から駐留米軍が撤退すれば、米国の納税者の負担は増えるだろう。しかも、壊滅的な戦争が起きてきた地域の平和と繁栄を数十年間にわたって持続させてきた価値を抜きにしてだ。

 太平洋における米軍の4大建設プロジェクトは日韓両国が300億ドル超を負担しているため、米国の納税者の負担はわずか70億ドルに過ぎない。トランプ氏は建設に関わる人間として、そのことを知れば関心を持つかもしれない。米太平洋軍の2015年4月の記録によると、韓国のキャンプ・ハンフリーズ(韓国平澤市)では2017年までに在韓米軍のほぼすべてを集約させるために拡張工事が進められているが、110億ドル近くに上る建設費用の93%を韓国側が負担している。 

 日本は岩国の米海兵隊航空基地の必要経費約50億ドルのうち94%を負担しているほか、普天間基地の移転にかかる約120億ドルを全額負担している。日本はさらに、米領グアム島の新基地に必要な経費30億ドルの36%をあらたに負担している。

 韓国は国内総生産(GDP)の約2.5%を防衛費に充てている。米国の3.5%を下回るものの、GDP比で世界トップ10に入る。徴兵制を採用している韓国軍は北朝鮮の核兵器や長距離ミサイルを阻止するための最前線に立っている。冷戦時代、日本は西側諸国にとって、太平洋を潜航するソ連の潜水艦に対する防衛の要だった。今日では、東アジアにおける中国の台頭に対抗するうえで重要な砦(とりで)となっている。

 GDP比1%という防衛費はあまりに少ないが、日本は4年連続で防衛予算を増やしている。改革論者の安倍晋三首相は米国、東南アジア、オーストラリア、インドとの関係を築いてきた。これがなければ中国は地域の覇権を楽に掌握することになろう。

 多大な政治的犠牲を払ったうえで、安倍政権は憲法解釈を変更し、集団的自衛権の限定行使を可能にする新たな法律の施行に道を開いた。日本は今や、北朝鮮のミサイルから米国を守ることができる。南シナ海で米軍の艦船がパトロールを行っている際には、中国の政策立案者らは常に日本の海上自衛隊のことも念頭に置かなければならなくなった。

 安倍首相とシンガポールのリー・シェンロン首相はここ数日の間に、アジアにおける米国の役割を称賛し、近視眼的な撤退がもたらすダメージについて警告した。米国民はこれらの国がフリーライダー(ただ乗りする人)ではないことと、アジアでの前方展開が米国の安全保障にとって重要であることを理解しなくてはならない。


日米比越4カ国で中国を威嚇 海自護衛艦の“歴史的”寄港で南シナ海「対中包囲網」
夕刊フジ 4月7日(木)16時56分配信

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海自護衛艦「いせ」(写真:夕刊フジ)

 日米両国が、フィリピンやベトナムとともに、南シナ海で軍事的覇権を強める中国を封じ込める動きを見せている。米原子力空母「ジョン・C・ステニス」が同海に展開するなか、海上自衛隊の護衛艦や潜水艦がフィリピンに寄港したのだ。護衛艦はベトナムにも向かう。海自最大級のヘリコプター搭載型護衛艦「いせ」も近く、フィリピンに寄港予定で、南シナ海の「航海の自由」を断固守る覚悟といえそうだ。

 海自の護衛艦「ありあけ」「せとぎり」と、練習用潜水艦「おやしお」は3日、南シナ海に面したフィリピン・ルソン島のスービック港に入港した。日本の潜水艦のフィリピン寄港は15年ぶりという。

 スービックは、アジア最大の米海軍基地が1991年まで存在した良港であり、中国は米軍撤退後、フィリピンも領有を主張していたミスチーフ(中国名・美済)礁に勝手に軍事施設を建設した。

 中国による「南シナ海」支配の野望を実感させる港に、海自艦船が寄港したことは、各国メディアも注視している。

 ロイター通信は先月、「艦艇の寄港は受け入れ国と親密な関係にあることを示すことになり、南シナ海でフィリピンと領有権を争う中国への牽制(けんせい)につながる」と事前に報じた。

 AFP通信は3日、「この港は中国とフィリピンが領有権を争うスカボロー(同・黄岩島)礁から200キロの位置にある」としたうえで、フィリピン海軍の報道官の「今回の寄港は、地域の平和や安定の持続的促進および近隣諸国の海軍との協力強化が目的」との発言を伝えた。

 これだけではない、海自が誇るヘリ搭載型護衛艦「いせ」が今月中にも、スービック港に寄港する。同艦は、全長197メートル、全幅33メートル、基準排水量1万3950トン。乗員350人。200メートル近い全通甲板を備え、最大11機のヘリコプターが搭載可能だ。海自護衛艦の中でも屈指の哨戒ヘリ運用能力を持ち、潜水艦への警戒・監視活動に威力を発揮する。

 「いせ」は、今月12~16日の日程でインドネシアのパダンで開かれる多国間共同訓練「コモド」や国際観艦式に参加し、捜索・救難訓練や指揮所訓練などを行う。その後、南シナ海に入り、米海軍とフィリピン海軍との共同訓練を行う方向だ。

 さらに注目すべきは、「ありあけ」と「せとぎり」がフィリピン寄港後、日本の護衛艦として初めてベトナム・カムラン湾に寄港することだ。

 カムラン湾は、中国が覇権を強める南シナ海・パラセル(同・西沙)諸島や、同・スプラトリー(同・南沙)に近い軍事的要衝である。

 海自幹部は「特定の目的で(寄港地を)選んだわけではない」というが、西アジアの安全保障のために、日本と米国が、フィリピンやベトナムと連携して、中国を牽制・包囲する狙いが伝わる。

 世界の最重要シーレーンである南シナ海について、中国の習近平国家主席は昨年9月、オバマ米大統領との米中首脳会談で「南シナ海を軍事拠点化する意図はない」と語っていた。ところが、地対空ミサイルや対艦巡航ミサイルを配備した後に行われた先月31日の同会談では、習氏は「中国の主権を侵害する行為は許さない」と開き直った。

 中国の暴走を止められないのか。

 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「南シナ海の『航行の自由』が保障されなければ、世界経済の深刻なダメージとなる」といい、続けた。

 「米中首脳会談に合わせて、米国は空母『ジョン・C・ステニス』を派遣して中国に圧力をかけたが、首脳会談は平行線に終わった。海自護衛艦のベトナム寄港は歴史的な出来事だ。日本の安全保障政策は新たなステージ入った。日米とフィリピン、ベトナムの4カ国による『対中包囲網』が形成されるとみていい。これにインドネシアも加わる可能性がある」


流れを変えるか?海自潜水艦がフィリピンに寄港
JBpress 4月7日(木)6時10分配信

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フィリピン・スービック海軍基地の全景(出所:Wikipedia)

 4月3日、海上自衛隊の練習潜水艦「おやしお」が駆逐艦「ありあけ」と「せとぎり」とともにフィリピンのスービック軍港に到着した。

 フィリピンやアメリカでは、これら海上自衛隊艦艇のフィリピン訪問は、自衛隊とフィリピン軍の関係強化とともに、スービック港の直近とも言える南シナ海海域で猛威を振るう中国海洋政策に対する日本側の牽制行動として歓迎されている。

 スービック港親善訪問のあと、2隻の駆逐艦は、フィリピン以上に中国海洋戦力に圧迫されているベトナムを代表する軍港カムラン湾に向かう。海上自衛隊駆逐艦がカムラン湾海軍基地に寄港するのは、今回が初めてとなる。

■ 海自の行動を高く評価する米海軍戦略家たち

 今回の海上自衛隊艦艇によるスービックならびにカムラン湾訪問について、あるアメリカ海軍戦略家は、「海上自衛隊艦艇のスービック寄港は、海上自衛隊とフィリピン海軍にとって記念すべき日となった。アジア太平洋海域での戦略環境に対しても歴史的なインパクトを持つ日なるであろう」と高く評価している。

 アメリカはオバマ政権下での大幅な国防費削減によって、南シナ海への覇権主義的海洋侵出政策を推し進める中国に自らの海洋戦力だけでは対抗しきれなくなり、同盟国の戦力を活用する方針に転じている。だが、南シナ海に面するアメリカの同盟国フィリピンの海洋戦力はゼロに近い。そのためアメリカが強力にバックアップしなければならない。ところが、かつてフィリピンに大規模な海洋戦力(海軍、空軍、海兵隊)を配備していた時代と違い、そのような大規模戦力をフィリピンに展開させる余裕はアメリカにはない。そこで、オーストラリアや日本に積極的に南シナ海問題へ関与するとともに、フィリピンとの同盟関係を強化するように期待し、働きかけを強めているのである。

 日本は、このような状況下でスービック軍港とカムラン湾海軍基地に潜水艦と駆逐艦を派遣したのである。スービック軍港は、南沙諸島で軍事紛争が起きた際にフィリピン海軍とその同盟軍の出撃拠点となる。また、カムラン湾海軍基地は、南沙諸島や西沙諸島での軍事紛争に際してはベトナム海軍とその同盟軍の出撃拠点となる。アメリカ海軍が、「日本政府が本腰を入れて、中国と対決してでも南シナ海を中国の思い通りにはさせまいという態度を具体的に表明した」と理解するのも当然と言えよう。

 日本による“勇気ある”艦艇派遣は、自衛隊とフィリピン軍ならびに自衛隊とベトナム軍の関係強化の第一歩であり、ひいては、ベトナム、フィリピン、マレーシアをはじめ日本、アメリカそれにオーストラリアなどを含む、南シナ海における“対中牽制網”確立への力強い意志表示となったと高く評価されている。

■ 腰が引けているオバマ政権

 海自艦艇のスービック軍港とカムラン湾への親善訪問をアメリカ海軍関係者たちが高く評価しているのには、もう1つの“アメリカ側”の事情もある。

 中国が南シナ海での軍事的優勢を確実にさせつつある昨年秋になって、アメリカ政府は遅ればせながら「南シナ海を中国に独占させない」との軍事的示威行動を開始した。「FONOP」(公海における航行自由原則維持のための作戦)と呼ばれる軍事的デモンストレーションである。

 ただし、対中融和的なオバマ政権は、アメリカ海軍戦略家たちの要望通りに積極的にFONOPを実施させることには躊躇しており、2015年10月と2016年1月にFONOPの実施を海軍に許可しただけである。

 そして、前回から3カ月ほど経った4月に第3回目のFONOPが実施されるとの報道がなされた。正確な日時と、どの環礁の十二海里内海域に軍艦や航空機が派遣されるのかは明らかにされていないが、少なくとも3回目のFONOPが南シナ海(それも中国が主権を主張し他国との間で領有権紛争中の島嶼環礁周辺海域)で実施されることを、米政府関係者がメディアに提示したことは事実である。

 だが、一部の米海軍対中戦略専門家たちは、アメリカ政府がFONOP実施計画を事前に発表(公式にではなくとも)してしまったことに対して強く反発している。

 なぜならば、どのような形にせよFONOPの実施を予告してしまうことは、アメリカ艦艇や航空機が「一方的に中国が主権を主張している領域」を通航することを中国に対して暗黙のうちに通告しているようなものだからである。

 国際海洋法では「無害通航権」(沿岸国の平和・安全・秩序を害さない限度において船舶が他国の領海を航行できる権利)が保障されている。しかし中国は、たとえ無害通航権の行使といえども中国の主権的海域を通航する軍艦に対しては中国政府への通告を要求している。したがってアメリカ政府がFONOPを実施する予定を前もって明かしてしまうというのは、「あたかも中国政府に対して暗に軍艦派遣を通告しているようなものであり、中国政府に遠慮するにもほどがある」ということになるのだ。

■ 南シナ海での中国への牽制は日本のためでもある

 中国牽制派の米軍関係者たちにとっては、このようにオバマ政権の腰が中国に対して引けていればいるほど、積極的に軍艦を派遣し、フィリピン軍に対して航空機の供与も開始した安倍政権の姿勢が頼もしく感じられるのである。

 日本による南シナ海問題への積極的な関与は、これまで数回にわたり中国と戦闘を交えているベトナムや、極めて弱体な海洋戦力しか持たないフィリピン、そしてここのところ中国海警や漁船との領海紛争が本格化しつつあるマレーシアなどからも、極めて頼もしい動きと受け取られていることは間違いない。

 また、南シナ海が「中国の海」となってしまうことを牽制するのは、南シナ海沿岸諸国やアメリカのため以上に、もちろん日本自身のためである。

 なぜならば、南シナ海には日本にとって最も重要なシーレーンが横たわっているからである。また、南シナ海での対中牽制に日本が協力することは、東シナ海での対中牽制に多くの国々からの助力と支持を得ることにつながるからでもある。

 ただし、平成28(2016)年度予算における国防費程度の予算規模とその内容(相変わらずの“お買い物リスト”)では、これらの南シナ海関係諸国の期待に応え、日本の国益を確保するだけの活動を南シナ海で継続することは極めて困難と言わざるをえない。

 南シナ海が中国の手に落ちれば、間違いなく東シナ海も中国の手に落ちてしまうことを我々は肝に銘じておかねばなるまい。


海自大型艦が比に今月中旬寄港 南シナ海で中国牽制 米比と共同訓練も
産経新聞 4月6日(水)7時55分配信

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海上自衛隊の護衛艦「いせ」(甘利慈撮影)(写真:産経新聞)

 海上幕僚監部は5日、インドネシア海軍が今月中旬に主催する多国間共同訓練に、海上自衛隊の大型ヘリコプター搭載護衛艦「いせ」を参加させると発表した。海自はこれに合わせ、経由する南シナ海のフィリピン・スービック港への寄港を検討。米海軍やフィリピン海軍との共同訓練も調整している。南シナ海での存在感を高め、人工島の軍事拠点化を急速に進める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。

 スービック港には今月3日、海自の練習潜水艦「おやしお」が入港したばかり。海自潜水艦のフィリピン訪問は15年ぶりで、護衛艦「ありあけ」と「せとぎり」も同行している。

 今回派遣するいせは、海自護衛艦の中でも屈指の哨戒ヘリ運用能力を持ち、潜水艦への警戒・監視活動に威力を発揮する。海自幹部は、「通常の護衛艦派遣よりも意味合いは大きい。潜水艦派遣と合わせ、中国にとっては厳しいメッセージに映るだろう」と指摘する。

 いせは、今月12~16日の日程でインドネシアのパダンで開かれる多国間共同訓練「コモド」や国際観艦式に参加。捜索・救難訓練や指揮所訓練などを行う。その後、南シナ海に入り、米比両海軍との共同訓練を行う方向だ。

 さらに、潜水艦とともにスービック港に入った護衛艦2隻は6日に出港し、ベトナムのカムラン湾に向かう。米国に加え、南シナ海で中国と対立するフィリピン、ベトナム両国との連携を強化し、“中国包囲網”を構築する狙いだ。

 南シナ海で活発化する海自の動きに、中国も神経をとがらせ始めている。

 来日中の武大偉朝鮮半島問題特別代表は5日、北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり外務省の石兼公博アジア大洋州局長と会談。記者から南シナ海問題が議題に上がったかを問われると「私の担当する問題ではないし、日本と何の関係もない」と不快感を示した。

 官邸筋は「日本の動きを気にしているのは確かだ。メンツを重んじる国なので、『力による現状変更は許さない』という国際世論を喚起する活動を継続する必要がある」と述べた。


海自大型護衛艦、南シナ海航行へ=インドネシア共同訓練参加で―政府
時事通信 4月5日(火)17時51分配信

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海上自衛隊は5日、今月中旬に行われるインドネシア海軍主催の多国間共同訓練「コモド2016」に参加するためヘリコプター搭載型の大型護衛艦「いせ」(写真=海上自衛隊ホームページより)を派遣すると発表した。

 海上自衛隊は5日、今月中旬に行われるインドネシア海軍主催の多国間共同訓練「コモド2016」に参加するため、ヘリコプター搭載型の大型護衛艦「いせ」(1万3950トン)を派遣すると発表した。

 南シナ海を航行することになる。政府筋によると、南シナ海に面するフィリピン・ルソン島のスービック港に寄港することも検討している。

 海自は「いせ」の派遣について、米海軍が南シナ海の中国の人工島周辺で艦艇を航行させる「航行の自由作戦」とは関係ないとしている。ただ、日本の大型護衛艦が南シナ海で存在感を示すことになり、日米で中国をけん制する形になる。スービック港には今月、練習航海中の海自潜水艦「おやしお」が入港している。

 共同訓練は12~16日、インドネシアのパダン周辺海域で実施。東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国など十数カ国が参加する見込み。「いせ」は呉基地(広島県呉市)を拠点にし、空母のような広い甲板を持ち、複数のヘリコプターを同時発着させられる。

 武居智久海上幕僚長は5日の記者会見で、「戦術技量の向上と参加国との相互理解、信頼関係増進に役立てたい」と述べた。


米・フィリピンが合同軍事演習、カーター国防長官も視察へ
ロイター 4月4日(月)18時16分配信

[マニラ 4日 ロイター] - 米国とフィリピン両軍による定例合同軍事演習「バリカタン」が4日、始まった。合同軍事演習には両軍合わせて約8000人が参加する。南シナ海への進出を強める中国との間で緊張が高まっていることが背景にある。

フィリピン国防省によると、2週間にわたる軍事演習では、指揮管理系統、通信、後方支援などのほか、占領された海上の石油・ガス掘削施設の奪還や海岸への上陸作戦の訓練も実施される。オーストラリア軍も演習に参加するほか、日本やベトナムなどがオブザーバー参加する。

フィリピン海軍のアレクサンダー・ロペス中将は記者会見で、合同軍事演習について、特定の懸念要因に対応するものではなく、戦争のあらゆる側面に備えて行われると述べ、「中国を視野に入れたものではない」と語った。

来週にはカーター米国防長官も視察する予定となっている。米国の国防長官による視察は初めてで、両国がこの軍事演習を重視していることがうかがわれる。


海自潜水艦が15年ぶり比寄港=中国けん制、防衛協力強化
時事通信 4月3日(日)15時41分配信

 【マニラ時事】練習航海中の海上自衛隊の潜水艦「おやしお」が3日、フィリピン・ルソン島中部のスービック港に寄港した。

 海自潜水艦のフィリピン寄港は15年ぶり。初級幹部自衛官の研修と友好親善が目的だが、人工島建設で南シナ海への進出を強める中国をけん制する狙いもあるとみられる。

 潜水艦には護衛艦「ありあけ」「せとぎり」が同行し、参加人員は3隻で計約500人。潜水艦を率いる吉野宏昭・1等海佐は「フィリピンは海自にとって非常に重要なパートナーだ」と強調した。6日まで滞在し、護衛艦2隻はベトナム南部のカムラン湾にも立ち寄る予定。

 日比両国は中国を念頭に防衛協力を強化しており、2月には防衛装備品・技術移転協定を締結。協定に基づき、日本側は海自練習機の貸与を検討している。


すでに地対艦ミサイルも配備されていた南シナ海
JBpress 3月31日(木)6時10分配信

 2月中旬、中国が西沙諸島の永興島(ウッディー島)に地対空ミサイル部隊を展開させたことが、米軍側によって確認された。永興島は、中国が南シナ海における「海洋国土」確保の前進拠点としている島である。

 筆者は本コラムなどで、「人民解放軍が西沙諸島の永興島および南沙諸島に建設中の7つの人工島に、地対空ミサイルに加えて地対艦ミサイルを配備する日は間近であろう」と指摘してきた。

 ところが、“間近”どころではなかった。すでに永興島には地対艦ミサイルも配備されていたことが確認されたのだ。

■ 地対艦ミサイル「YJ-62」を発射

 3月21日、中国のインターネットに永興島らしき場所で地対艦ミサイルらしきミサイルが試射されている写真が流された。その写真を米軍関係機関やシンクタンクなどが分析した結果、ミサイルが発射されていた場所は背景などから明らかに永興島であること、そして発射されたミサイルは鷹撃62型地対艦ミサイル(YJ-62)であることが確認された。

 YJ-62にはいくつかのバリエーションがあるが、いずれも地上移動式発射装置(TEL)に3基搭載され、そのTELから発射されてはるか海上を航行する艦艇船舶を攻撃する。最大射程距離は基本型のYJ-62が280キロメートル以上(中国公称値)、改良型のYJ-62Aは400キロメートル(推定値)とされている。

 水平線の彼方の艦艇船舶を攻撃するため、YJ-62ミサイルは衛星測位システム(アメリカのGPSと中国の北斗システム)を利用して海面すれすれの低高度(7~10メートル)を飛翔して攻撃目標に接近し、目標の直近(10キロメートル~5キロメートル)からはミサイル本体に搭載された目標捜索装置を作動させて目標の艦艇船舶に突入する。

 YJ-62の最高飛翔速度はマッハ0.8程度と考えられており、対艦巡航ミサイルとしては比較的“低速”の部類に属する(とは言っても脅威ではないというわけではない)。ただし人民解放軍は、YJ-62より高速で飛翔するYJ-82や、YJ-62より高速で飛翔するだけでなく目標に突入する段階では超音速になると言われているYJ-83も保有しており、やがてそれらの地対艦ミサイルも永興島や南沙諸島人工島に配備されるものと考えられる。

■ 中国が永興島でミサイルを発射するまで

 中国側によると、永興島には海南省三沙市政府機関が位置しており、それら政府機関の民間人のみならず漁業や商業に従事する三沙市民も多数居住している。そうした永興島に島嶼防衛用の地対空ミサイルや地対艦ミサイルを配備するのは、「アメリカの軍事的威嚇に対処するための完全に防衛的な自衛措置」ということになる。

 南シナ海における領有権紛争は今に始まった話ではない。中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、そして台湾による、数々の島嶼環礁とそれらの周辺海域をめぐる領有権紛争は長きにわたって続いてきた。ただし、アメリカはこれまで「第三国間の領土・領海をめぐる紛争には直接関与しない」という外交鉄則を掲げ、南シナ海での領有権紛争に直接口出しすることは控えてきた。

 しかしながら、中国が南沙諸島に7つもの人工島を建設していることが確認されると、アメリカ海軍を中心とした対中牽制派の人々から「アメリカも何らかの形で南シナ海問題に関与すべきである」との声が上がり始めた。そして、3つの人工島に軍用飛行場が誕生することが確実になるや、オバマ政権もようやく中国に対する牽制行動にゴーサインを出すこととなった。

 そして、実施されたのが「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)である。昨年(2015年)10月、第1回FONOPとして人工島の1つスービ礁周辺にアメリカ海軍駆逐艦と哨戒機が派遣された(JBpress「遅すぎた米国『FON作戦』がもたらした副作用」2015年11月5日)。

 ただし、中国による人工島の各種施設の建設スピードが緩むことはなかった。今年の正月には人工島の1つであるファイアリークロス礁に建設されていた飛行場(あらゆる軍用機が使用可能な3000メートル級滑走路)に大型旅客機が発着し、人工島飛行場第1号の運用が開始された(「中国が人工島に建設した滑走路、爆撃機も使用可能に」2016年1月14日)。

 それに対してアメリカは、第2回目のFONOPを実施する。今回は駆逐艦を西沙諸島(中国とベトナムが領土紛争中)の中建島(トリトン島)周辺海域に派遣して12海里内海域を通航させた(「それでも日本はアメリカべったりなのか?」2016年2月4日)。

 すると中国軍は、西沙諸島が脅かされたことを口実にして、西沙諸島の中心である永興島に地対空ミサイル部隊を展開させた(「中国の国営メディア、『米艦艇に発砲せよ』と息巻く」2016年2月25日)。

 それに対してアメリカ海軍は、空母打撃群を南シナ海に派遣し、中国に対し海軍遠征投射能力のデモンストレーションを行った(「米国の空母打撃群派遣を中国は間違いなく逆手に取る」2016年3月10日)。

 すると、上記のように中国のインターネットに、永興島で地対艦ミサイルが南シナ海に向けて試射されている状況が映し出されたのだ。

 アメリカによるFONOPは、中国の南沙諸島や西沙諸島に対する領有権の主張に対して直接的に反対するためのものではなく、「南シナ海において船舶が自由に航行できる状態を確保するためのデモンストレーション」という建前になっている。しかし、中国はそれを逆手にとって「アメリカが中国の“海洋国土”に軍事的脅威を加えている」として、「自衛措置を強化せざるをえない」という論法なのだ。

■ 伝統的海軍戦略ではもはや対抗できない

 このように南シナ海での米中衝突が“いたちごっこ”の様相を呈している中、オバマ政権の国防費大削減によって海洋戦力の低下という現状に直面しているアメリカ軍としては、日本やオーストラリアを南シナ海での対中牽制活動に引っ張り出そうと動き始めている。

 実際に、海上自衛隊と米海軍それにオーストラリア海軍が南シナ海で合同訓練をしたり、海上自衛隊の潜水艦がフィリピンに寄港したり、同じく駆逐艦がベトナムに寄港したり、オーストラリア海軍艦艇が南シナ海での定期パトロールを開始したり、日本政府が海上自衛隊の中古練習機をフィリピン軍に供与したり、といった状況が現実のものとなっている。

 また、海上自衛隊の中古P-3C哨戒機をフィリピン軍に供与するとともに、海上自衛隊自身もフィリピン・パラワン島の航空基地をベースに南シナ海のパトロールを実施する方向で準備が進んでいる。海上自衛隊哨戒機が、アメリカ海軍哨戒機やアメリカ海軍やオーストラリア海軍艦艇とともに南シナ海をパトロールする日もそう遠くはない。

 実際にアメリカ海軍では、「安倍首相や統幕長が、南シナ海への自衛隊派遣をアメリカ側に確約したのであるから、自衛隊駆逐艦あるいは哨戒機の派遣は当然である」と理解されている。

 だが、アメリカが自衛隊やオーストラリア軍を巻き込んで中国側に圧力をかければかけるほど、人民解放軍の南沙諸島や西沙諸島への各種ミサイル配備や、航空基地並びに海軍拠点の充実がますます強化されることは自明の理である。

 また、アメリカや日本そしてオーストラリアが、軍艦や航空機を繰り出して中国側を威嚇(威嚇になるかどうかは疑問であるが)しても、中国に人工島の建設や軍用滑走路の更地化などを強要することなど不可能である。

 アメリカ海軍は依然として「海洋戦力には海洋戦力で」という方針を振り回そうとしているが、永興島や7つの南沙人工島、そしてスカボロ礁にまで陸上軍事拠点を設置しつつある南シナ海の人民解放軍戦力(プラス中国海警戦力)に対しては、そうした伝統的な方針だけでは対抗しきれない状況に立ち至ってしまっている。


中国史が指南する、南シナ海の次は尖閣奪取
JBpress 3月29日(火)6時5分配信

 南シナ海で中国が行っている状況は、国際世論に耳を傾けることもなく国際法を無視して、力の誇示で内海化を進めているということである。こうした中国の動きは近年の特異な現象ではなく、中国がしばしば繰り返し行ってきたことである。

 1921~22年のワシントン会議は中国の国内状況などを議論し、中国に課されていた不平等条約を関係国が協力して逐次解消していくため、「支那に関する九ヶ国条約」や「支那の関税に関する条約」などを締結した。

 しかし、肝心の中国が守ろうとせず、条約破りの常習犯として日本を翻弄し続けた。

 同時に、会議を主宰した米英は中国の無法を見逃して日本を責め、逆に中国に加勢する状況もしばしばであった。こうした米英の宥和政策が中国のナショナリズム高揚に拍車をかけ、支那事変に発展させていった。

 「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」という。日本および日本人が賢者であるならば、日本が採ってきた経験ではなく、中国の歴史に学ぶときであろう。ここでは、主として近々100年の歴史を取り上げてみる。

■ 日本の中国理解は間違っている? 

 「日本は中国と初めて重要な接触を持って以来、この中国人の特徴をじっくり考える機会を何度も何度も持ってきた。

 列強諸国が中国のこのような歴史を知らずに、平和を保証するのではなくその逆に将来の災厄の種を孕むような提案を日本に押しつけようとし続けるならば、それは何の役にも立たぬことは明らかである」と、カール・カワカミは『シナ大陸の真相1931~1938』)に書く。

 これはワシントン会議で、日本の主張が列強になかなか認められなかったことを指している。

 カワカミは、中国の為政者は人民を奴隷のように酷使するのが常であったので、自分を痛めつけ、搾取・略奪する人が自分の上に立つ人であり、大人しい人に対しては自分が上に立っているという意識を持っているという認識も披露している。

 実際、アヘン戦争(1840~42)に敗北した中国は英国と南京条約を結ぶが、「(英国が奴隷のように)彼らを扱わなかったので、中国人はいまなお自分たちが勝利を収めたと信じ、この条約を単なる冗談として受け止め、たちまちこの条約をどんどん侵しはじめた」とカワカミは言う。

 長年中国とかかわり自分自身を中国の真の友人と思い込んでいた某英国人は、武力を用いることを余儀なくされるような事態になることは自分としては不愉快だし気乗りしないと思いながらも、「中国人は武力に対しては常に屈するが、理屈には決して従わない国民だ」と述べていることを紹介する。

 また、ある在中国米国高等弁務官も「中国政府は武力およびそれを行使しようという意志の存在する場合に限ってのみ正義を認める」と言っているし、彼の後任者も「中国との外交交渉はカノン砲を突きつけた時にのみ行うことができる」ことも紹介する。

 こうして、1859年に英仏軍が戦勝軍として北京に入城した時、彼らは「壮麗な夏の宮殿を冷酷無残に破壊した。このことは通常の道徳基準からすれば野蛮人の正当化できぬ行為のように思えるけれども、しかしそうでもしなければ中国人自身、英仏連合軍を勝利者と考えなかったであろう。なぜならば中国人はその長い歴史を通じて、略奪しないような戦勝軍など見たことも聞いたこともないからである」という。

 1900年に義和団事件が起き、多国籍軍が外交団と外国人を救出するため8週間にわたって北京を包囲する(筆者注:最も活躍したのが柴五郎中佐率いる日本軍で、その後多国籍軍の指揮もゆだねられた)。

 この時「外国の軍隊は略奪することによって、外国人に対する敬意を心底中国人にたたき込むための強力な下剤を与えたのである」と述べる。

 続いて、「この略奪騒ぎに加わらなかった唯一の軍隊は日本軍であった。この寛大さのおかげで日本は中国からただ軽蔑されただけであった。というのは、中国は日本を、相変わらず中国に対して恐れの念を抱いている小国と考えたからである」と、カワカミは書く。

 以上のことから見て、中国への対処においては圧力の伴わない行動や宥和政策は、その主張がいかに正当であっても受け入れられないことが分かる。以下に対中対処の失敗例を見てみよう。

■ 米欧列強の対中宥和政策

 ジョン・マクマリーは1921~22年のワシントン会議に参加して条約締結にかかわり、25~29年は駐中国米国公使としてつぶさに中国を見た人物である。

 彼は第1次世界大戦後の国際社会の安定を願ってワシントン会議で作り上げた条約体制について、「各国が中国と協力して(中国の)『不平等条約』の状態を解消させ、ワシントン会議の精神に具体的な成果を与えようとする努力」(『平和は如何にして失われたか』)であったという。

 そのマクマリーが「日本政府は1931年9月の満州侵攻開始までのほぼ10年間、ワシントン会議の協約文書並びにその精神を守ることに極めて忠実であった。そのことは、中国に駐在していた当時の各国外交団全員がひとしく認めていた」と書く一方で、「列強諸国の文字通り真摯で誠実な努力を挫折させてしまったのは、ほかならぬ中国側であった」と断言する。

 なぜなら、「中国人が、ワシントン会議の諸条約及び諸決議について、各個別の条項を無効とし、またこれを軽視する旨を公言してきた、と言っても誇張ではない」状況があったからである。

 ワシントン会議で樹立された政策が成功するか失敗するかは、「実際には中国自身と、英国および米国の手に握られていたと言っていいだろう。この協力の維持の失敗がワシントン会議が作り上げた期待を裏切」り、中国の横暴につながっていったとマクマリーは述べるが、ほぼ100年後の今日、香港や台湾の状況を見るにつけ、同じような状況が再現されているように思える。

 香港返還に際して中国と英国は共同声明を発表した。英国は1997年7月1日に香港の主権を中国に返還し、香港は中国の特別行政区となること、他方中国政府は鄧小平が提示した「一国二制度」をもとに、社会主義政策を将来50年(2047年まで)にわたって香港で実施しないことを約束した。

 ところが、香港の自由が奪われていく現状に危機感を抱いた香港市民が今年の立法会(議会)選や来年の行政長官選挙に関して、中国の干渉を排除すべしとして大々的なデモを行った。

 その後、英国議会が声明の順守状況を調査する代表団を派遣しようとしたところ、駐英中国大使が「合意は香港が返還された時点で無効化した」と言い放ったのである。

 英国は声明を反故にした中国に目をつむり、その後経済協力協定さえ結んだ。自由を何よりも尊重する英国が「自由」を剥奪されようとする香港市民を見捨てたのである。

 また、台湾は自由民主主義を尊重する国として存在し続けてきた。米国には台湾関係法があるにもかかわらず、中国に気兼ねするあまり、横暴な中国に掣肘を加えることもなく、台湾の危惧に応えようともしない。

■ 失敗を重ねている日本の対中宥和政策

 1925~27年にかけて、暴力的な反外国(特に反英)暴動が揚子江南部のいくつかの省に広まり、1927年3月24日の南京暴動に発展する。前出カワカミ本は次のように書いている。

 「この暴動で全ての外国領事館と多くの外国企業、住宅、キリスト教の施設などが略奪された。殺害された外国人の中には米人の南京大学副学長、二人の英人、仏人と伊人の司祭一人づつが含まれていた。多くの外国人の女性たちが筆舌に尽くしがたいほどの暴行を受けた」

 「この全期間を通じて日本は融和的な態度をとり続けた。中国人の民族主義者の大群衆の前で逃げ惑っている外国人を保護するために、南京に停泊していた英米の戦艦が市街の幾つかの区域に砲身を向けたとき、日本の駆逐艦の砲身は沈黙したままだった。日本領事館が他国の領事館と同様に略奪され、女性も含めた領事館職員が筆舌に尽くし難いほどの虐待を受けたにもかかわらずである」

 カワカミは「幣原外交(筆者注:幣原喜重郎外相在任1924.6~27.4および29.7~31.12)の問題点は、中国人の物の考え方、とりわけ彼が外相をしていたあの数年間における中国人の発想方法を全く理解できなかったことである」と糾弾している。

 また、「外国列強諸国の中国に対する宥和政策も、中国人の自惚れを助長させることにしか役に立たないのだ。それは、中国は法を超越しており、またそうすることは正しいのであり、中国にいかなる弁明を求めることも帝国主義的侵略である、ということを中国人に確信させるだけ」という、第三者の発言も引用している。

 1923~27年の間にソビエト工作員たちが「打倒外国帝国主義」「打倒外国軍国主義」「打倒不平等条約」「打倒大英帝国」「打倒日本」などのスローガンを吹き込んだため、中国の排外主義は一層激しさを増し、漢口事件や済南事件へとつながっていく。

 その後も中国は混乱を続け、1931年の満州国の建国、37年の盧溝橋事件、次いで上海事件や南京事件へと拡大していく。カワカミは7月7日発生の盧溝橋事件は、蒋介石が国民党を率いて以降の10年間に盛り上げてきた戦争機運の必然的な結果であったと述べる。

 盧溝橋事件が勃発して以降の3週間に、日本は4度の休戦協定を結ぶが中国側はことごとく破る。平和的交渉による事件解決を望む日本側はこの間は動員令を下さなかったが、中国側は衝突当初の段階で動員令を下している。

 ついに7月29日に中国軍は通州で無防備の日本市民200人を虐殺し、1万人の日本民間人が住む天津日本疎開区に対する襲撃を行う無法振りであった。

■ 中国は尖閣も着々と自国領へ

 中国による南シナ海の内海化が進んでいる。領有権を主張する南シナ海沿岸諸国や航行の自由を主張する米国の言い分には一切耳を傾けようとしない。

 「南シナ海は古代から中国の領海であった」など、国際法を無視して一方的に人工島を構築している。「軍事化を意図しない」とも公言したが、最近は軍用機を発着させるなどして軍事拠点化を進めている。

 こうした状況からも中国の行動原理や言論の在り様が分かる。尖閣諸島の領有権に関しても鄧小平は後代に任せようと主張して日本を油断させ、海洋法を作って自国の領海に加える改竄をした。

 いまでは日常的に日本の接続水域に接近しながら、頻繁に領海侵犯もしている。日本の警告に対しては「自国の領海だ」「正当な行為である」などの主張を繰り返している。既成事実化で南シナ海同様に尖閣諸島の領有化を意図しているとしか思えない。

 同時に証拠固めも進めている。

 3月北京で開催された全国人民代表大会(全人代)で、13日に活動報告を行った最高人民法院(最高裁)の周強院長は、2014年9月に尖閣諸島の近海で発生した中国漁船とパナマ船の海難事故を中国の海事裁判所が処理したことを明かし、「我が国の釣魚島(尖閣諸島の中国側名称)の海域での司法管轄権を明確にした」(「産経新聞」平成28年3月14日付)と主張している。

 また、「国家主権や海洋権益などの核心利益を断固として守る(ための)国際海事司法センターの創設」も公表した。

 このような動きを見ていると、真偽に関わりなく中国は世界に向かって宣伝広報していることが分かる。捏造以外の何物でもないが、中国にとってはそんなことはどうでもいい。結果的に尖閣諸島が中国の領有であると国際社会に認めさせればいいだけの話である。

 鄧小平の言う「子孫がいい知恵を出して解決してくれる」とは、鄧自身が言った「韜光養晦」(能力を隠して好機を待つ)そのものである。

 力がないうちはじっと我慢し、力がついた段階で一気に打って出る戦略だ。当面のいざこざを賢く避けるかのように見せかけておいて、ある時点で一気呵成に中国の思いどうりに持っていくと中国流のやり方である。

 これまでの日本は、中国の言行に対して言論による反論だけで「領有権」は維持できると見ているようである。

 しかし、南シナ海ではベトナムやフィリッピンなどの声に耳を傾けることなく、実力行使で一方的に工事を進めてきた。宥和政策を続けていたのでは尖閣諸島がいずれ中国の領有にされ、南シナ海の轍を踏むことになるのではないだろうか。

■ おわりに

 米国のランド研究所が尖閣諸島を巡って日中衝突が起きる状況のシミュレーションを行った。その結果、日本は5日で敗北するという衝撃的なものであったと言われる。

 中国系シンクタンクが、尖閣諸島のような無人島の帰属問題で米国が関与しても国益増進につながらないから、米国は静観していた方が得であると米国に分からせるための研究とも見られ、コミットメント・パラドックスと呼ばれるそうである。

 いまの中国には貧富の差による不満が充満しており、経済成長で人民の不満解消が先で戦争などの余裕はないなど、シナリオには厳しい評価もある。

 中国から見れば、日米同盟にひびを入れ、日本の対応状況を伺いながら、「韜光養晦」作戦を進めたいのであろう。安保法制に限らず、日本の法制には多くの欠陥があることも中国は研究済みであろう。

 いずれにしても、宥和政策では成功しない中国であることを、南シナ海の現実が如実に教えてくれている。

 こうしたことを総合的に勘案するならば、努めて早い段階で言論ではなく行動として、尖閣諸島に灯台や船溜まりなどの航行や緊急時の避難施設、さらには自然環境保護の推進拠点などとして整備することが重要ではないだろうか。


中国が16年南シナ海支配を強化する理由
Wedge 3月26日(土)12時10分配信

 米シンクタンクCSISのポリング研究員が、2月18日のCSISのサイトで、2016年は、中国がますます南シナ海における実効支配を強化しようとするため、緊張は一層激化するだろう、と指摘しています。要旨は、次の通りです。

国際的な無法者と化す中国
 南シナ海問題に関する中比仲裁裁判は、今年5月下旬頃には、中比両国に法的拘束力を持つ判決を下すとみられている。

 15からなる訴訟内容は複雑であり、最終的に裁判所がどのような結論を出すのかは明らかになっていない。しかし、中国の「9段線」主張には説得力がなく、中国は国連海洋法条約が定める以上の領海、EEZ、大陸棚を主張しうる根拠を有していないとの判決が下されるのは、ほぼ確実であろう。もっとも、この判決は南シナ海で係争中の島・岩に対する中国の領有権主張に影響を及ぼすこともなければ、広範な海洋権益主張をやめさせることにもならないかもしれない。しかし判決は、中国の地形から生じる海洋主張の内容を、地図上の曖昧な点線ではない形で明確にするよう命じるものとなるはずである。

 中国は裁判所に命令されたからといって、急に主張を明確化することはないだろうが、2013年初頭にフィリピンが仲裁裁判に提訴した時から、中国は提訴を取り下げるよう躍起になってきた。判決が出て、中国が国際的な無法者として評判を落とすコストを自覚しているからである。このコストは、中国が政治的妥協を検討する一因となっている。すなわち、中国は歴史的権利を主張するのではなく、国連海洋法条約に基づく形で「9段線」を再定義し、フィリピンが提訴を取り下げることと共同経済開発に合意することを条件に、本格的な交渉に取り組む可能性がある。こうした政治的妥協を促進するために、米比は裁判所判決に対する国際的な支持を取り付けるキャンペーンを張る必要がある。判決に対する支持は、豪州、日本、欧州の他、東南アジア諸国からも取り付ける必要がある。

南シナ海で中国が軍事力を増強させる2016年
 2015年末、中国はスプラトリー諸島で民間機の試験飛行を行い、運用可能な滑走路を確立した。スビ礁とミスチーフ礁の滑走路もまもなくそうなるはずであり、このまま何もしなければ2016年前半にも軍用機の試験飛行が実施されよう。その他4つの人工島でも、中国は海空軍のための港湾施設、レーダーの整備などを継続している。さらに、永興島で地対空ミサイルを配備したように、2016年に南シナ海で中国の軍事力が増強されることは明白である。

 南シナ海における中国の海空能力の向上は、東南アジア諸国に域外国の関与を求める声を大きくさせ、米国が当該海域における航行の自由作戦の頻度を上げているように、既に豪州も東南アジア海域の哨戒活動を拡大しつつある。

 日本でも豪州やフィリピンをはじめとする地域パートナー国との防衛協力を拡大するとともに、新日米ガイドラインを通じて南シナ海の哨戒活動における役割を拡大するかどうか議論されている。また、インド海軍も、ベトナムに対して装備を提供したり、日米豪と安全保障パートナーとなったりしている。

 南シナ海における米国の情報・監視・哨戒能力は、今年1月フィリピン最高裁で米比拡大防衛協力協定が合法化されたことで確実に増強されよう。

 2016年には南シナ海における緊張が今まで以上に高まることが予想されるが、中国のさらなる侵略を抑止し、東南アジア諸国の権利を支援し、紛争管理のための政治的妥協を目指す多国間キャンペーンを行っていく余地があろう。

出 典:Gregory B. Poling ‘A Tumultuous 2016 in the South China Sea’(CSIS, February 18, 2016)

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 2016年には南シナ海における緊張が今まで以上に高まりそうである、と米シンクタンクCSISのポリングが述べています。

 習近平政権は、「南シナ海は古代以来中国の領土である」との独善的な領土拡張の主張をくり返し、一部パラセル諸島において、地対空ミサイルを配備しつつあります。本年には、中国とフィリピン、マレーシア、ベトナムなどの間で、漁民、石油探索船、航空機の活動などをめぐって、局地的衝突が起こる可能性が強いとの本論評の予測は当たっているように思われます。

オバマ大統領の任期中を好機とみる中国
 米国の活動については、「航行の自由作戦」の頻度が上がりつつあると本論評は述べていますが、これまでのところ、2カ月に一度程度の頻度で、中国の主張する島嶼の領海や接続水域の中を米艦船が航行する程度にとどまっています。それに対し、中国はそのような米軍の活動の前で、さらに島嶼拡張工事、ミサイル配備など軍備強化に向かいつつあります。

 中国としては、オバマ大統領の任期中が南シナ海での拡張を図る好機と見ている可能性もあります。

 最近行われたASEAN首脳とオバマ大統領との会談においては、踏み込んで具体的に中国の対応ぶりを非難するには至りませんでした。中国からの働きかけがあったのでしょうが、ASEAN10カ国の足並みが一部国家のために揃わなかったことが露呈しました。

 ハーグの仲裁裁判所が中比間の仲裁結果を5月にも公表すると報道されていますが、中国は同裁判所の管轄権そのものを拒否するのではないかと思われます。中国としては、あくまでも各個撃破の形で、自らのペースで南シナ海の問題処理を目指すとの方針に変わりはなさそうです。

 日本としては、米国、ASEANの主要国と歩調を合わせた形で、国際ルールにのっとり本件を処理する方向で、これら国々と引き続き協力する必要があります。


南シナ海覇権獲得への“飛び石”か 中国西沙諸島ミサイル配備の狙い
Wedge 3月24日(木)12時11分配信

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中国がミサイルを配備した西沙諸島の永興島(Getty Images)

 2月18日付のForbesで、米シンクタンクAEIのマイケル・オースリン部長が、西沙諸島におけるミサイル配備は、中国が南シナ海一帯に軍用基地のネットワークを構築するための一歩であるとして、警鐘を鳴らしています。要旨は以下の通りです。

中国にとってもってこいの飛び石である永興島
 中国が西沙諸島の最大の島、永興島(Woody Island)に地対空ミサイルを配備した。米国やアジア諸国は中国を非難しているが、中国がこの種のミサイルの最初の配備先として永興島を選んだのには理由がある。

 永興島は潜水艦基地を抱える海南島の南東250マイルに位置する。この島は台湾とベトナムも領有権を主張しているが、中国が1956年以来支配している。この島は自然に任された地域ではなく、昔から港があり、中国は1990年に滑走路を建設した。昨年遅くには、中国はJ-11戦闘機を配備し、西沙諸島周辺の空域をコントロールし得ることとなり、また、海南島の戦闘機の支援も得て200マイル先の南シナ海奥深くまでコントロールし得ることとなった。中国に言わせれば、HQ-9ミサイルは島の航空機や船舶を守るための防御措置、ということになる。中国の狙いは、全ての領有地に、先進の防御措置を施すことをゆっくりと常態化していくことにある。

 中国は、東南アジアでの軍事競争をエスカレートさせることに平気な様子である。「航行の自由」作戦のような米国の行動に引き下がることは拒否している。永興島のミサイルは100マイルの空域の米軍用機の脅威となり得る。中国は米艦船を狙った地対艦ミサイルを配備することもできる。

 永興島は、南シナ海一帯に軍用基地のネットワークを広げていくために、もってこいの最初の飛び石である。もし、南沙諸島に地対空ミサイルを配備し、大きめの島にジェット戦闘機を配備すれば、中国は南シナ海全域をカバーできることとなり、飛行の自由が危険に晒される。近隣諸国には中国を駆逐する力はない。中国の目標は、域内諸国にその卓越した地位を認めさせることにある。

 地域の力のバランスは急速に変化している。ある一国が、共有の水路と航空路に対する自己の権利を主張する力を持つ状況となりつつある。これは大戦以来、アジアにおける圧倒的な力の出現の阻止に努めてきた米国の戦略に対する打撃である。

 中国がその目標を達成したとしても、必ずしも戦争を意味しない。むしろ、力は権利になり、ルールは最強の国によって作られる、ということの暗黙の了解を意味しよう。それは自由主義的な国際秩序を脅かす世界的無秩序のもう一つの証拠である。

出 典:Michael Auslin ‘Asian Escalation: Why China Picked Woody Island For Its First South China Sea Missiles’(Forbes, February 18, 2016)

西太平洋からの米軍駆逐狙う中国
 この論説は、南シナ海で覇権を求める中国の良く知られた戦略的な行動を、西沙諸島へのミサイル配備という新たな展開を踏まえて、改めて記述し、警告を発するものです。中国が西太平洋から米軍を駆逐することを狙っていることに疑いはありません。

 問題は、どう対応するかにありますが、少なくとも南シナ海における力のバランスが致命的に悪化しないよう努力する必要があります。そのためには、米軍のプレゼンスを目に見える形で強化すること、すなわち、米国が「航行の自由」作戦の回数を増やすとともに、そのビジビリティを高めることが必要と思います。ビジビリティを高めることが、中国とこの地域の諸国に、米国の決意を知らしめることになります。過去2回の「航行の自由」作戦では、米国はその態様と目的を公に説明することに及び腰でした。当然のことを当然のように行うのですから、ことさら説明はしないという立場なのかも知れませんが、米国の弱腰振りを印象づけることになっているように思います。

 日本もできることをやる必要があるでしょう。


中国の「欺瞞」外交にオバマもいよいよ我慢の限界
JBpress 3月16日(水)6時10分配信

 中国の習近平政権は、米国を後退させながら勢力を拡大する対米対決戦略をとりながら表面上は穏健で協調的な対米政策をアピールするという欺瞞作戦を進めている。それに対してオバマ大統領もついに中国への批判を正面から表明するようになった──。

 米国のベテラン専門家が、最近の米中関係の変質をこのように報告した。

■ 協調路線から攻勢的外交へ転換

 米国ジョージワシントン大学のロバート・サター教授は3月9日の同大学での講演で、習近平外交の現況と米中関係の変質についての見解を発表した。

 サター氏は米国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などの中国専門官として30年以上を過ごし、中国の対外戦略研究では米国で有数の権威とされている。

 サター氏はこう総括する。中国は胡錦濤政権下の2002年から2012年までの間、「米国との実利的な協力」外交を進めていた。しかし、2013年3月に習近平氏が国家元首となって以来その外交を止めて、「アジアその他の地域で米国に挑戦する、大胆で攻勢的な外交構想」へと転換した。

 その具体的な例としては以下があるという。

 ・東シナ海や南シナ海で、軍事力を直接行使する寸前の多様な強制的手段を実行し、近隣諸国と米国の権益をはぎ取ろうとしている。

 ・巨額の外貨準備や工業生産能力の余剰分を利用して、自己中心的な「国際経済開発のプログラムや機関」を開設する。それは米国のリーダーシップを侵害するか、米国を排除することになる。

 ・アジア太平洋地域で、米国を主要な標的とする軍事態勢の強化を進めている。

 ・米国の官民に対するサイバー攻撃によって、経済資産の収奪、知的財産権違反、市場アクセスの障害、通貨レート操作などを実施し、米国に重大な損害をもたらす。

■ 習近平主席は「新型大国関係」を推進すると言明

 サター氏は、こうした中国の攻勢を受けてオバマ大統領の対応が明らかに変化してきたことを強調する。

 オバマ大統領は就任してから6年以上の間、中国との協調的な関係の構築を求めてきた。中国側がそれに反する言動を見せても抑制された態度を保ち、中国の名を挙げて批判したり非難することは一切しなかった。だが、最近はその協調政策を変えてきている。最近、オバマ大統領は頻繁に中国の名を挙げて批判するようになったという。

 一方で、習近平主席は、今なお米国とは「新型大国関係」の構築を推進すると公式に言明し続けている。オバマ大統領の声明も含めた米国側の不満や非難に対して、中国側は閣僚級もしくはそれ以下の官僚に対応させ、簡潔に反論を述べるだけで済ませてきた。だから国家主席としては、あくまで米国との協調を求めるという態度は変えていないというわけだ。

 だがその一方で、中国当局は米国の利益を侵害する行動を取り続けている。サター氏は、中国がこうして裏表を使い分ける態度を「欺瞞作戦(ダブルゲーム)」と特徴づけた。

■ 日本にも向けられる外交の二面性

 サター氏は、習主席のこの新たな外交攻勢を「近隣諸国や米国に不利益をもたらす大胆な構想」であり、「『国力の回復』や『中国の夢』などという曖昧な自己陶酔の探求」だと描写する。

 そして、中国がこうした野望を抱くことになった土台として以下の要因を列記した。

 ・経済(過去30年にわたって毎年平均10%以上の経済成長を達成し、製造業、貿易、外貨保有などで世界一の地位を得た。また外国から巨額の投資を受けた)

 ・軍事(過去20年にわたって毎年平均10%以上軍事予算を増大させた。その結果、アジアで最大かつアジア地域で米軍に挑戦できるだけの能力を持つに至った)

 ・政治(アフリカやブラジルの最大貿易相手国となり政治的影響力を発揮するようになった。その他の地域でも政治的な役割が増大した)

 習近平政権は、こうした外交の二面性を米国だけでなく日本に対しても行使する可能性が十二分にある。日本も要注意ということだろう。


米国の空母打撃群派遣を中国は間違いなく逆手に取る
JBpress 3月10日(木)6時15分配信

 かねてより九段線を設定して「南シナ海の大半は中国の主権的領域である」との主張を展開している中国と、南シナ海での軍事的優勢をなんとかして確保しておきたいと考えるアメリカ軍の応酬が激しさを増している。

 アメリカ海軍は、さして効果的ではないと考えられている「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)に加えて、いよいよ先週には、多数の艦載機を搭載した原子力空母ステニスを中心とする空母打撃群(艦隊)を南シナ海に送り込んだ。

■ 「アメリカこそが南シナ海での軍事化を進めている」と中国

 アメリカ海軍の太平洋艦隊司令官を務め現在は太平洋軍司令官の重責を担っているハリス海軍大将や、対中牽制派のアメリカ軍人やシンクタンクの研究者たちは、かねてより南シナ海や東シナ海での中国による軍事的侵出政策に警鐘を鳴らし、アメリカは断固たる軍事的牽制を加えなければ「取り返しがつかない状況になりかねない」と警告を発し続けてきた。

 しかしオバマ政権は、対シリア政策と同様に、中国の覇権主義的海洋政策に腰が引けた姿勢で接してきたため、太平洋艦隊などから湧き上がっていた対中強硬姿勢はなかなか実現することはなかった。

 そして、2014年2月頃、中国が人工島建設らしき埋め立て作業を南沙諸島で実施しているのが確認され、それから2年と経たないうちに7つもの人工島が誕生してしまった。

 さすがに、7つの人工島誕生が現実的なものになり、そのうちの3つに立派な航空基地となりうる3000メートル級滑走路まで確認された2015年秋になると、ようやくアメリカ政府はハリス大将をはじめとする対中牽制派の要請にゴーサインを出し、10月と今年2月にアメリカ太平洋艦隊駆逐艦によるFONOPが実施された。

 しかし、依然としてアメリカ政府の対中姿勢は融和的であった。海軍の対中牽制派が目論んでいるような、中国側を威圧するような強硬なFONOPを実施することはできず、「単に無害通航権を行使しただけの穏健なFONOP」が実施されたにとどまった。

 そのため、中国側がこれらのFONOPを「アメリカによる断固たる軍事的圧力」と受け止めた形跡は皆無であった(口では「脅威を受けた」と言ってはいるが)。

 それどころか、アメリカ海軍が2回目のFONOPを西沙諸島で実施すると、「永興島(ウッディー島)が軍事的脅威にさらされているため自衛措置が必要である」として、中国軍は永興島に対空ミサイル部隊を配備してしまった(永興島は西沙諸島に位置し、南シナ海の“中国海洋国土”を管轄する三沙市政府機関が設置されている)。

 それに対してハリス太平洋軍司令官は、2月24日に行われた連邦議会での公聴会で「中国は明らかに南シナ海に軍隊を展開して軍事拠点化しようとしている」と証言し、それを認識しないことは「地球が平らであることを信じるようなものだ」と、政府や議会に対して断固たる対中牽制策実施の必要性を訴えた。

 すると中国側は直ちにハリス提督の指摘に対する反論を展開し始めた。そして中国で全人代が始まると、全人代の傅瑩報道官は「南シナ海で起きていることをよく観察してみれば、最新鋭の軍用機や軍艦を南シナ海に送り込んでいるのはアメリカだ」と指摘し、「アメリカこそが多くの同盟国を巻き込んで南シナ海での軍事化を進めている張本人である」とアメリカのリバランス政策を強く批判したのである。

■ ついに空母打撃群を派遣

 ハリス太平洋軍司令官の議会証言を皮切りに「口による戦争」が米中間で開始されると、アメリカ海軍は空母打撃群を南シナ海に向けて進発させた。

 今回、南シナ海に展開することになった空母打撃群を構成しているのは、シアトル郊外ブレマートンを母港にしている原子力空母ジョン・C・ステニス、横須賀を本拠地にしているアメリカ第7艦隊旗艦の揚陸指揮艦ブルーリッジ、イージス巡洋艦アンティータム(母港:横須賀)、同じくモービルベイ(母港:サンディエゴ)、イージス駆逐艦チャン=フー(母港:パールハーバー)、同じくストックデール(母港:サンディエゴ)の6隻からなる艦隊である。もちろん公表はされていないが、原子力潜水艦が少なくとも1隻は警戒のために同行している。

 アメリカ太平洋艦隊司令部は、「南シナ海でアメリカ海軍は長い間にわたって艦艇や航空機による日常的なパトロールを実施してきている。たとえば、2015年の1年間に太平洋艦隊の艦艇が南シナ海を航行した“延べ日数”は700日である」と、空母打撃群が南シナ海に展開していることは「なにも中国側に圧力をかけようといった趣旨の軍事的示威行動ではない」との声明を発した。

■ 中国側にとっては軍備強化の口実

 そうはいっても、第7艦隊旗艦まで同行する空母打撃群を、このタイミングで南シナ海に展開させたことがただの日常的なパトロールではないことは明らかである。アメリカ海軍関係者たちも、「アメリカ海軍と国防総省が、南シナ海に対する強く懸念を抱いているとの意思表示を込めるとともに、アメリカ海軍は世界中に強力な艦隊を送りこめる能力があることを示威するものである」と認めている。

 中国側が反撃を開始することは間違いない。

 といっても、もちろん空母打撃群にミサイルを打ち込むような直接的反撃ではない。空母打撃群というアメリカしか保有していない強力な海軍戦力の南シナ海への展開は、すでに傅瑩報道官が指摘した「アメリカによる強力な海洋戦力の南シナ海への展開」そのものである、と中国側は言い立てるであろう。

 そして、「アメリカによる軍事的脅迫から、中国の主権を自衛するため」と称して、7つの人工島にも地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊を堂々と設置し始めることは確実だ。

 また、それらの島々への民間施設の建設(民間人居住者という人間の盾の配備)と並行して、軍用航空施設や軍港施設それに各種レーダーサイトの建設も急ピッチで進めることになるだろう。

 何と言っても中国は、「アメリカが強力な空母打撃群まで派遣して、中国の海洋国土を脅かしている」という“大義名分”を振りかざすことができるようになったのだ。

■ これまでのセオリーは有効なのか? 

 アメリカ海軍が「オバマ政権の煮え切らない対中姿勢にいつまでも引きずられていては、南沙諸島や西沙諸島に設置された多数の軍事拠点によって南シナ海での優勢が完全に中国側にとって変わられてしまう」との強烈な危機感から空母打撃群を展開させたのは、これまでのアメリカ海軍のセオリーに則った行動ということができる。

 しかし、南シナ海は中国海洋戦力にとっては前庭のようなものである。一方、アメリカ海洋戦力は遠征部隊を派遣しなければならない。この地理的条件のために、圧倒的に人民解放軍が距離の優位を手にしている。

 また、人民解放軍は南沙諸島や西沙諸島に多数の軍事拠点を設置してしまったため、南シナ海の大海中に点在する「移動はできないが決して沈むことのない」陸上拠点からアメリカ艦艇や航空機を攻撃することができる。

 これらの理由などによって、「今までのように空母打撃群を派遣した程度では、1996年のいわゆる台湾危機のように中国側を威圧する効果はさして期待できない」と懐疑的な意見も少なくない。

 「将軍は過去の戦争経験で将来の戦争を戦おうとする」とはよく言われる格言であるが、中国の前庭のような南シナ海や東シナ海での対中牽制作戦にとっては、かつては絶大な威力を発揮したアメリカ海軍が誇る空母打撃群も、もはや賞味期限切れなのかもしれない。今、アメリカ(そして日本)にとって必要なのは、新機軸の対中封じ込め戦略である。


二度目の“航行の自由作戦” 敢行した米国の真意は
Wedge 3月9日(水)12時11分配信

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 Diplomat誌のティエッツィ編集長が、1月30日に行われた米国によるトリトン島への航行の自由作戦は昨年10月の作戦とは違う法的意味を持ち、それゆえ中国の強硬な反応を惹起している、と指摘しています。論旨は次の通り。

 1月30日、米駆逐艦カーティス・ウィルバーは、航行の自由作戦(FONOP)の一環として、中国が実効支配するパラセル諸島のトリトン島(ベトナム、台湾も領有を主張)の12カイリ内を航行した(「航行の自由作戦FONOP」)。これは事前の通報が必要とされない無害通航として計画されたものだった。

 中国外務省は、中国の法律を犯し中国の承認なくしてその領海に侵入したとして厳しい反応を示すとともに、中国の領海接続水域法により外国の軍船は領海に入る際は中国の承認を必要とする旨を述べた。

 米国の狙いは、無害通航について事前の承認を要求する正にこの国内法に対抗することにあった。アシュトン・カーター国防長官は声明の中で、「この作戦は、領海を通過する際に事前の承認ないし通告を要求し自由航行の権利と自由を制限しようとする中国、ベトナム、台湾の試みに挑戦したものである。過剰な主張は海洋法条約に具現される国際法と整合しない」と述べた。

一層強まる中国の反発
 2月1日、中国外務省は米国のこの説明を拒否した。さらに、「米国は航行の自由の名のもとに海洋覇権を追求しており、米国による力の示威が南シナ海の軍事化の最大の原因である」と主張した。同省報道官は中国の艦艇や航空機は直ちに対応したと述べたが、米国防省は中国艦艇による米艦の追尾はなかったと述べた。

 10月の作戦と今回の作戦はいずれもFONOPと分類されているが、法的な理由は明確に違う。10月の作戦は中国が建設した人工島は法的には低潮高地であり島とは見なされないことを突き付けるものだった。中国は怒ったが人工島にも領海があると主張することは避け、非難は曖昧だった。

 しかし今回は違う。中国はパラセル諸島の領海を明示的に主張するのに対して、米国は、中国の主張の二つの点(事前の承認と領海の基線の引き方)について対抗している。米国は、中国の主張は過剰であり国際法に整合しないと拒絶する。中国の反発は一層強いものになる可能性がある。

 米国のFONOPはこれで終わりではない。ハリー・ハリス米太平洋軍司令官は、FONOPはこれから増える、「挑戦水域」での複雑さと範囲も拡大していくだろうと述べている。

出典:Shannon Tiezzi,‘China Rejects Latest US FONOP in the South China Sea’(Diplomat, February 2, 2016)

 1月30日の第二回目の航行の自由作戦は、領海の有無ではなく領海の中味に関する中国の立場)に真っ向から挑戦するという点で、第一回目より法的意味合いはより直截である、との論説の指摘はその通りでしょう。

今回の作戦の背景に透ける歴史的経緯
 しかし、問題は領海の線引きと無害通航だけに限られません。この記事は言及していませんが、中国がこの島を実効支配するようになった歴史的経緯にも注意が必要です。トリトン島は、元来、南ベトナムが実行支配していました。しかし、1974年に中国が銃撃戦により同島を含むパラセル諸島の全島を自らの支配下に置きました。その後統一されたベトナムが中国にこの件を提起してきましたが問題は解決されず今日に至っています。米国は領土紛争については判断を明らかにしないとの原則論を維持していますが、今回の作戦の実施決断にはこのような歴史的背景もあるかもしれません。ここ数十年の中国の一貫した「振る舞い」が問題なのです。1月に公表されたCSISの『アジア太平洋リバランス報告』も、2030年までに南シナ海が事実上中国の湖になる危険がある旨を警告しています。

 今回作戦への中国の反応が厳しかったと見るか、抑制的だったと見るか、見方は分かれます。筆者は厳しかったと見ており、一層厳しくなる可能性があると指摘します。他方、中国の言明にもかかわらず、中国による追尾はなかったと米国防省は明らかにしています。対中警戒心が高まる国際政治状況や上記の歴史的経緯などを考えれば、中国の立場は完全ではありません。中国としては、公的立場は強く維持しつつも、現状を既成事実化し問題がこれ以上大きくなることは当面避けることが有利と考えているかもしれません。

 米国が航行の自由作戦を継続していくことが、妥当かつ必要なことです。ハリス太平洋軍司令官の「作戦の複雑さと範囲は今後増大するだろう」との発言は示唆的です。二回目の作戦はもっと早く行われるべきだった、との批判があります。バラク・オバマ大統領が軍部による計画を抑えていたとも報じられています。米議会ではジョン・マケイン議員などが早期に実施すべきとオバマを批判していました。2月15-16日の米ASEAN首脳会議の開催がオバマの決断を促したと見方もあります。ともあれ、二回目の作戦が実施されたことには意味があります。


南シナ海での海自の役割は中国原潜の恒常監視
ニュースソクラ 3月9日(水)12時10分配信

米国の対中封じ込めに協力、課題は拠点づくり
 中谷防衛相は2月17日、来日中のハリス米太平洋軍司令官と会談し、緊迫する南シナ海問題について、日米が共同訓練などを通じて連携することを確認した。

 このことは米国が本腰を入れ始めた南シナ海での「対中封じ込め」に日本も組み込まれることを意味する。では海上自衛隊は南シナ海での対中封じ込めでどんな貢献ができるのか? それはスバリ中国戦略原潜の恒常監視である。

 中国は従来、南シナ海を巡って国際法上無理としか言いようのない領有権の主張とその実効支配を積み重ねてきた。軍事的観点に絞れば、その最大の狙いは「ソ連がオホーツク海をミサイル原潜の聖域とし、アメリカに対する核攻撃の切り札としたことと同様に、南シナ海をミサイル原潜の聖域とし、地上発射戦略核ミサイルに加えた核の切り札とする」(空自隊内誌『鵬友』2015年3月号掲載「海洋における中国の強硬姿勢」)ことにある。

 つまり固定サイロに収められた地上発射戦略核ミサイル(ICBM)は、米国に位置を把握されているため、その先制攻撃で破壊される恐れがある。このため報復力(第2撃能力)を担保するため、先制攻撃を回避できる戦略ミサイル原潜とその活動海域が必要となるのだ。

 このうち東シナ海や黄海は水深が浅く、日本や韓国に近いことから潜水艦の活動が困難であるために(同上)、南シナ海が重要となるのである。

 既に中国は海南島に地下式潜水艦基地を整備し、そこに新型の「晋」級戦略ミサイル原潜を配備して、その行動の秘匿に傾注している。

 海自は冷戦期、恒常的にソ連潜水艦の動向把握を行っており、その蓄積とノウハウを生かして南シナ海での中国戦略ミサイル原潜の行動を恒常的に監視し、米国に貢献する。それが尖閣防衛での米国のコミットメントにもつながる・・・・・・というのが、とある研究会で制服幹部が筆者に披露してくれた「私見」である。この「私見」を筆者なりに読み解くと以下の通りだ。

 南シナ海という限られた海域で平時に戦略ミサイル原潜が行動する場合、複数の航路を設けたとしてもおそらく一定の行動パターンが形成されるものと思われる。海自が恒常的な監視(主に対潜哨戒機による上空監視)からそのパターンを解析できれば、米国が有事に際して先制して中国戦略ミサイル原潜を捕捉・破壊する上で有益な情報となることは間違いない。これが結果的に日本の戦略的価値を高め、尖閣有事に際して米国の介入が期待できる根拠となる。

 しかし南シナ海で海自が監視活動を行う際にネックとなるのが、海自には活動の拠点が現在存在しないことだ。

 南シナ海で十分な監視活動を行うには、その近傍に補給・支援を担う活動の拠点が必要となる。つまり周辺国に海自の航空機や護衛艦の常時寄港を受け入れてもらう必要が生じてくるのである。例えば、米国はフィリピンから基地を撤去したが、1998年に訪問米兵協定(Visiting Forces Agreement)を締結して同国を活動の拠点にすることを可能にしている。日本も同様な協定を周辺国と結ぶ必要がある。

 これから日本は、拠点作りのための周辺国との協定の締結に奔走することになるだろう。


習近平がヒトラーに変貌する日への備えは万全か
JBpress 3月8日(火)6時10分配信

■ 米紙の衝撃的報道

 JBpressは最近立て続けに尖閣諸島をめぐる日中交戦に関し、「衝撃のシミュレーション『中国は5日で日本に勝利』」(1.27部谷直亮氏)、「オバマ政権最期の今年、中国は尖閣を攻撃する」(2.3古森義久氏)なる驚くべき記事を報じた。

 前者は米ランド研究所のデヴィッド・シラパク氏の尖閣事態シミュレ―ション公開リポートの紹介である。

 「日本の右翼が尖閣に上陸すると中国海警が逮捕し海警と海保が衝突、日中の艦艇・軍用機が展開し中国艦の空自機への発砲から日中交戦が始まり、米潜水艦が中国艦を撃沈すると中国は米国西部をサイバー攻撃、また対艦ミサイルで海自艦艇を撃沈、中距離ミサイルで日本本土を攻撃。米国は日本の空母参戦と中国本土基地攻撃要請を拒否し、中国は5日間で尖閣を占領」とその内容を伝えた。

 後者は28.1.25付ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された米ハドソン研究所のルイス・リビー氏らの論文『北京の次の先制行動は東シナ海だ』(Beijing’s Next Gambit, the East China Sea ;By Arthur Herman and Lewis Libby)に関するもの。

 「中国は日本と密接な関係を持ちながらも突然尖閣に軍事行動を開始し両国の軍事衝突になる。オバマ政権は日米安保発動の日本の強い要請を抑え日本は引き下がり外交的解決を求めるが、国際調停で中国の主張がより支持され尖閣領有権主張が日中対等に扱われることになる」との主張とそれへのコメント記事。

 これに対し、元航空自衛隊空将の織田邦男氏は、ランド研究所のリポートについて「あまりにも稚拙なシミュレーション」と批判(本誌2.4)する。

 「そんな前提はあり得ない。米が潜水艦を参戦さても中国が軍事行動を停止せず、米国がサイバー攻撃で大きな社会混乱を起こされても参戦しないはずがない。近代戦を支配する航空戦に少しの配慮もなく話にならない。これらは米政府にあまり深入りするなとの警告を促すものであり、あるいは中国の思惑を入れての仕業(コミットメント・パラドックス)である」と主張し大方の賛同を得ているようだ。

 確かにその可能性も高い。しかし、中国が米空母2隻の行動でミサイル発射を中止(1996年:台湾総統選挙)したのはまだ対艦ミサイルを十分保有しなかった時代のことで、現在の米中の相対的力関係とは著しく違っている。中国の軍事力を少しでも過小評価するようなことは危険である。

 前者が海自の撤退収容で終わるのは、あたかもベトナム戦争の最期を見るようだし、後者には、アドルフ・ヒトラーによるチェコスロバキアのズデーテン地方割譲要求を認めた「ミュヘン宥和」の歴史的愚挙を想起させられた。

 こうした歴史を振り返れば、中国が日本と通常の関係を保ちながらも突然短期局部的軍事行動を仕かけることは十分考えられる。

 米国はその尖閣攻撃事態発生に対し、大統領を含む政府高官が「尖閣は安保5条の適用範囲で米国は日本を必ず護る」としばしば公約している。しかし、実際にはミュンヘン宥和のような事態が発生する恐れはないだろうか。

 もし、尖閣諸島が中国から攻撃された場合、米国は自らの国際的信頼性が一気に地に落ちることを承知で、日本の要請を抑えて中立を守り、日本本土が中国の中距離ミサイルで大被害を受けても、空母を大西洋に逃がしたり、国際調停で中国の尖閣領有権の主張を認めたりする可能性は否定できない。

 現実問題として、中国が尖閣諸島に対して本格的侵攻を行う危険性はそれほど高くはないかもしれない。しかし、前者のシミュレーションは地位の確立した専門家のものであり、後者の論文はブッシュ政権の国防次官補らによる論文で「最善を期待し最悪に備える」べき安全保障の原則からして軽々しく扱ったり無視していいものではない。

 米国は尖閣諸島防衛を公約していても軍事支援を発動しないことがある。国家防衛に強い意志と能力を欠くものは見捨てられるという国際政治の非情さを忘れてはならない。

 政府も国民も等しく短期的局部的な中国の軍事行動はいつでもあり得ることを覚悟し「自分の国は自分で守らなければならない」現実に目覚め、その指摘する日本の安全保障上の根本的欠陥是正の警鐘を真剣に受け止め、すみやかにこれらを改善しなければならない。

■ 尖閣防衛には何が必要か、彼らの警告

 政府は尖閣事態に対する米国の公約履行の確証を高めるべく施策するとともに、防衛省・自衛隊は尖閣事態に対しこれを抑止・対処するため、南西方面を防衛努力の焦点としてその対応を急いでいる。

 例えば陸上自衛隊では、島嶼奪還部隊のための水陸両用部隊の整備、与那国島への沿岸監視隊、石垣島への対艦・対空ミサイル部隊と警備部隊の配置、奄美大島への対艦・対空部隊配置、「オスプレイ」の導入、作戦部隊の軽快な輸送展開のための師団・旅団の軽量化を進めている。

 海上自衛隊はイージス艦2隻の迎撃ミサイル「SM-3」の装備化と2隻の新造、潜水艦6隻の増加を図る計画である。また航空自衛隊は既に九州から1個飛行群を那覇に移し第82航空隊の部隊と合わせ第9航空団を新設し「F-15」を倍増し40機体制とした。

 海上保安庁も保安官・巡視船を増加し石垣島に尖閣海域監視専任部隊を設けた。

 しかし彼らが指摘しているのは、そのような戦術レベル次元を超えて戦略レベルあるいは国家安全保障レベルの欠陥なのである。

 すなわちこの論文とシミュレーションが指摘する最大の問題は、再言するが中国は予期しない時に突然軍事攻撃を仕かけることがあり、その場合米国は予ての国家公約(オバマ大統領や国防長官や軍高官の発言)にもかかわらず尖閣事態に軍事支援を避けることがありうるという深刻な問題だ。

 第2次世界大戦を誘発してしまった「ミュンヘン宥和」が尖閣諸島を舞台に再現されないと誰が断言できるだろうか。中国の習近平国家主席がヒトラーのような野望を抱いていないと確信できるのだろうか。

 日本がもっぱら米軍に期待している抑止力を欠き、我が国本土までが一方的に中国のミサイル攻撃に晒され、またそのサイバー攻撃によって社会インフラ、政官軍経のシステムが機能を失う危険性は常に念頭に置いておかなければならない。

 またこれらのリポートは、作戦部隊の作戦輸送展開と戦力発揮のためこれ支援さるための兵站的支援確保に信頼性が乏しく、加えて航空基地などに掩体(えんたい=敵の砲弾から身を守る土嚢などの装備)が全くなく甚だ脆弱であることも指摘している。

 中国が容易に兵を動かすのは、国境における短期的攻撃がインド(1959、62)、ソ連(69)とベトナム(79)の例でも知られる。インドとソ連の両国は敢然と戦いこれを阻止したが、ベトナムは海上戦力が弱く西沙諸島では固有領土の島嶼を軍事占領された。

 中国は核大国のソ連とさえダマンスキー島で戦い半分を領有化(1969)した。決して油断できる相手ではない。

 日本が尖閣諸島を絶対に守り抜く強い意志と現実的態勢を示し中国に乗ずる隙を与えず、またいかに日米安全保障条約の信憑性を確立するかが問題である。しかし今日までの施策ではその保証は薄弱で抜本的見直しが必要である。そして諸々の形骸的防衛政策を刷新することも不可避である。

■ 日米安保条約信憑性の確立

 中国が尖閣に武力攻撃をすれば、米国は日本の救援に必ず必要な武力を行使する姿勢が確信されれば、核大国同志の米中の戦いは最終的には核戦にも繋がる恐れがあり、ともに国家の存非のリスクを懸ける決意しなければならないので、両者の武力対決は強く抑止されよう。

 したがって平素からいかに米国が日本に対する中国の武力使用に対して、不退転の決意で日本防衛に参戦する不動の意図をコミットするばかりでなく、日米の現実の関係と軍の態勢と活動を示すことによって中国に誤解を生じさせないかが肝要になる。

 しかし、この論文などが示すように日米は、いまだ真の運命共同体ではない。一般米国民の世論のみならず政権当事者も、無人の岩礁の日中の争いになぜ米国の青年の血を流さなければならないかと考えるのは当然だ。

 そして、仮に中国がアジア・西太平洋を支配しても、ハワイ以東を支配できれば米国の安全は保障され経済繁栄に支障はないとの意見もある。米国の国力の相対的衰退と現在進行中の大統領予備選挙からも米国政治の内向き傾向がさらに強まることが容易に観察できる。

 日米同盟信憑性の確立は容易でない。しかしやらなければならない。

 第1は尖閣諸島の持つ日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)・米国にとっての至高な戦略的価値と安全保障上の象徴性を米国政府と国民に一層認識させる努力だ。

 第2には日本自身が米国にとって失い得ない国際戦略上の大きな価値を持つことだ。強い経済力・外交力に加え強い防衛力を構築し、アジア・太平洋の安全保障にしぶしぶ関与するのではなく、覚悟を持って積極的に先導し、米国を巻き込みASEAN・豪・ニュージー-ランド・印と共に中国の国際法侵害対処に行動しなければならない。

 これはちょうどヒトラーの修正主義の領土拡大の野望を前にし、英国が米国を巻き込み現状維持派の諸国に訴え国際情勢を指導したのに似ている。

■ 抑止目的達成のための政策の刷新

 我が国の防衛政策の第1はもちろん抑止である。しかしながらその実態は抑止のための能力を整備しないばかりか愚かにもそれを機能しないような政策ばかりを進めている。

 具体的に示そう。古くは鳩山一郎総理の時代から「我が国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。――(したがってその)誘導弾等の基地を叩くことは法理的に自衛の範囲に含まれる」(衆院内閣委S31.2.29)との一貫した立場を取りながら、「我が国防衛力は周辺諸国に脅威を与えてならない」とし「専守防衛」を政策の基本にしている。

 この「専守防衛」なる軍事用語は世界にないが、「侵攻を受けたら立ち上がり、防衛力の行使を発動し日本を防衛するとするものである」とされる。このため戦闘機の行動半径を抑えるため態々その空中給油装置を外したたり、対地攻撃能力の保有を禁止し、ミサイルの射程を厳しく制限してきた。

 このため、日本への侵略を考える周辺国は日本の持つ防衛力に脅威を感ずれば感ずるだけその企図が封ぜられ即ち抑止されるのに、その脅威をなくし、加えて不意急襲的第一撃で自衛隊の各基地の航空機、護衛艦が一挙に壊滅させられる公算を大きくし、かえって相手を侵攻の誘惑に駆り立てる危険性を高めている。

 したがって、抑止を政策の基本とするならば、敵に乗ぜられない隙のない強靭な防衛力を備え周辺に無言に厳然たる脅威を与え、特に強力なサイバー能力を整備するとともに、我が国を攻撃する基地を破壊できるよう航空機の對地攻撃能力を整備し、かつ中国や北朝鮮の中距離弾道弾攻撃基地を叩き得る誘導弾を整備しなければならない。

 こうした論議に対して、日本が中距離誘導弾(弾道あるいは巡航)を持っても、奥地からさらに長い射程のミサイルで国家中枢を狙われ、その攻撃の意図を封ずることはできない。したがって中国の中距離ミサイルに対抗せんとするのは誤りであるとする説がある。

 しかしその考え方は、戦争はいつどんな場合でも無限界に全面戦争に拡大するとして、戦争にあるラダ―(ladder:堺域)の存在を無視するものである。

 また中国はミサイルの射程を増大すればするだけ、ますます日・米・豪・インドなどが結束してその対抗施策を講ずることを危惧しし、中国が最近、ミサイル開発を抑えようとしているとする主張がある。

 しかしそれは自説の合理性を裏づけようとする一方的理屈ではないのか? 

 それが事実であれば、中国のアジア西太平洋から米国勢力を駆逐せんとする意図を放棄した明確な証左や、南シナ海における領有権争いのある岩礁を埋め立てて造成した軍事基地を放棄するなどの確たる事実でこれが証明されなければならない。

 しかもリスクが高い侵害ほど発生の蓋然性は少なく、その大きい蓋然性のあるリスクに備えることに合理性が有り、日本が中距離ミサイルを保有する大きなメリットを忘れてはならない。

 この中距離ミサイルを、我が国で独自に開発国産化するには、相当の期間と経費を投入しなければならない。しかるに幸にも、米海軍にはトマホーク巡航ミサイル(射程1250、1650、2500、3000キロの各種、価格1億円前後)があり、海自艦はその発射装置VLS(MK41)を既に装備しておりミサイルの購入と計画飛行制御装置の導入だけで済む。

 仮に対中国用に1000発、北朝鮮用に200発の計1200発を整備したとしても費用は1200億円程度であり、これはいずも級大型護衛艦の建造費に相当するが、何年間かに分けて整備すれば何隻かの耐用艦齢の延長によって、費用の捻出が可能でありその防衛効果は絶大である。

■ サイバーセキリティ能力の抜本的強化

 サイバー戦争は第5の戦いの空間として、平戦両時に、しかも瞬時に、国家・軍事機能が全面的に麻痺混乱喪失させ得る特殊な脅威を有する。サイバー攻撃は兵器開発の詳細な図面も容易に知らない間に盗み取られ、その危険性は往時の暗号文傍受解読の比ではない。

 ロシアは世界最強のサイバー戦能力を有すると言われるが、中国が絶えず米国日本に陰に陽にサイバー攻撃を仕掛けていることは公然たる事実だ。そのため中国が強力な該軍事組織(61398部隊等)を持ち、加えて民間に膨大(800万人とも)な専門家集団を養成していることはよく知られているところである。

 中国が開発中といわれる第5世代ステルス戦闘機「J-20」が米国などが開発し、空自が導入を図っている「F-35」と外形がそっくりであるが、これもサイバー戦の重大な一面として認識しなければならないであろう。

 このため、米軍は大将を長とする数千人規模の統合軍を設け、韓国もサイバーコマンドを保有(公表6800人)し国防費の3%を振り当てていると言われる。

 翻って、我が防衛省・自衛隊のそれを見ると地位と名は立派な統合部隊だが前者に比べれば真に貧弱な憐れな憂うべき存在でしかない。

 防衛省は速やかに民間のホワイトハッカーを急募し、少なくとも現情報本部位の態勢を整備しサイバー戦の攻防兼備の能力のある部隊に画期的に強化し、政府も特命大臣を置きサイバーセキリティに国を挙げて取り組まなくてはならない。

■ 自衛隊を戦い得る体制への緊急措置

 自衛隊は形は何とか揃っているが、よく観察すれば実戦能力に乏しく瞬発力を発揮できても、人的物的に縦深性を欠いていることを認めざるを得ない。

 陸上自衛隊の部隊は米国が32万10個師団の整備を求めたのに18万で13個師団を編成したから、師団と称しても人員も装備も少なく、国内戦を理由に兵站機能を極端に絞り、戦闘員も多くの任を兼務するから少しの損害発生で全部隊の機能が大きく失われる宿命的脆弱性を持っている。

 しかも財務省は、定員に対してさらに充足率を課しているから初めから本来の能力を発揮できない。もとより自衛隊の装備・弾薬・燃料・部品の備蓄は甚だ乏しいうえ、これを必要方面に移動する十分な手段が準備されていない。

 陸上自衛隊は南西方面の事態に対応するため、1個機甲師団、3個機動師団、4個機動旅団を整備しようとしているが、これらの南西諸島への部隊・装備の緊急輸送も陸自および空自の航空輸送力は大きな限界があり、海上自衛隊も輸送艦は僅か3隻しか持たず、民間ヘリーなどの庸船を前提としている。

 だが、果たして業務に就いている船の緊急確保が可能なのか、何より危険な業務につく多くの船員の協力が得られるかの保証は全くなく、それには国家的な法的準備がなければ不可能である。

 参考に記しておくが、1個作戦師団の必要輸送所要は40万トンとされるのが常識である。陸自の師団は規模が小さく軽いからその4分の1、旅団は規模が師団の2分の1であるから8分の1、機甲師団を2分の1として計算しても所要合計は実に70万トンにも上る。

 この所要を容易に確保可能できるだろうか。最近北朝鮮のミサイル発射実験に備え、イージス艦(SM-3Aは射高300キロ・射程数100キロ位)とPAC-3部隊(射程20キロ程度)が展開したが、日本のBMD (弾道ミサイル防衛)は層が薄く、防護空域が限定され過ぎる。PAC―3は本来陸軍の野戦の拠点防空用のものだ。

 したがって速やかにSM-3B(射程、射高は1000キロが期待される)を開発装備化するとともに空自各高射隊はそれぞれPAC-3の半分をTHAAD(射高約150キロほど)に換装することが必要だ。

 陸・海自使用の対艦ミサイルの射程は短か過ぎるし、中国海警にはフリゲート艦の転用船があり更に軍艦仕様の超大型巡視船を建造中と報ぜられるが、そんな船に体当たりされては商船仕様の海保の巡視船はひとたまりもない。

 戦時所要の大きく拡大が予想される予備役自衛官は、我が国の社会制度と特殊な社会環境から質量ともに致命的な欠陥を持っている。

 新しい防衛計画では統合機動防衛力整備の名の下に、北海道以外の師団・旅団から戦闘力の骨幹である戦車と火砲を外すそうであるが、これでは作戦部隊でなく、警備師団(旧陸軍の後方警備にに任じた独立混成旅団)に過ぎなくなる。

 「国防力の相対的優劣は国際関係に影響を及ぼす」(「国際政治」モーゲンソー)と言われるが、最近力信奉のロシアが対日姿勢を強硬にしているのは、これが反映しているのかもしれない。

■ まとめ

 ある高名な国際政治学者は、国際情勢が不安定になったのは、「米国が弱くなり中露が強くなったのでもなく、中露が地域覇権を模索しながらもバラク・オバマ政権が軍事介入に消極的になったからだ。しかし次の政権が戦う姿勢になれば世界の不安定さは加速するだろう」と言っている。

 立派な国際政治学者の御託宣であればそういう公算が高いのであろう。しかし核大国の米ソが対立した冷戦時代は安定し、その終焉とともに世界は一挙に不安定不確実の情勢に陥り、世界の誰もが不安に悩ませられたのも否定し難いものがある。

 したがって、米国の次期政権がその第一流の国力と軍事力を背景に、国際秩序を侵すことは軍事力使用してもこれを許さないとの厳然たる政策を採用すれば、かえって世界情勢は安定するのではなかろうか。

 思うに、日本が世界最大の長期負債を抱え、少子化で人口問題が危機的状態に陥り、自国の防衛が形骸化の姿にあるのは「環境に適応できない種は生き残れない」(ダーウィン)のに世界の情勢変化に目をつぶる国民におもねり、政権がその維持にまた政治家が票を求めることを優先し、国家の長期的基本問題を放棄してきたからである。

 万一の場合に備え、国防の象徴尖閣防衛を事態的に確実にするためには早急に警察官僚が警察原理で作った国防政策と自衛隊を軍事原理で刷新することが現下日本の国家的緊急課題である。


中国の南シナ海要塞化を見逃す米国の凋落と歴史観
JBpress 3月7日(月)6時10分配信

 南シナ海における中国の傍若無人の行動を見るにつけ、アジア重視にピボットしてリバランスしたはずの米国に疑問が湧いてくる。

 カリブ海と南シナ海では米国にとっての意味が異なることは分かる。しかし、ソ連がキューバにミサイルを持ち込んだ時の対応に比して、中国の南シナ海における行動に対しては余りにも対応が鈍い。

 軍首脳たちは対応が遅れれば遅れるほど、大きな犠牲が伴うことを進言しているようであるが、2回ほど「航行の自由」作戦を行っただけでる。「世界の警察官ではない」と宣言した大統領には別の思惑があるのかもしれない。そうした米国の対応を見越して、中国は急ピッチで南シナ海の軍事拠点化を進めている。

 内向きのバラク・オバマ政権で、果たして日本の安全は保障されるのか。日本はどういう立ち位置で行動すればいいか、今一度真剣な考察が必要であろう。

■ 台湾の政権交代を追い風に

 台湾では先の総統選挙で親日的な蔡英文氏が大差で勝利し、5月に8年ぶりの政権交代が行われる。同時に行われた立法院選挙でも民進党が過半数を超す議席を確保し、与党による安定した議会運営が期待される。台湾の現状維持は日本のシーレーン維持のためにも不可欠である。

 しかし、中国が主張するように南シナ海が中国領となり、内海化して対空ミサイルや戦闘機・戦闘爆撃機を配備し、さらに防空識別圏を設定すると、海上自衛隊や米第7艦隊は通りにくくなる。それはとりもなおさず台湾の孤立化であり、その先にあるのは台湾の香港化であろう。

 その結果、台湾海峡とバシー海峡の自由航行が阻害されることになれば、南シナ海を通る日本のシーレーンは遮断され、ASEAN(東南アジア諸国連合)との通商は大きな打撃を受けることになる。

 もちろん、中東からの原油輸送も南シナ海の航行ができなくなれば迂回が必要で、長大な航路となり、経済的損失は計り知れない。また、台湾を拠点に東シナ海における中国の活動は一段と加速され、尖閣諸島が大きな影響を受けることは必定である。

 このように考えると、日本と価値観を同じくする台湾が健在することは、何よりも日本の安全保障にとって不可欠の要件である。

 いまは台湾が頑張ってくれているから海峡通過が可能であるが、中国の影響下に入ったならば、万事休すである。中国は尖閣を自国領にして、台湾に影響を及ぼしたいと思っている。そうした意味で、尖閣諸島の重要性も浮かび上がってくる。

 台湾の命運は日本の安全保障にもかかわる。リチャード・ニクソン政権(当時)の動きに慌てて、台湾をあっさり切り捨てた日本であるが、中国が国際社会の声を無視する形で南シナ海の内海化を図っていることに対応して、日本は対台湾関係で新たな施策を取るべき時ではなかろうか。

 先の国会での安保法案が理解されにくかったのは、緊迫している国際情勢についての議論を野党が避けて憲法論議に持ち込んだからである。

 南シナ海の現実に照らして、一段と法案の重要性が認識されなければならない現在である。破棄法案を提出する野党の無責任はいくら批判してもし過ぎることはないであろう。

■ 日本の立ち位置

 中西輝政・京都大学名誉教授は「愚かにも、ここ20~30年、日本では政府も国民も鄧小平以後の中国は平和志向に変わった、と妄想した」(『正論』2015年3月)と悔しがる。

 日本が自国に都合がいいように妄想したこともあろう。しかし、日本が独自にとり得る中国に関する情報が少なく、米国がもたらす情報で行動せざるを得なかったということが大きい。

 その米国には前科がある。戦前の米国は「日本帝国主義に痛めつけられた中国」という認識が強く、南京攻略戦を中国が南京大虐殺に仕立てるのに多大の協力もした。中国の報道はおかしいと米国民に呼びかけたラルフ・タウンゼント元上海副領事などは戦争中、フランクリン・ルーズベルト大統領によって牢獄につながれたほどである。

 戦後の米国は「可哀そうな中国」ではないが、しっかり支援してやれば米国に応えてくれるといった認識から同盟国である日本と天秤にかけ、時には中国に肩入れして日本敵視政策をとる状況もあった。

 日本人の中国専門家、もっと広く国際問題専門家と言われる人たちの講演をいくつか聞いたが、米国は中国をこう見ているという話が主体で、日本も米国と同じ視線で中国を見ておれば大丈夫だろうと言った論評がほとんど。独自に10年後、20年後を語る話はあまり聞けなかったように思料する。

 中国の政治的状況や軍政関係など、内部からしか得られないような内容の話をすれば、自国民でさえ容赦なく逮捕する国への入出国が難しくなることもあり得よう。そうした配慮から話を控えているのかも知れないと惻隠の情で聞いていたが、根本的な情報が欠落しているというのが実態のようであった。

 そうしたところに、米国から次々に対中警戒の声が上がってくると、日本の報道機関はそうだったのか、それほどまでに中国の傍若無人ぶりが増大して危険な状況になりつつあるのかとびっくりし、慌てて報道し始める仕儀である。

 日本は独自の核抑止力を欠いているので、米国に強く言えない。あるいは米国の対中政策と違った行動をとり得ない、あえて行動しようとすると圧力がかかるなどの目に見えない同盟の枷がかけられていることもあろう。

 先の北朝鮮のミサイル発射に関連して自衛隊が対処行動をとったことに関し、某氏はこの態勢をそのまま維持して、対中布陣としてはどうかという意見を出していた。対北朝鮮対処だけでなく、いや北朝鮮対処以上に中国対処が日本にとっては重要であることが忘れられているように思えるがいかがであろうか。

 いまは日本の立ち位置が定かでないように思える。

■ 中国の詭弁に寛容すぎる

 南シナ海では「(中国の)軍事拠点化の進展を示す証拠が日々、浮上している。深刻な懸念対象だ」(「産経新聞」平成28年2月19日)とジョン・ケリー米国務長官が非難した。これは昨秋訪米した習近平主席がオバマ大統領と記者会見に臨んだ時、「南シナ海を軍事拠点化にしない」と語ったことを念頭に述べたものである。

 3000メートル級の滑走路が何本も完成し、戦闘機の配備が明らかになり、また対空ミサイルの配備も明らかになると、中国は意味不明な「防衛体制は昔から存在する」「主権国家の自衛権に合致する」などと反論するようになってきた。

 尖閣諸島の帰属や南シナ海について、以前は「古代から中国のものであった」などと国際法を無視して何の根拠にもならない発言を繰り返してきた。中国流の詭弁でしかないが、こうした詭弁は今に始まったことではない。

 中国と1969年以来かかわり、米政府への助言もしてきたマイケル・ピルズベリー氏が「騙されてきた」と近著『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』で告白している。

 正確には「騙されていた」と言うよりも、「信じようとしないままずるずるときた」ということであろう。

 なぜなら、彼はビル・クリントン政権時代の国防総省とCIA(米中央情報局)から「中国のアメリカを欺く能力と、それに該当する行動について調べよ」と命じられ、中国が隠していた秘密を調べており、「(中国の)タカ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得てきたシナリオ」を発見していたからである。

 そのシナリオこそ「100年マラソン」と呼ばれるもので、「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものだったと述べる。

 ピルズベリーは中国がどうなるとみていたかを、「間違っていた前提」として5つにまとめている。

 (1)つながりを持てば完全な協力がもたらされる。
(2)中国は民主化への道を歩んでいる。
(3)はかない花、中国(と思てきた)。
(4)中国はアメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる。
(5)中国のタカ派は弱い。

 いま分かったことは、すべての前提が間違っていたということである。

 どうしてこうなるのか、孫子の兵法に見るように、中国の戦略は「戦わずして勝つ」のを最上の策としており、そのために謀略をめぐらし、相手の謀略に打ち勝つことを奨めている。こうして力がつくまでは「平和的台頭」を信じ込ませてきたのだ。

 日本が防衛白書などで「中国の軍事力増強は不透明である」と警鐘を鳴らしても、中国は常に「平和的台頭」であり「覇権国になることはない」と繰り返すばかりであった。南シナ海での埋め立てや滑走路などの敷設に対して、「軍事化を意味しない」と言ってきたのと同類である。 

■ オンショア・バランシングの米国へ

 オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語ったのは、シリアで化学兵器が使われた疑惑が持ち上がり、米国の対応が問われた2013年9月10日である。

 これは「9.11」の12周年を迎える前日のことであった。それを発火点にしたかのように、シリア情勢は一段と混乱し、ロシアはクリミア半島を侵略した。

 「オバマ大統領のホワイトハウスが現在関心を持っている世界情勢は、ロシア・ウクライナ問題、そして中東とそれに関連した国際テロが依然として大きなウェートを占めている」(『正論』2015年3月)と田久保忠衛氏は述べ、「中国の台頭、ひいては危険で野心的な膨張主義は、アジアに局面を限れば目立ってきたと感じている程度だと言わざるを得ません」とみていた通りであった。

 第1期オバマ政権は中国閉じ込めの色彩が強かったが、第2期になると、アジアへ回帰してリバランスの宣言をしたにもかかわらず、「オフショア・バランシングに変わってきたのではないか。中国と直接対峙するのは日本など同盟国や友好国で、アメリカはそれらをオフショア(沖合)、つまり後方から支援し、対抗行動をとるという戦略」(同上)で、なかなか動こうとしなかった。

 米国は昨2015年7月、4年ぶりに「国家軍事戦略」を公表した。

 中国の南シナ海における人工島造成が国際的な海上交通路にまたがり、中国軍の兵力配置を許すことや、ロシアはウクライナ軍事介入で武力行使も厭わないなどと分析しているが、「米国と同盟・友好国のネットワークは世界の安全と安定の礎となる類まれな強さがある」とし、「集団的な軍事力を高めることなどにより、侵略を阻止する」(「産経新聞」平成27年7月3日)と強調するだけで、米国が指導力を発揮するような文言はない。

 こうした米国の動きにリアリストたちが危機感を抱き声を上げ始めた。

 ピルズベリーの上記著書やジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇―米中は必ず衝突する』、さらにはアーロン・フリードバーグの『支配への競争―米中対立の構図とアジアの将来』などが相次いで出版される。

 これらの著書は『孫子』『春秋左氏伝』『三国志演義』などの古典、あるいは鄧小平が語っていた「韜光養晦、有所作為」(才能を隠して控えめに振る舞い、成すべき事は成すという意味)などの用語を多用して論述している。カギは中国の古典にあり、中国の計略にはまったという印象を強く醸し出そうとしていることが分かる。

 米国が今後も我関せずのような態度を続ければ、中国が地域覇権国になることは必定であろう。しかし、米国が地域覇権国となって以降、米国は他の国が地域覇権国となることを許したことはない。その流れからすると、米国は台頭する中国を抑えなければならない。

 そのことをミアシャイマーは自著で、「現地の国々(筆者注:日本やベトナム・フィリッピンなど)が潜在覇権国(注:中国)を自分たちの力で閉じ込められない場合には、沖合に位置しているオフショア・バランサー(注:米国)というのは、実質的にオンショア、つまり岸に上がらなければならなくなる」と述べている。

■ 米国の日本理解

 他方で、米国の行動を見ると、世界の警察官でないどころか、同盟国の警察官でもないように見受けられるというのは言いすぎであろうか。

 米国には、もともとモンロー主義という考えがあり、最小限アメリカ大陸にだけは敵性国家を近づけないし、いざというときには引き籠ればいいという考え方である。キューバ危機はそうした意識の顕現であった。

 南シナ海については「航行の自由」を主張しながら、中国の軍事拠点化にさしたる異議申し立ても行動もとろうとしない。米国の力を期待していたASEANの国々は米国を見限りつつあるのではないだろうか。

 南シナ海では中国が数年前から人工島を築き作業していたことが分かっていた。昨年は飛行場の完成、そして民間機の飛来、その後は戦闘機の発着である。今年になると対空ミサイルの搬入が明らかになった。それにもかかわらず、米国は中国の行動を抑制させるまでには至っていない。キューバの時と大違いである。

 こうした米国の動きを見ていると、日米同盟で日本の安全はどこまで保証されるのか、理解が困難になる。米国務長官や国防長官は「尖閣は日米安保5条の適用を受ける」としばしば発言していたが、米国が本当に守ってくれるのか心配でならなかった。

 そこへ、国賓として迎えたオバマ大統領が同様の発言をしたことで、これ以上の保証はないと言わんばかりに日本はすっかり安心した。

 過去の歴史や米軍占領後の尖閣を射爆場として使っていたことなどからして、「領有権」は明確であるように思えるが、あえて「領有権は日中両国の問題」と突き放す。

 こうしたことから、「安保条約の範囲内」の意味については、有識者の間でも意見が分かれている。ざっくり言って、米国が最大限の関与、すなわち戦争に訴えてでも日本の味方をしてくれるという意見から、リップサービスで中国を牽制するだけで、実際に中国が動き抑止が破綻すれば関わりを放棄するという意見まである。

 西尾幹二氏は「アメリカの対外政策をみていると、ことごとくまるで絵に描いたようなご都合主義で、私たちはアメリカを本当に信じることができるかどうかわからないという局面に、身を置いている。(中略)アメリカ人は余りにも他国を理解しようとしない。そしていまはオバマ政権の軽率かつ臆病な判断によって世界最大の軍事大国が外交的失敗を繰り返している」(『正論』2016年3月号)と書いている。

 中国発の情報の間違いと日本発の正しさを米国民に伝え続けたタウンゼントに対する米国の仕打ち、戦後の米国の行状を見ただけでも、米国の国益次第で日本は翻弄されかねない。

■ おわりに

 台湾は日本へのシーレーンを扼する戦略的要衝である。親中政権から親日政権に代わるのを好機と捉え、日台友好を深めると同時に、経済的深化を強める必要がある。

 日本単独の中国進出は危険が伴うことが多いが、台湾は中国での損失が少ないと聞く。このことは、日中の関係に台湾を噛ませることで損失の少ないルーチンを築く機会でもある。

 中国は法の支配を守らない、民主主義を否定する、IS(イスラム国)を批判しないなど、従来確立されていた国際秩序を破壊する行動を平然と行っている。

 また、中国や半島の国々の要人や広報官の声明などを聞いていると、あたかも詭弁術の講義のようである。これが国際政治の現実という理解も必要であろう。

 他方、米国はいま中国のこうした詐術に気づいたかのように主張するが、それも詭弁であるように思える。米国はとっくに中国の言行を知っていたはずである。ただ、自信過剰が災いしたとは言えよう。

 いま米国の地域覇権が脅かされそうになり、日本やASEANの結束を呼びかけているが、米国益絡みの思惑で一蓮托生にされてはかなわない。

 日本自身の立ち位置をしっかり確立することが求められているようである。


南シナ海問題は隠れ蓑か 虎視眈々と尖閣狙う中国
Wedge 3月6日(日)12時23分配信

 米ハドソン研究所のハーマン上席研究員とリビー元米副大統領首席補佐官が、1月25日付ウォールストリート・ジャーナル紙において、中国はオバマの厭戦気性を見て日本との偶発武力衝突のリスクを冒すかもしれない、今年は東シナ海が問題となる可能性がある、と述べています。要旨は次の通り。

東シナ海における武力衝突の可能性
 中国は一つの地域に世間の注意を向かせながら他の地域でことを進める癖がある。今年は、南シナ海の人工島への航空機飛行とベトナム沖への油田掘削装置の移動で始まったが、日米などは東シナ海での動きに注意する必要がある。

 2010年から問題になっている尖閣について、中国は石油の埋蔵が明らかになる70年代までは日本の主権に反対していなかった。それ以後、日中の対立はエスカレートした。2013年には中国のフリゲート艦が日本の駆逐艦に武器発射レーダーを照射し、最近は初めて重武装の海監船艇が尖閣水域に入ってきた。

 東シナ海が中国による周辺国侵入の次の場所になる可能性がある。武力衝突の可能性が高まっている。中国の政府系研究所関係者は問題解決のために危機が必要かもしれないと示唆している。中国は日中衝突に持ち込めば日本は引き下がり、外交解決を図るだろう、特に米の軍事的支持が確保できない場合にはそうなるだろうと読んでいる。関係水域に侵入する中国の航空機や「調査船」の数は増えている。

 中国は日中関係の緊密化を欲していると主張する(14年以降安倍と習近平は二回会談した。李克強は日本の財界人に二国間関係の改善を訴えた)。しかし、中国は対話と武力の示威を両用する癖がある。14年と15年、習近平がインドと首脳会談を行っている時に、中国軍は両国国境の紛争地域に部隊を移動させた(中国軍はインド首脳の抗議を受けて撤退した)。

 中国経済が悪化する中、中国は国民のナショナリズムの高揚が政権浮揚に必要となれば対外攻勢を強めるだろう。衝突は海上での偶発衝突あるいは自衛のための発砲が起き、援護のため同僚艦艇や航空機が集結することから始まる。その後、銃撃や船舶の沈没が起きうる。更に援護勢力が集結するにつれ、外交関係者は自制等を訴える。他国は日本を支持するよりも事態の平穏化がより重要だと判断するだろうから、衝突の結果中国の主張への支持が高まる可能性があると中国は計算しているかもしれない。

 問題再燃の最大の理由はオバマの退陣が迫っていることだ。中国は、ロシアやイランのように、オバマはしばしば紛争から引き下がる、行動は取らず言葉で代えると思っている。日中の対立が武力衝突にエスカレートすれば、中国は米国が日本に自制の圧力をかけるだろうと考えている。中国は、オバマは大統領選挙を前に中国と紛争を構える気はないと思っているかもしれない。

 中国はかかるリスクを冒すか。政治的目的を達成するため短期決戦を利用するのは習近平が初めてではない。73年の第四次中東戦争の際のサダトの例がある。中国軍は東シナ海で迅速に行動し、迅速にそれを終結するだろう。国際調停が叫ばれることになるが、恐らく中国の侵略は既成事実になり状況は中国に有利になるだろう。

 東シナ海問題は、石油資源や日本の領土主権といったことを超えた重要性を持つ。最重要のことは、日本の対米信頼が揺らぐことである。中国にとって、アジアにおける米の最重要同盟国を揺るがすことは石油を掘り当てる以上に価値あることである。

出典:Arthur Herman & Lewis Libby,‘Beijing’s Next Gambit, the East China Sea’(Wall Street Journal, January 25, 2016)

中国対抗には日米安保強化を
 この論説の想定は、有り得るハード・シナリオです。これを含めあらゆるシナリオへの対応を良く検討しておかねばなりません。かつてサッチャーは「こと安全保障に関する限り自分は保守的な方に間違えたい」旨を述べています。至言です。

 指摘されている中国の思考は可能性のあることです。中国の軍事力が近代化、拡大し、その使い方がおよそ国際ルールに沿っておらず、周辺国に多大の安全保障脅威を与える今の状況が早期に変わる可能性は残念ながら当面見当たりません。これは中国の安全保障についての「ニュー・ノーマル(新常態)」かもしれません。それを前提に世界はこれに対処していかねばなりません。中国の振る舞いを変える圧力を継続することも当然です。

 記事は、日本の対米信頼の重要性を強調しています。これはその通りです。他方、記事は日中衝突が起きれば米は日本に自制を求めるだろうと中国は考えていよう、と述べていますが、中国指導部が日米同盟をそれ程軽く考えていることはないのではないでしょうか。ただし、米国において「巻き込まれ論」があることには関心を持っているでしょう。尖閣が日米安保条約第五条の対象であるとの米大統領の宣言は中国指導部に事実として重く理解されていると思われます(もしそうでなければ全く非合理だと言う他ありません)。しかし、それが本当に内外に信頼性を持つようにするためには、日米関係をきちっと運営し、日米安保関係を強化していく不断の努力が必要とされます。


南シナ海 さらなる軍事化を防げるか ウッディ島にミサイル、戦闘機を配備
Wedge 3月3日(木)12時2分配信

 中国が南シナ海で実効支配する拠点の軍事化を進めている。米メディアによって、パラセル(西沙)諸島最大のウッディ(永興)島にHQ-9地対空ミサイルが配備された衛星写真が公開され、世界の注目を集めている。同ミサイルはロシアのS-300のコピーだが、射程距離は100キロほどとみられ、近くを飛行する航空機には脅威となる。米軍によれば、ウッディ島には、HQ-9の他、監視レーダーや最新鋭のJ-11戦闘機やJH-7戦闘爆撃機の配備も確認されている。中国はパラセル諸島を拠点に南シナ海北部の防空能力を高め、これによって戦略ミサイル原子力潜水艦の基地がある海南島の防衛を固めようとしているのだろう。

南シナ海を「中国の湖」とする
 また、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)はアジア海洋情勢透明化プログラム(AMTI)のウェブサイトで、中国がスプラトリー(南沙)諸島で造成中の人工島に高周波レーダーらしきものを設置している衛星写真を公開した。中国はすでに人工島に建設した3000メートルの滑走路で民間機のテスト飛行を行っており、いずれは軍用機の運用や対空ミサイルの配備も開始するとみられる。スプラトリー諸島に軍事拠点を持つことで、中国は南シナ海南部の防空能力を高めることができる。

 中国がこのままパラセル・スプラトリー諸島で軍事化を進め、制空権を固めれば、南シナ海上空に防空識別圏を設定し、アメリカ海軍が行っている空からの偵察活動を妨害するだろう。その上で、南シナ海を「中国の湖」とするために、外国艦船の航行の権利を制限し、独自のルールを押しつけると考えられる。民間の船舶や航空機の運航にも影響が出るだろう。

 一方、中国の周辺諸国では南シナ海の軍事化に対する足並みがそろっていない。パラセル諸島へのミサイルの配備は、米国がアジア重視政策の一環として、初めて東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を主催するタイミングを見計らうように行われた。

 米国は中国が南シナ海を軍事化していると非難したが、中国は米国が「航行の自由作戦」によって南シナ海問題を「軍事化」していると反論し、ミサイルの配備は「自衛」措置であり、「軍事化」ではないと自らの立場を正当化している。米太平洋軍のハリス司令官は、中国が南シナ海で軍事拠点を拡大していることに対抗するため、今後「航行の自由作戦」をより強化すると述べているが、中国はこれを逆手にとってさらに軍事化を進めると考えられる。

中国の一方的な現状変更に対するコストを高める
 オバマ大統領は、会議で南シナ海における中国の活動を牽制することを提起したとみられる。しかし、同会議の共同声明文では「航行の自由」や「非軍事化と自制を促す」という表現は明記されたが、肝心の「南シナ海」への言及はなかった。非公式にカンボジアやラオスなど中国と緊密な関係にある国々の抵抗があったからだろう。その後ラオスで開かれたASEAN外相会議では、議長声明で南シナ海情勢への懸念が表明されたが、「中国」への言及はやはりなかった。

 現状では、中国が南シナ海の軍事拠点化をあきらめる見込みは少ない。国際社会は、外交、軍事など様々な手段を講じて、中国の一方的な現状変更に対するコストを高めなければならない。

 そのためには、フィリピンが進めてきた南シナ海問題の仲裁裁判の結果をどのように有効活用するか検討すべきだ。フィリピンは、2013年に始めた仲裁手続きで、九段線に基づく中国の南シナ海での主張と国連海洋法条約の整合性の有無と、中国が占拠する岩礁の法的な地位の明確化などを求めてきた。中国は、裁判所に管轄権はないと仲裁手続きへの参加を拒否しているが、岩礁の法的な地位について仲裁裁判所が今年の6月にも最終判断を下す見込みだ。

 中国が占拠し、人工島を建設している岩礁が、満潮時に水没する低潮高地だと裁判所が判断すれば、中国の南シナ海での行動は法的根拠を失う。低潮高地は国際法上領有が認められないからだ。領有もできない岩礁の上に人工島を造成し、それを軍事拠点とすることは国際法違反ということになる。

 この仲裁裁判の結果は法廷拘束力を持つが、中国にそれを受け入れさせる強制手段はないため、中国は裁判の結果を受け入れることはないだろう。しかし、このような法的な手段が中国の行動に変化を与えないわけではない。たとえば、仲裁裁判所が岩礁の法的地位についての検討を始めた後に開かれた東アジアサミットで、中国の李国強首相は九段線に基づいて中国の主張を正当化しなかった。

 また、インドネシア政府が同国領であるナトゥナ島付近での中国船の活動をやめさせるために国際裁判を検討していることが明らかになると、中国外交部は同島の主権がインドネシアにあることを確認する異例の声明を出した。司法的な手段によって、中国の行動に一定の影響をもたらすことは可能だ。

国際社会はさらなる法廷手段を検討するべき
 中国の行動を改めさせるため、国際社会はさらなる法廷手段を検討するべきだ。特に、中国による岩礁の埋め立てと人工島の建設は、南シナ海の海洋環境を破壊している。国連海洋法条約の下で、中国には海洋環境を保護する義務を負っているため、海洋環境の保護を中国に求めるとともに、司法手続きを検討することで中国による南シナ海の軍事化を牽制することができるだろう。 

 2003年に、マレーシアはシンガポールが両国の海洋境界付近で行っていた埋め立てが、航行の安全や海洋環境への悪影響を与えている、と国際海洋法裁判所に埋め立ての中止と環境に関する情報の提供を求めて提訴し、裁判所が一部の埋め立ての中止を命令したという前例もある。

 加えて、国際裁判所が中国の行っている人工島の建設に法的根拠がないとう結論を下せば、米軍が行っている「航行の自由作戦」に日豪なども参加し、国際的な活動にするのが望ましい。仲裁裁判の判決の受け入れを中国に受け入れさる強制手段はないため、各国の軍が中国の人工島周辺に敢えて入り、そこで訓練や演習、偵察活動を行うことで、国際裁判所の判決を軍事的に裏づけることが必要だ。

 国際法を通じて中国の行動を返すには、国際社会が十分連携する必要がある。日米や豪州、ヨーロッパ諸国はフィリピンによる仲裁手続きを平和的手段として歓迎しているが、ASEANの中にはまだこれを支持していない国がある。このため、ASEANが一丸となってフィリピンの平和的な解決を目指す努力を支持するよう、2国間や多国間の協議を通じて働きかける必要がある。

 ただし、この仲裁裁判の結論は、日本にとって諸刃の剣となる可能性がある。国際司法の場で岩に関する判断基準ができれば、沖ノ鳥島の法的地位についてもその基準が当てはまるかもしれない。中韓は沖ノ鳥島が排他的経済水域や大陸棚の基点になり得る島ではなく、岩であると主張している。このため、日本は沖ノ鳥島の法的地位を守るための理論武装を一層行う必要がある。

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